#52「思わぬダークパターンにご注意を」
ユーザーに誤解を与えたり、ユーザーの行動を操るようなインターフェースを「ダークパターン」と呼びます。注意していても意図せずダークパターンに陥ってしまうこともあるので、まずはダークパターンを知ることから始めましょう。
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加藤 : みなさん、こんにちは!ミツエーリンクスの加藤です。
佐竹 : 佐竹です。
加藤 : はい。今回もミツエーテックラジオやっていきたいと思います。ミツエーテックラジオは、株式会社ミツエーリンクスのスタッフが、Webデザイン、 Webフロントエンドなどの、Web技術に関するニュースやツールをシェアするポッドキャストです。えー今日のテーマは「ダークパターン」ということで、よろしくお願いします。
佐竹 : よろしくお願いします。
加藤 : はい。このダークパターンというテーマは佐竹さんからのリクエストでもあったんですけど、これはなぜ今ダークパターンなんでしょうか?
佐竹 : えー先日ですね、たまたまダークパターンのサイトに出会ってしまったんですね。まさか自分が遭遇すると思っていなかったのですごいショックだったんです。で、自分も遭遇してしまうくらいの確率なら、ダークパターンのサイトで困っている人って結構多いのかなと思って今回リクエストしました。
加藤 : 今年の3月にはダークパターンでAmazonがポーランド政府に罰金を科せられていたりとか、最近ダークパターンに関連するニュースをよく見かけるようになった気がしますね。
佐竹 : ありましたね。Amazonは私も使っているサイトで、規模も大きいのでなんとなく信頼して使っていたんですけど、部分的にダークパターンが含まれていると認定されてしまったんですよね。
加藤 : うん、そうですね。これまで見過ごされてきたようなダークパターンがだんだんこう規制されてきているように思いますけど、まぁ今回はその辺りも含めて話していきたいと思います!
佐竹 : はい。取り締り強化の背景には、エピソード51「デジタル市場法」でセットになっている法律として取り上げたEUデジタルサービス法という存在があるかなと思っています。
加藤 : あーそんな法律があるっておっしゃってましたね。ではエピソード51のときは名前くらいしか触れていなかったと思うので、ざっくりそこから概要を教えていただけますか。
佐竹 : はい。デジタルサービス法はオンライン上での違法で有害な活動や偽情報の拡散を防ぐことでユーザーの安全と基本的権利を守り、公正でオープンなオンラインプラットフォーム環境を構築するための法律です。
加藤 : その法律の中にダークパターンを規制するような内容が含まれているっていうことですかね?
佐竹 : そうですね。えーデジタルサービス法の序文の(67)にダークパターンの説明があるので一部抜粋しますと、えー「サービスの受信者が自律的で情報に基づいた選択や決定を下す能力を、意図的または事実上、著しく歪めたり、損なったりする慣行」と書かれています。そして25条の「オンラインインターフェースのデザインと構成」でダークパターンを禁止する旨が書かれています。
加藤 : このデジタルサービス法ってすでにEUではすべてのプラットフォームに対して適用されているんですよね?
佐竹 : そうですね。で、その他にもアメリカの連邦取引委員会(FTC)では消費者保護法に基づいて、詐欺的または不公正な行為を禁じていたり、日本の消費者庁でも昨年の5月の「詐欺防止月間」に「ダークパターン」をテーマとして設定して取り締まりを行っていたりと、国内外でダークパターンの規制が強まりつつあるように感じています。
加藤 : そうするとこれからもっと意識的にダークパターンを作らないように気をつけていかないといけないなーと思うんですけど、法律にはダークパターンの内容までは書いてないと思うので、具体的にどうすべきかっていうところがちょっとわかりにくいですよね。
佐竹 : そうですね。具体性がないと理解が曖昧になってしまったりするので、作り手も気づかない間にダークパターンのサイトを作っている可能性はあると思います。
加藤 : うん、そうですね。ではここからは具体的にどんなダークパターンがあるのか、その分類とかもあわせて紹介していきたいと思います。
佐竹 : はい。よくあるダークパターンには名前があるんですけど、国とか提唱者によってもばらつきがあるので、えー今回は認識をあわせられるように英語圏の「Deceptive Patterns」というダークパターンをまとめているサイトからいくつか取り上げていく感じでどうでしょうか。
加藤 : はい。いいと思います!
佐竹 : はい、ではまず1つ目に「Hard to cancel」というダークパターンを紹介したいと思います。なんでこれを最初にしたかというと、冒頭で私が遭遇したと話したパターンがこれだったんですね。えーこの「Hard to Cancel」は日本語にすると「解約が難しい」ですけど、その名の通りサービスや定期購入を登録するのは簡単なんですが、解約するのは難しいというダークパターンになります。
加藤 : はい。解約方法を複雑にすることで、こうユーザーが解約すること自体を諦めたり、まぁ後回しにさせたりするっていうところがまぁ狙いなんですかね。
佐竹 : そうですね。そして解約ができるまでは契約期間中になるのでもちろん支払いが発生してしまうんですよね。
加藤 : あーそうですよね。昔ほどは見なくなったような気がしますけど、まぁダークパターンとしてはあるあるなのかなって気がしますね。
佐竹 : はい。私の場合は、解約ページにはすぐたどり着けて、そこに解約理由を選択するフォームがあったので入力してみたんですね。そしたら「解約理由を口頭でお聞かせください。解約は電話のみで承ります。」というようなエラーメッセージが出てきて、解約はできませんでした。で、ビックリすることにそこのページにはSubmitのボタンがなかったんですよ。
加藤 : あーそれは謎ですね。送信ボタンがないのに、何のために解約理由を入力したんだって感じですね。
佐竹 : おそらくですけど、フォームが、電話のみの解約を知らせるためのお知らせ機能のような使われ方だったのかなと思いました。
加藤 : うん、ということは当然、その解約ページからは解約の完了まではできないってことですね。
佐竹 : そうなんです。しかもカスタマーサポートから電話がかかってくる時間は平日の9時から18時で、ちょうど私の勤務時間と被っていたので、タイミングが合わなくて電話に出られないっていうこともあったんですね。なんというか契約はサイトから好きなタイミングできたのに、解約は何工程か踏んだ後に相手からの電話という運任せの方法だけというのはちょっと疑問でしたね。
加藤 : うん。そうですね。やっぱり解約しづらいサイトを考えるよりは、ユーザーが解約したくならないようにサービスを魅力的にする方向に力を入れたいところですね。
佐竹 : はい。つづいては、ユーザーが何かをするときに、他の何かが強制されるような仕様で「Forced action」と呼ばれるダークパターンです。訳は「強制措置」ですね。これは「Sneaking」、「こっそり」というダークパターンと組み合わせて使われることがあります。たとえばユーザー登録でメールアドレスを入力するような時に、メールマガジンなどのメール配信設定にデフォルトでチェックを入れておくっていうものがあります。
加藤 : あーこれもまぁ見かけますね。メールの受信箱になんか知らないメルマガが届いてて、こんなのいつ登録したかな?ってやつですね。たしかにサービスからの重要なお知らせとかはやっぱり必要なのでメールで届いてもいいんですけど、それ以外のメールはいらないかなっていう時もあるんですよね。
佐竹 : そうですね。全ユーザーに伝えたいような重要なお知らせはメールだけではなくって、サイトのトップページに表示したりっていうのもできるので、メールは希望する人にのみ配信で問題ないはずです。
加藤 : はい。選択項目にデフォルトでチェックが入っていると、まぁその項目を見逃した人がそのまま登録してしまうっていうことはありそうですね。
佐竹 : そうですね。なので基本的に任意選択の項目にはデフォルトチェックは必要ないですね。
加藤 : これって逆にデフォルトチェックを入れておいた方がいいよっていう場合もあるんですか?
佐竹 : あ、そうですね。判断基準としてはユーザーの不利益になるかどうかで考えるといいと思うんですけど、不利益にならなかったとしても、確認画面では選択された内容が正しいか、判断を仰ぐようなメッセージは表示した方がいいですよね。
加藤 : うん。なるほど。まぁユーザーの行動はユーザー自身で選択できるように、そしてユーザーが意図しない選択をしないようにデフォルトの選択状態もよく考えて設計しましょうっていうことですね。
で、私がいちユーザーとしてECサイトを使っているときに気になってるのは、たとえばあのー商品ページに「残り何点」とか「現在何人のお客様がこのページを閲覧しています」みたいなポップアップですね。
佐竹 : あーそれもけっこう見ますよね。私も残り1点と書いてある商品を買って、同じページを見たら「あれ?まだ売ってる!」ってなったことあります。最後の1点じゃなかったら、別にその時にあわてて買う必要もなかったものだったので、なんかちょっとがっかりだったんですよね。
加藤 : はい。私もまぁ残り何点の表示を見るとまぁちょっと煽られているような感じがして、なんか早く買わなきゃって思ってしまったりするんですけど、この残りの商品数の表示とかってユーザーからしたらそれが本当なのかどうかっていうのはやっぱり判断できないよなーと思っていて、もちろん本当の情報だったらその重要な判断基準になりますけど、もし偽の内容だったとしたら判断をゆがめられているように感じてしまいますね。
佐竹 : そうですね。もし偽の内容だったとしたら「Fake scarcity」、訳すと「希少性の偽造」と呼ばれるダークパターンですね。
加藤 : はい。なかなか難しいところだと思いますけど、情報を提供する側は普段から正確で透明性のある情報提供を行うのが大事なのかなと思います。
佐竹 : はい。まぁ「Forced action」も「Fake scarcity」もですけど、やっぱりデジタルサービス法のダークパターンでいっていたように「ユーザーが自律的で情報に基づいた選択ができるか」っていうのがポイントのようですね。
加藤 : うん、そうですね。
加藤 : はい。ここまでダークパターンをテーマにお話ししてきました。私はあのーダークパターンなんか使わないよって思ってたんですけど、調べてみると普段使っているサービスでもよく見るUIだったりするので、こう意図せずダークパターンになってしまうケースも十分あったりするのかなーと思いました。
佐竹 : はい。これまでダークパターンがあたかもマーケティング手法のように取り入れられて、ユーザーが不利益を被るという場面が多くあったかと思います。しかし最近では、ダークパターンは一時的な利益は生みますけど、その代償としてユーザーからの信頼は失われて、継続的な利益は望めないということが知られてきています。なので、この機会に自分のサイトがダークパーンになっていないかっていうのは確認してみてほしいですね。
加藤 : はい。今回紹介したもの以外にもダークパターンはたくさんあるので、ぜひ調べてみてほしいなと思います!最後に、ミツエーリンクスではスマートなコミュニケーションをデザインしたいUIデザイナー、UI開発者を募集しています。採用サイトではオンライン説明会やオンライン面接なども行っていますのでチェックしてみてください。
また、このPodcastはApple Podcast、Amazon Music、Spotify、YouTubeで配信していますので、お好みのプラットフォームでフォローいただけると、最新のエピソードをすぐ視聴できます!こちらもぜひご活用ください。 「#ミツエーテックラジオ」でご意見、ご感想、こんなこと話してほしいというリクエストなどもお待ちしております。 それでは今日はこの辺で!ありがとうございましたー!
佐竹 : ありがとうございました!