日替わりコンテンツから学ぶ、習慣化のルール

UXリサーチャー 隅田

この記事はミツエーリンクス Advent Calendar 2020 - Adventarの15日目の記事です。

Web・IT業界で毎年この時期開催されるアドベントカレンダー企画。 突然ですが、皆さんはこのアドベントカレンダー企画のどういったところに魅力を感じますか? 「クリスマスまでのカウントダウン」というお祭り感、普段お目にかかる機会が少ない方が執筆するコンテンツなど、人によってさまざまですが、私はなんと言ってもアドベントカレンダーの「日替わり」要素にいちばんの魅力を感じます。

12月1日からクリスマスまでの毎日、そのテーマに関する何かしらの記事が更新されるこのイベントは、日常に何気ない楽しみを与えてくれます。今年も気になるテーマのアドベントカレンダーがよりどりみどりのため、興味を持ったカレンダーを何個かブックマークし、夜の帰宅中の時間に一気に読むことが毎日の習慣になってしまいました。

そこで今回は、「日替わりコンテンツが持つ、ユーザーの行動を習慣付けるルール」について考えてみます。

日常的に目にする日替わりコンテンツの例

まず、普段私達の身近に溢れている日替わりコンテンツの例を見てみましょう。以下に挙げるのは、どれも一般的かつ、過去から現在まで根強く残る日替わりコンテンツです。皆さんの中にも、同様のコンテンツを毎日使っているという方がいらっしゃるのではないでしょうか。

ゲームのログインボーナス

ゲームアプリを起動するだけで毎日アイテムなどがもらえるコンテンツです。複数のゲームアプリをプレイしている方は、朝起きたタイミングですべてのアプリのログインボーナスを回収してまわるのがルーティンになっているという話も聞いたことがあります。

占いアプリの「今日の運勢」

アクセスするだけ、あるいはタロットカードを一枚タップするだけで、その日の自分の運勢を確認することができるアプリです。一日の初めに運勢を確認するオーソドックスなものが大半ですが、中には一日の最後に「今日の答え合わせ」として見ることができるような変わり種のものもあります。

通販サイトのタイムセール

割引やポイント増量など、お得なセールを日替わりで行うコンテンツ。午前9時など、毎日決まった時間に切り替わり、セール内容や対象商品は当日に確認してみなければわからない場合が大半です。もし、以前から狙っていた商品や、自分の興味のあるジャンルの商品がセールの対象になっていれば、普段よりもお得にゲットできるチャンスになります。

日替わりコンテンツには、習慣化に繋がる要素が散りばめられている

では、上記のような日替わりコンテンツのどういった要素が私達の習慣を作っているのでしょうか。このテーマを考えるにあたって、普段のコンテンツの内容、利用の仕方などを整理してみると、ある共通点が浮かび上がってきました。

きっかけが明確である

「AならばBする(If A then B)」という形で条件とアクションを紐付けることで習慣を作る、「if-then プランニング」というテクニックをご存知でしょうか?日替わりコンテンツは、多くの場合更新のタイミングが決められた時間(「日付が変わったタイミング」「毎日10時」など)で設定されています。そのため、「日付が変わったらタロットカードを引く」「10時になったら更新されたセール内容を確認する」というように、時間をトリガーとして「if-then」が成立しやすくなっているように思います。

実行のハードルが低いアクションが設定されている

また、日替わりコンテンツで求められるアクションは、基本的に「サイト・アプリへのアクセス」「サービスへのログイン」などが一般的です。このようなアクションは非常にシンプルであるため、実行のハードルが低いと言えます。 アメリカ心理学会が発行するAPA心理学大辞典では、「習慣」となる行動を「よく学習された行動や自動化された一連の行動」として定義づけています。日替わりコンテンツに求められるアクションは、特別なルールや仕組みの理解が必要とされず簡単に「よく学習された」状態になりやすいと考えられます。さらに、少ない回数のタップやクリックで達成されるため、大きな労力を必要とせず、「自動化」も容易になっているのではないでしょうか。

報酬が明確である

さらに、日替わりコンテンツでは、一回の行動の先に大なり小なりの報酬が用意されています。

  • ログインボーナスから期待できる報酬:アイテム
  • 占いから期待できる報酬:幸運が訪れると期待できる結果
  • タイムセールから期待できる報酬:自分が関心のある商品の値引き

ログインボーナスで貰えるアイテムは、それほど価値の高い報酬ではないものの、毎日貰えることを約束されています。反対に、占いやタイムセールから期待できる報酬は、毎日確実に得られるものではない分、得られたときの喜びや報酬そのものの価値が大きくなります。このような報酬は、行動を促進させ、習慣化の一翼を担っていると言えます。

おわりに

このように、現在根強く残り、日常のさまざまな場面で目にするような日替わりコンテンツには、行動を習慣づけるための仕掛けが多く含まれています。

こうして考えた後、私にとってのアドベントカレンダーについて考えてみると、 「帰宅中(だいたいすべての記事が更新済みであろう時間)」をきっかけとして、 「記事にアクセスする」という単純なアクションを、 「面白い記事」という報酬のために行う、 という風にあてはめることができ、見事に上記のルールをすべて満たしていることを実感しました。

これらの習慣化のルールは、Webサイトやアプリなどさまざまなコンテンツを制作する際、さまざまな場面において応用ができると考えられます。 コンテンツに関する特定のアクションをユーザーにとっての習慣として位置づけることができれば、満足度やロイヤリティを高める大きな一歩になります。 みなさんもぜひ、習慣化のルールに倣ったコンテンツ設計を行い、ユーザーにとっての「あたりまえ」を目指してみてはいかがでしょうか。