#51「EUデジタル市場法」
2024年3月7日に全面適用になったEUデジタル市場法、通称「DMA」をテーマにDMAとは何か、Webや日本に与える影響についてお話しします。
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加藤 : 皆さん、こんにちは! ミツエーリンクスの加藤です!
佐竹 : 佐竹です!
加藤 : はい、では今回もミツエーテックラジオやっていきたいと思います。ミツエーテックラジオは、株式会社ミツエーリンクスのスタッフが、Webデザイン、 Webフロントエンドなどの、Web技術に関するニュースやツールをシェアするポッドキャストです。今回はEUデジタル市場法、略して「DMA」をテーマにDMAとは何か、Webや日本に与える影響についてお話ししたいと思います。とはいえですね、私はDMAについてほとんど知らないので、えー今回は佐竹さんにいろいろ教えていただくスタンスでいきたいと思います。よろしくお願いします!
佐竹 : はい。えー私も今回役として教える側を担当させていただきますけど、DMAについて、まぁ気になりつつもよく知らなかった部分もあるので、調べてきました!お手柔らかに、よろしくお願いします。
加藤 : はい、よろしくお願いします!
加藤 : では、さっそくですが、DMAとは何かを教えていただいてもよいでしょうか。
佐竹 : はい。DMAはDigital Markets Actの略で、いわゆる「デジタル市場法」と呼ばれるものになります。
加藤 : 「デジタル市場法」という法律自体あんまり聞きなれない法律なんですよねー。
佐竹 : そうですね。デジタル市場法はEUで制定された法律なので、まぁ日本ではあまり認知されていないかもしれないですよね。個人的な感覚ですけど、2022年11月に発効されて、今年の2024年3月7日に全面適用になったので、まだ新し目の法律なのかなと思います。
加藤 : んーなるほど。そうすると、まぁ新しくこの法律が作られた背景はそうなんですけど、EUの法律なのに、なぜ今回のテックラジオでとりあげるのか、とかも気になりますね。
佐竹 : はい。えーじゃ順番に、まずDMAは、えーデジタルサービス法と共にEUの「デジタルサービス法パッケージ」の中の一つの法律になります。デジタルサービス法はまた機会があれば取り扱うとして、えー今回はDMAの方に絞っていきたいと思います。
加藤 : あー「デジタルサービス法パッケージ」も初めて聞いたんですけど、そういう法律のセットのようなものがあるんですね?
佐竹 : はい。欧州委員会のサイトのデジタルサービス法パッケージのページには、「デジタルサービス法とデジタル市場法は、ユーザーの基本的権利を保護するために安全なデジタル空間を作り、企業にとって公平な競争の場を確立することを目的としている」と書かれています。
加藤 : なるほど。では「デジタルサービス法パッケージ」の1つとしてDMAもユーザーの保護とその企業の公平な競争というところを目的としているわけですね。
佐竹 : そうですね。で、「デジタルサービス法パッケージ」ではこの目的に対して、2つの目標を掲げていて、これも先ほどと同じページに書かれていたので読み上げますと「1.デジタルサービスのすべてのユーザーの基本的権利が保護される、より安全なデジタル空間を構築すること」、で「2.欧州市場と世界の両方で、イノベーション、成長、競争力を促進するための公平な競争の場を確立すること」になります。そしてDMAは主にこの目標の後者を達成するための法律なんですね。
加藤 : 後者ということは、まぁいま「欧州市場と世界」って言われていましたけど、EUの法律なのに世界を見据えた目標を掲げているんですね。
佐竹 : そうなんです。皆さん、インターネット環境で買い物をしたり、情報を見つけたり、動画とか音楽などのメディアを鑑賞したりすることがあると思うんですけど、このインターネット環境には国境がないので、国内外問わずデジタルサービスを利用することができますよね。まぁ若干、お国柄などに合わせて変えているところはあるかもしれないんですけど、基本的なそのーサービスの仕様だったり運用方法だったりというのは同じになっていると思います。
加藤 : そうですね。ということは、まぁそのDMAにあわせてサービスの内容とか、まぁインターフェースが変更されれば、国を問わずそのサービスを使っているユーザーは影響を受ける可能性が高いということですかね。
佐竹 : そういうことですね。なのでEUの法律だからといって、日本には関係ない!とも言い切れないわけですね。
加藤 : んーなるほど。ちなみにインターネットには国境がないってなると、その日本の企業が世界に提供しているサービスもEUのデジタル市場法に対応しないといけないんでしょうか。
佐竹 : えーそこはまだ、ちょっとお待ち下さい。えっとーDMAでは、法律が適用される対象の企業というのが決められていまして、それを「ゲートキーパー」と呼んでいます。
加藤 : ゲートキーパー、また新しい単語が出てきましたね。そのゲートキーパーっていうのはどういった企業がなるんですか?
佐竹 : はい。ゲートキーパーに指定される企業には3つの特徴がありまして、これも欧州委員会のサイトに書かれていたのを読み上げますと、えー「強力な経済的地位が確立されていて、域内市場への大きな影響があり、複数のEU諸国で活動している」「多くのユーザーと多くのビジネスを結び付けている」「市場での地位が長年に渡り確立されている」になります。
加藤 : あーなんか、けっこう抽象的な特徴ですけど、具体的な基準のようなものもあるんですかね?
佐竹 : 具体的な基準だと、定量的な基準というのがQAページに記載されていたので、いくつか抜粋しますと「過去3年間の欧州経済領域での年間売上高が75億ユーロ以上であること」「EU加盟国の3か国以上でコアプラットフォームサービスを提供していること」などがあげられています。これらの基準をもとに現在ゲートキーパーとして指定されているのが、GoogleやYouTubeなどを運営しているAlphabetと、えーAmazon、Apple、Tick Tockを運営しているByteDance、Meta、Microsoftの6社ですね。
加藤 : 数だけ聞くと6社は意外と少ないのかなって思えますけど、まぁ世の中への影響力が強い企業ばっかりですね。
佐竹 : そうですね。この6社は色々なプラットフォームサービスを持ってますけど、DMAの対象になるのはそのうちの22個になります。
加藤 : あーすべてのサービスが対象っていうわけではないんですね。ちなみにどういうサービスが対象なんですか?
佐竹 : えー対象のプラットフォームサービスはSNS、広告サービス、アプリストアなどの仲介オンラインサービス、オンライン検索エンジン、ブラウザ、OS、動画共有プラットフォームサービスなど、ですね。
加藤 : どれも私も日常的に使っているサービスが対象になってますね。で、このゲートキーパーはDMAによってどのような対応が必要になってくるんですか?
佐竹 : はい、えーゲートキーパーはプラットフォームサービスにおいて「すべきこと」の義務と「すべきでないこと」の禁止事項を遵守する必要があって、これに違反すると、全世界の年間総売上高の最大10%、違反が繰り返された場合は最大20%の罰金が課せられます。
加藤 : 年間総売上高の最大10%ってどのくらいなんですかね?
佐竹 : えーそうですね。ゲートキーパーの選定基準の1つになっている年間売上高の75億ユーロで計算すると1回の罰金は7.5億ユーロ、で日本円にすると1,278億円くらいということになりますね。
加藤 : おーすごいですね…10%っていうと、あのー日本の消費税と同じパーセンテージなんで、ちょっと個人の買い物を連想しちゃったんですけど、やっぱり大企業が扱う金額は桁が違いますね。
佐竹 : そうですね。でもゲートキーパーは基準の売上高を超えた企業が選ばれているので、実際にはもっとびっくりする金額になりそうですよね。あとゲートキーパーの6社でない企業はDMAに違反しても罰金の支払いはありませんけど、でもやっぱり「安全なデジタル空間の構築」を目的としている法律なのでゲートキーパーでなくてもサービスの作り手として参考にしたいかなと思います。
加藤 : うーん、そうですよね。となると、やっぱりこのDMAに対してゲートキーパーたちがどのような対応をしているのかにも注目したほうが良いですよね。
佐竹 : いいところにお気づきですね。DMAではDMAの実施状況や進捗状況を年次レポートとしてEUに提出することが義務付けられていて、その報告内容は欧州委員会のサイト内にあるDMAのコンプライアンスレポートのページにまとまって公開されています。なので興味のある方は見てみてもいいかもしれないですね。
加藤 : あーレポートが誰でも見られる環境に置かれていると、法律の透明性とか企業への信頼もあがりますし、その公平な競争を促進させる要因にもなりそうですね。
佐竹 : そうですね。
佐竹 : で、ここからが私たちにももう少し身近に関係してくるところなんですけど、今年の4月26日にDMAを意識したと思われるような法案が日本でも発表されたんですよ。
加藤 : あー日本でもなんですね。
佐竹 : はい。「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律案」というのが閣議決定されました。これはスマートフォンに利用されるソフトウェアに限定された法律なんですけど、DMAの適用範囲にもなっているアプリストア、検索エンジン、ブラウザ、OSを対象としていて、公正取引委員会のページには、これも読み上げますけども、「セキュリティの確保等を図りつつ、競争を通じて、多様な主体によるイノベーションが活性化し、消費者がそれによって生まれる多様なサービスを選択できその恩恵を享受できるよう、競争環境の整備を行う」と書かれています。
加藤 : なんか、セキュリティの確保とか、イノベーションの活性化とか、やっぱり先程まで話してたDMAに似ているように聞こえますけど、なんかちょっとやっぱり日本の法律は言い回しがわかりにくいですね。
佐竹 : そうですねー。法案の概要をまぁ簡単に言いますと、対象の事業者が指定されて、その事業者が守るべき禁止事項と遵守事項というのがあって、それに違反すると課徴金を納付するというものになります。
加藤 : まぁDMAはEUの法律ということだったんでちょっと他人事のように感じてたんですけど、まぁそれが日本のユーザーとか法律にも影響しているということで、まぁやっぱり自分たちにも関係していることなんだなと思えてきました。DMAを知ることで、その今回閣議決定された日本の法律の方向性なんかも見えてきそうですね。
加藤 : はい。ここまでDMAについて概要をご説明いただきました。なんとなくDMAが日本に与える影響が分かってきた気がします!
佐竹 : はい。サービスの利用者の一人としては、安全に使えるようになることは嬉しいんですけど、制作者としては法律が乱立することで、その内のいずれかがボトルネックになってしまわないかとか、創造の自由が奪われるようなことにならないか、技術の発展の妨げにならないかというところが今後心配ですね。
加藤 : うーんそうですね。まぁイノベーションを促進させることも目的であり、まぁそのための規制だとは思うんですけど、その規制がいきすぎると逆に新規参入しづらくなったりするのでそこのバランスが難しいところですよね…。日本の法律の動向についても引き続きチェックしていきたいと思います!
加藤
: 最後に、ミツエーリンクスではスマートなコミュニケーションをデザインしたいUIデザイナー、UI開発者を募集しています。採用サイトではオンライン説明会やオンライン面接なども行っていますのでチェックしてみてください。
また、このPodcastはApple Podcast、Amazon Music、Spotify、YouTubeで配信していますので、お好みのプラットフォームでフォローいただけると、最新のエピソードをすぐ視聴できます!こちらもぜひご活用ください。 「#ミツエーテックラジオ」でご意見、ご感想、こんなこと話してほしいというリクエストなどもお待ちしております。
それでは今日はこの辺で!ありがとうございましたー!
佐竹 : ありがとうございました!