ボイスユーザーインターフェイス(VUI)のファインダビリティを向上させるポイントとは

インフォメーション・アーキテクト 前島

Google Homeの日本での発売開始により、ボイスユーザーインターフェイス(VUI)は徐々に私たちにとって身近なものになりつつあります。11月にはAmazon Echoの日本上陸も決定したようでこの流れはさらに加速していくことでしょう。

先日発表されたガートナー社による2018年の戦略的テクノロジートレンドトップ10でも、コンシューマーはビジュアルサーチやボイスサーチを今後より好むようになり、アーリーアダプターとなるブランドは従来のWebサイトをリデザインすることで、デジタルコマースの収益を30%増加させるだろうと予測しています。

今回はVUIによるボイス検索の強みと弱みを情報の見つけやすさ(探しやすさ)という視点で考えてみたいと思います。

ファインダブルであるとはどういうことか

人が情報を探すにあたり、その目的となる情報の明確さやシーンにより、検索行動は4つに分類されるといわれています。

既知情報検索(known-item seeking)

あなたが探しているものが具体的で、その探し方も明確である場合、それは既知情報検索であるといえます。これは魚釣りでいう一本釣りをイメージするとわかりやすいでしょう。例えば、ある国の人口が知りたい、A地点からB地点までの距離が知りたい、1ドルが日本円で今いくらなのか知りたい、などは既知情報検索にあたります。

探求検索(exploratory seeking)

あなたの探しているものが明確でなく、探していく過程で自分が探しているものが何なのかわかってくるような状態を探求検索といいます。検索を繰り返すことでより適した結果を発見し、ときに終わりがないような行動です。これは求めている情報が得られることを期待して罠かごを仕掛けている状態に例えられます。今度の長期休暇はどこに旅行に行こうか候補地を探す、友達の誕生日に何かよいプレゼントがないか探す、というような正しい答えがない中で満足できる情報を探し続ける状態をイメージしていただくとわかりやすいでしょう。

全数検索(exhaustive research)

とにかくあらゆる情報をすべて手に入れたい。そんな情報探索行動が全数検索です。これは流し網による無差別捕獲に例えられます。あるトピックについて会社の上司から得られる情報は片っ端から集めておいてほしいと依頼をされた場合や、気になる病気の症状についてとことん調べる、などにあたり、他の情報検索行動と比較すると最も辛抱強く探し続ける傾向があります。

再検索(refinding)

今は時間がないけれどもあとで見たい情報がある場合や、過去にたまたま出会った情報に再度たどり着きたい場合の探索行動が再検索となります。気になったページをブラウザにブックマークをしておいてあとで見たり、SNSでタグ付けされた情報を探す行動がこれにあたります。

情報検索行動の4つの分類情報検索行動の4つの分類

これらの軸で情報検索を考えた場合、VUIのファインダビリティはどのようなものになるでしょうか?

VUIの強みとは圧倒的な既知情報検索にある

まずひとついえるのは、VUIは既知情報検索において圧倒的な強みをもっているということです。例えばGoogle Homeを利用したVUIの場合、「ねぇ、Google。今何時?」「ねぇ、Google。天気を教えて」「ねぇ、Google。月までの距離を教えて」など、何の端末も手に持って操作する必要なく、直接話し掛けることで瞬時に正しい情報を得ることができます。

同様にNetflixと連携がされているのであれば、「ねぇ、Google。●●●●(特定の映画名)が観たい」と伝えることで、Chromcastと連携されたTVが自動的にオンになり、伝えた映画が自動で再生されるという具合に、目的の情報を明確にユーザーが把握していれば、これまでとは比較できない程の快適な体験をユーザーは得ることができます。

その反面、全数検索について現時点ではVUIは弱い(というより適していない)といえます。情報を網羅的に取得するためには、複数情報の一覧性(これはGUIに利があるでしょう)や検索行為自体のスピード性をユーザーは求めるため、一定のペースで進む会話の繰り返しにユーザーはストレスを感じることでしょう。(全数検索自体をAIが代行するなどは今回は考慮しない)

VUIによるファインダビリティが生むユーザー体験の差異

残されたのは探求検索と再検索ですが、これらこそがVUIにおけるファインダビリティを左右するポイントであり、ユーザー体験の差異を生む要素であると私は考えます。

例えば先述したNetflixでは、特定の映画名を指定すればその目的の映画を再生することができますが、「ねぇ、Google。泣ける映画が観たい」や「ねぇ、Google。お笑い番組が観たい」など(探求検索)に現時点では対応することができず「すみません、お役に立てそうにありません」と返します。同様に「ねぇ、Google。昨夜観ていたドラマがもう一度観たい」など(再検索)にも現時点では対応してくれません。

一方、Google Play Musicは明確な曲名による既知情報検索はもちろん、「元気になる曲が聴きたい」や「秋を感じる曲が聴きたい」、「雨の日の曲が聴きたい」など探求検索に対応(実際はひとつの曲をピックアップするのではなく、意図に近しいプレイリストが再生される)しており、その点においてはNetflixと比較してファインダビリティが高いといえるでしょう。

これはあくまで一例ですが、今後様々なVUIサービスが生まれる中で、このように4つの軸で情報の探しやすさを考えてみると、おもしろいかもしれませんね。