【海外UXイベント紹介】UXPA2018(プログラム編)

UXエバンジェリスト 金山

昨年末のBlog記事『2018年に開催される国際的UX系イベント ~UXPA2018~』でご紹介したUXPA2018のプログラムが公開されています。本記事では、プログラムの内容について見て行きたいと思います。

日程

初日の6月25日は、半日もしくは全日の長めのセッションが集まっており、じっくりと腰を据えて学ぶ日です。2日目と最終日は、1時間のセッションが4つ並行で走るので、興味があるセッションを求めてセッション毎に会場を移動することになります。セッションの合間には長めのコーヒーブレイクがあり、スピーカーや参加者と交流したり、展示ブースやポスターセッションを見て回ることができます。カンファレンスの最初と最後は参加者が一同に会してキーノートスピーチを聴講するので、学びへの意識づけと整理の時間になります。

セッションの傾向

各セッションは、2つの軸で分類されています。1つは難易度で、Entry Level(初心者向け)、Intermediate(実践者向け)、Advanced(上級者向け)の3つに分かれています。学び始めて間もない方はEntry Levelを選択するとよいでしょう。既に実務でUXを実践されている方の中でもディスカッションやワークを中心とした濃いセッションがよい方は、Advancedにチャレンジしてください。

もう1つの軸は、手法や適用分野などのカテゴリーです。最も多いのがTools & Techniquesの30セッションと全体の半分近くを占めています。実践者が実務ノウハウを持ち寄っていることをこのセッション数が示しています。その他、UX Strategy、Design Thinking、Design Psychology のカテゴリーが多くなっており、ビジネス戦略としてUXに取り組む企業が増えていることや、デザインのために心理学を活用して深く探求しようとしている傾向が読み取れます。Innovation and Future Technologies のカテゴリーでは、VR、VUI、CUI、AI など、最新テクノロジーに関するセッションが多く、時代の流れに合わせた内容も取り込んでいます。

セッション紹介

以下、注目度が高いVUI、CUI、AIに関連したセッションを4つ選び、概要説明から抜粋してご紹介いたします。

『デウス・UX・マキナ - 2019年のチャットボットとAIのベストプラクティス』

Deus UX Machina - Best Practices for Chatbots and AI in 2019

2017年に話題になった映画「エクス・マキナ」を思い起こさせるキャッチ―なタイトルです。Deus Ex Machina(ラテン語で「機械仕掛けの神」)のEx を UX と読み換えています。オンラインショッピングにおいて、AIや機械学習による会話をどのように取り入れていけばよいか、コア原則と戦略が提案され、2019年において人間と機械のやりとりがどのようになるか将来像が提示されます。

『ゴルディロックスとAI』

Goldilocks and Artificial Intelligence

「ゴルディロックスと3匹のくま(Goldilocks and the Three Bears)」と言うイギリスの有名な童話と関連付けて、「ちょうどいい」AIの使い方(ソフトウェアのアルゴリズムとしての組み込み方)を探し出すことを提言しています。そのためには、人間のパフォーマンスに対して、AIのプラス・マイナス両面の影響を考慮してバランスよく取り入れる方法が説明されます。初心者向けのセッションですので、AIに関して基礎的な知識を得たい方は聴講されるとよいでしょう。

『聴くから始める優れた音声体験:音声UIの調査とデザインのベストプラクティス』

Great Voice Experiences Start with Listening: Best Practices in Research and Design for Voice User Interfaces

文脈に応じたデバイスの使い方を知るために実施した調査(約1,000人のスマートスピーカーユーザーに対する定量調査+10件の訪問インタビュー)の結果が紹介されます。スマートスピーカーのユースケース、特徴、機能と音声UIの調査・デザインにおけるベストプラクティスが分かるだけでなく、ユニークなニーズと音声UIの調査を実施するためのノウハウを知ることができます。

『AIが会話型UIに出会う時:デザイナーは何を知っておくべきか』

When AI meets Conversational UI - What Designers Need To Know

AIと会話型UIをデザインすることは、単なるチャットとボットではありません。このセッションでは、Fortune 100 の有名企業や新興企業のプロジェクトの事例(設計段階も含めた成果物)が紹介されます。プロジェクトでは、コンテキスト、関係、ダイアログの設計から始め、AIを隠すのか公開するのか、ユーザーにAIを操作させる適切なタイミング、ユーザーが使用する適切なUIはどれか(音声、キーボード、指)などを検討していきます。

このように、実案件でもVUI、CUI、AIが導入され、UXの専門家が実績を紹介するような状況になってきています。イベントは6月末ですが、イベント前に公開される情報で面白いものがありましたら、また、本Blogで紹介したいと思います。