#47「障害者差別解消法とWebアクセシビリティ」
「改正障害者差別解消法とWebアクセシビリティ」というテーマで、障害者差別解消法とはというところから、法律とWebアクセシビリティの関係や動向について話しました!
※ オフラインのため、音声ファイルを再生できません。ネットワーク状況をご確認の上、再度アクセスしてください。
佐竹: 皆さん、こんにちは!ミツエーリンクスの佐竹です!ミツエーテックラジオは、株式会社ミツエーリンクスのスタッフが、Webデザイン、Webフロントエンドなどの、Web技術に関するニュースやツールをシェアするポッドキャストです。
本日は当社エグゼクティブ・フェローの木達さんをゲストにお呼びして「改正障害者差別解消法とWebアクセシビリティ」をテーマに話していきたいと思います。木達さんよろしくお願いします!
木達: はい、よろしくお願いします!
佐竹: はい、まず木達さんが7月に「改正障害者差別解消法とWebアクセシビリティ」というセミナーに講師として登壇されていて、これまで開催されてきたセミナーの中でも参加人数が最多だったそうですね!
木達: ありがとうございます。参加人数でいうと、8月に開催したHTMLがテーマのセミナーのほうが、実は多かったんですけどね。でも、開催時点ではおっしゃる通り、過去最多の方々に参加いただきました。Web担当者の皆さんの、障害者差別解消法への関心の高さを感じましたね。
佐竹: そうですね。改正法は2024年4月に施行されるということで、やはりWebサイトを担当している方からすれば法律とWebアクセシビリティの関係だったり、何をすべきかというところは気になるところではないかと思います。ということで今日はその辺りのお話を聞かせていただきたいと思います!
佐竹: ではまず障害者差別解消法とは、というところを聞いていきたいんですけど、何を定めた法律なのかをお伺いできますか?
木達: はい。では3つのポイントに絞って説明しますね。1つ目が「障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止」です。これは正当な理由なく障害を理由として差別することを禁止するものです。
佐竹: 差別が禁止なら障害のあるなしにかかわらず平等に扱えばいいのかなと思ってしまいそうですけど、ここでいう差別の禁止というのは正当な理由なしに障害者が不利になるような扱いはしない、ということでしょうか。
木達: そうですね。障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイトっていうサイトがあって、不当な差別的取り扱いの具体例として、受付の対応を拒否したり、保護者や介助者が一緒にいないとお店に入れてもらえない、といった取扱いが挙げられています。
佐竹: そんなことがあるんですね。逆に障害のある人が適切にサービスを受けられるように対応するということは、当然ながら不当な差別的取り扱いにはあたらないですよね。
木達: はい。そしてそのような対応が2つ目のポイントである「合理的配慮の提供」として求められます。これは障害当事者から、何らかの対応を求められた際に、サービスを提供する事業者側の負担が重すぎない範囲で対応することを指しています。
佐竹: うーん。合理的かどうか、どこまでが負担の重すぎない範囲かというのは、事業者によって状況が違うのではないかと思うんですけど、そのあたりはどう考えればいいでしょうか。
木達: 基本的には障害当事者の方と、その対応を求められた事業者側とのコミュニケーションを通じて、落としどころを決めましょうということなんですけど、具体例をまとめた合理的配慮サーチで事例を眺めてみると、イメージしやすいと思います。
佐竹: はい。えっと私も合理的配慮サーチを見てみたんですけど、障害のある人がどんな差別を受けたかだとか、要望とその対応なんかが書かれていたのでとても参考になりました。障害当事者と事業者で対応を決める際には、やっぱりこういった事例も見つつ、さまざまな状況を考慮して、総合的かつ客観的な判断をしたいですね。
木達: そうですね。この合理的配慮の提供が、従来の行政機関に加えて、事業者に対しても法的義務化されるというのが、改正の要点です。最後に3つ目のポイントが「環境の整備」。合理的配慮の提供というのは、障害当事者から求められた際に、個別的でピンポイントに行う対応のことでしたけど、それを的確に実施できるように、不特定多数の障害者を対象として、事前的に環境を改善、整備しましょうということです。
佐竹: なるほど。改正障害者差別解消法では、改正点となる事業者に対する合理的配慮の提供の法的義務化が注目されがちだと思うんですけど、事前の環境整備もやっぱり同じように重要ですよね。
佐竹: ここまで障害者差別解消法を3つのポイントに分けて説明いただきました。当社が開催したセミナーは「改正障害者差別解消法とWebアクセシビリティ」というタイトルだったと思うんですけど、Webアクセシビリティはどのように関係してくるんでしょうか?
木達: はい。政府の基本的な考え方をまとめた基本方針のなかで、「障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上」が、改正前から先ほどお話しした3つ目のポイントである「環境の整備」に位置付けられています。これは、行政機関と事業者の別を問わず、努力義務です。また、法律の改正と合わせて基本方針も改定されたのですけど、そのなかでWebサイトを題材とした事例が掲載されました。
佐竹: えっと、それはどのような事例でしょうか?
木達: ぜひ一度、基本方針は読んでいただきたいのですけど……かいつまんで話すと、アクセシブルではない申込フォームがあったとして、障害者から改善を求める申出があったときに、取り急ぎWebの代わりに電話や電子メールでの申込を受け付けるということを合理的配慮の提供としていて、またほかの障害者が不便を感じることのないように申込フォームをアクセシブルにすることが環境の整備に該当する、としています。
ちなみに、「民間企業でもWebアクセシビリティへの取り組みが義務化される」だとか、「WCAGに準拠することが合理的配慮として義務付けられる」といった記述を稀に目にすることがありますけど、そういった内容は改正法には定められていません。
佐竹: ということは、アクセシビリティの向上を含むWebサイトの改善は改正前も改正後も環境の整備の一環であって、努力義務ということですよね。
木達: はい、それが正しい解釈です。もちろん法的義務ではないからとか、努力義務ならWebアクセシビリティに取り組まなくていい、というわけではなくて、改正によって合理的配慮の提供が法的義務化される以上、事業者がWebアクセシビリティに取り組む意義はこれまで以上に高まっていくというように捉えていただきたいと思います。
佐竹: なるほど。ちなみに、海外では以前からWebサイトがアクセシブルではないということで訴訟が起きるといったことが話題になっていて、日本とは状況が少し違うのかな、と思うんですけど、海外でのWebアクセシビリティ法制化に関して木達さんが注目されている動きは何かありますか?
木達: はい。1つ注目しているのが、米国カリフォルニア州で新しくAB 1757と呼ばれる法案が検討されていることです。これまで、デジタルアクセシビリティ訴訟において、その責任を問われるのはコンテンツを提供する事業者でしたが、仮にこの法案が成立するとWCAG 2.1の適合レベルAAに準拠していないWebサイトやモバイルアプリを提供する事業者だけではなくて、その開発を請け負った開発者にまで法的責任が拡大する可能性があります。
佐竹: 開発者というのは、当社のような制作会社も含まれますよね?
木達: そうですね。まだ成立したわけではないので、この先どうなるかは分かりませんが、この法案が成立するとWebアクセシビリティを取り巻く状況が大きく変わるかもしれないということで、注目しています。
佐竹: Webサイトは事業者と開発者で協力して作っていますし、開発者の責任も問われるというのは個人的にはわかる気がします。その海外の流れが日本にも入ってくるかどうかっていうところが今後気になりますね。
佐竹: はい。ここまで障害者差別解消法とWebアクセシビリティについて聞いてきました。 最後に木達さんからテックラジオを聞いてくださっているリスナーの皆様に向けてメッセージなどあればお願いできますか。
木達: はい、ありがとうございます。改正障害者差別解消法の施行をきっかけとして、もっと多くの企業や組織が、Webアクセシビリティの向上に取り組み始めたり、取り組みを強化するということは、もちろん期待しています。けど本来、法律云々は抜きに、Webってアクセシブルであるべきですよね。Webを利用するユーザーも、利用する状況も、これだけ多様化してきたわけですから。まぁWeb担当者にせよWeb制作者にせよ、プロとしてWebに携わる立場ならば、この法律にとらわれ過ぎることなく、「なぜ」取り組むのか、そこをしっかり掘り下げて、自分ごととしてWebアクセシビリティに取り組んでもらえたらと思います。
佐竹: ありがとうございます!私も制作者の一人としてユーザーが使いやすいサイトを作るために何ができるかというのをもっと考えながら対応していきたいと思いました。
最後に、ミツエーリンクスではスマートなコミュニケーションをデザインしたいUIデザイナー、UI開発者を募集しています。採用サイトではオンライン説明会やオンライン面接なども行っていますのでチェックしてみてください。
また、このPodcastはApple Podcast、Google Podcast、Amazon Music、Spotify、YouTubeで配信していますので、お好みのプラットフォームでフォローいただけると、最新のエピソードをすぐ視聴できます!こちらもぜひご活用ください。「#ミツエーテックラジオ」でご意見、ご感想、こんなこと話してほしいというリクエストなどお待ちしております。 それでは今日はこの辺で!ありがとうございました!
木達: ありがとうございました!