スクリーン・リーダーで学ぶWebアクセシビリティ(2020月10月16開催)
スクリーン・リーダーで学ぶWebアクセシビリティ(2020月10月16開催)
2020年10月16日、「スクリーン・リーダーで学ぶWebアクセシビリティ」を開催しました。なお、今回も新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、オンラインで開催いたしました。
Webアクセシビリティは、障害者のためだけに必要な品質というわけではありません。改善することで、どんな状況下でもだれもが使いやすくWebを利用することができます。その一方で、障害者の方々こそWebアクセシビリティをより切実に必要としているという事実もあります。
本セミナーでは、多様な障害の中でも視覚障害に焦点をあて、スクリーン・リーダーを日常的に使用している全盲のエンジニアが、その基本的な使用方法からWebサイトの閲覧方法まで、デモンストレーションを行いながら解説しました。
前半、木達からスクリーン・リーダーの基礎知識について紹介。スクリーン・リーダーとは、音声合成により画面の内容を読み上げるソフトウエアで、主に視覚障害(全盲、弱視など)当事者が利用するツールであると説明しました。また、さまざまな種類のスクリーン・リーダーをとりあげながら、それぞれの特徴について説明しました。
後半、大塚のパートでは実際に使用しているPCとスマートフォンを用いて、スクリーン・リーダーのデモンストレーションを実演。主に、Webサイトで閲覧しやすいポイントやしづらいポイントを紹介しました。アクセシビリティの対応について、誤読の回避を目的とした読み仮名の提供など、視覚障害者への過剰な親切はかえってその他のユーザーの可読性が下がるリスクがあると訴え、音声での利用に過剰に偏った視点や対応は控えるよう呼びかけました。
当日は、予定していた質疑応答の時間を設けることができず申し訳ありませんでした。セミナー終了後のアンケートでは多くの質問をお寄せいただきました。こちらのレポート上で質問と回答を一部公開させていただきます。
質疑応答(一部抜粋)
Q:代替テキストの内容は状況によるとのことでしたが、もう少し具体的な事例があれば教えてください。
A:例えば画像内にテキスト情報が含まれる場合は、テキスト情報はできるだけ書きだすのがよいでしょう。テキスト情報があまりにも多かったり、重要な情報を含む場合は、画像内ではなく本文への掲載も検討されるとよいかと思います。また、スクリーン・リーダーは画像にフォーカスが当たると、「画像(画像の代替テキスト)」などと読み上げるため、画像の種類(写真、グラフなど)についても記載があるとよいでしょう。セミナーでもお話ししたように、代替テキストのみを確認し、画像によって伝えたい情報が伝わるかというのが代替テキストを検討する際のポイントの1つになると考えています。
Q:スクリーンリーダーユーザーは、サイトのチャットによる質問受付のサービスにどのようにして気づくのでしょう。また、別ウィンドウで展開されるサービスを使って一度サイトを離れた場合、元に戻るのは簡単ですか?
A:チャット機能の存在にどう気づくか、またチャット機能から元のサイトに戻る方法については、各サービス固有のつくりのお話になってきますので、一概にご説明することは難しいのですが、一般的なWeb技術でモーダルウィンドウとして制作されたものであれば、スクリーン・リーダーのユーザーでも利用できるようにすることは可能と考えます。
なお、当社のサイトで導入しているオンラインチャットは、残念ながら現時点ではアクセシブルなものではありません。スクリーン・リーダーではチャット機能の存在に気づけない状況のため、代替手段としてお問い合わせフォームから連絡をいただくことになります。
Q:ロゴは、ハイパーリンクになっていない限り、代替テキストは不要ですか?
A:代替テキストが不要か、つまり空の代替テキストを指定(alt="")すべきかどうかは、画像にハイパーリンクが設定されているかどうかで一義的に決まるものではありません。その点は、画像がロゴである場合も同様であり、ロゴ画像の前後の文脈、とりわけハイパーリンクが設定されている場合、そのa要素がimg要素のみを含むのか否かを踏まえ、代替テキストを考える必要があります。
取締役(CTO)木達からのコメント
本セミナーで、視覚障害者がWebを利用するうえで直面し得る困難を知るには、やはりデモンストレーションをご覧いただくのが一番だな、という思いを新たにしました。
スクリーン・リーダーのユーザーである大塚があくまで主役、私は脇役という役割でお届けした今回のセミナー。個人的には、大塚との「掛け合い」にあまり時間を割けなかった点が残念でありました。
しかし、アンケートでお答えいただいた内容を拝見した限り、音声を通じたWeb利用について理解を深めていただくと同時に、アクセシビリティの必要性や重要性を体感していただくという、本セミナーの企画趣旨は達成できたように思います。
皆さまの運用されているWebサイトの、今後のアクセシビリティ改善のお役に立てたようでしたら、幸いです。
アクセシビリティ・エンジニア 大塚からのコメント
セミナーへのご参加、誠にありがとうございました。
本セミナーでは、多くの時間をいただきスクリーン・リーダーの基本的な使用方法やWebサイトの閲覧などのデモを行いました。デモを通じ、より実際に近いスクリーン・リーダーの利用方法や、スクリーン・リーダー利用者がWebサイトを閲覧する際に直面する課題についてお伝えできたかと思います。
一方で、こちらの不手際で質疑応答の時間をとることができず申し訳ありませんでした。
セミナーでもお伝えしましたが、Webページ上での要素ジャンプや画像の代替テキストの読み上げなど、スクリーン・リーダーには聴覚のみから、できる限り効率よく、またより多くの情報を取得するためのさまざまな機能が組み込まれています。
こうした機能を最大限利用するためには、Webページを適切に見出しでマークアップする、画像に代替テキストを設定するといった取り組みが非常に重要なものになると考えています。
近年では、さまざまな基本ソフト(OS)に日本語で利用できるスクリーン・リーダーが標準で組み込まれるようになりつつあります。まずは、今回のセミナーの内容を思い出していただきつつ、ぜひ運用しているサイトをスクリーン・リーダーがどのように読み上げるのかを確かめていただけたら幸いです。
アンケートにお寄せいただいたコメント(一部)
- 全盲の方がどういったソフトや使い方をされているのか実際に見ることができ、とても参考になりました。今後のサイト制作に役立てられそうです。
- 普段、どのようなことに気をつけてマークアップしていけばよいかがわかりました。
- 資料も詳しく具体的で、NVDAなど実際のソフト名を出して紹介してくださり、説得力がありました。
- 実際の操作画面を共有していただけて、バーチャル開催だからこそ、全員がクローズアップで操作を見られたのは、とても素晴らしいと感じました。