Webアクセシビリティ改善の始め方・続け方(2022年11月17日開催)
2022年11月17日、「Webアクセシビリティ改善の始め方・続け方」をオンラインで開催しました。本セミナーは、2022年5月17日に行われた「Webアクセシビリティ入門セミナー 2022」の続編として実施しました。
アクセシビリティが社会的に求められつつある中、"着手したものの、取り組みを継続できる自信がない"とお悩みを感じているWeb担当者さまは少なくありません。本セミナーでは、アクセシビリティの継続的な維持・向上のために必要な考え方や施策を詳しく解説しました。
はじめに、Webアクセシビリティに求められるPDCAを紹介。Web環境やコンテンツは変化し続けるため、継続的改善は不可欠であると強調しました。また、アクセシビリティ品質の基準としてよく用いられるガイドライン「Web Contents Accessibility Guidelines(WCAG)」や「JIS X 8341-3」の概要を説明。年表とともに2つの関係や違いを解説したほか、関連文書をとりあげました。最後に、PDCA(Plan、Do、Check、Action)の4つの内容をそれぞれ明示し、はじめは小さくでも、PDCAサイクルを着実に回すことに専念しましょうと訴え、セミナーを終了ました。
取締役(CTO)木達からのコメント
セミナーへのご参加、誠にありがとうございました。本セミナーは、「Webアクセシビリティ入門セミナー」の続編として企画・開催をしたものです。アクセシビリティの必要性や重要性は理解したものの、なかなか次の一歩が踏み出せない、ないし取り組み始めたものの継続が難しく感じている......そんなWeb担当者の皆さまのお役に立てましたら幸いです。
しかし、1時間という時間的な制約の中ではお伝えしきれなかったところも多く、特にWCAGについては概要を紹介するにとどめざるを得ませんでした。従い、PDCAサイクルの全体像はお伝えすることができたと思いますが、アンケートでは「具体的にWebアクセシビリティ改善のために何をするかのイメージはイマイチ広げることができませんでした」というご意見をいただきました。
ほかにも「PDCAの実例など具体例やその際の課題をどう乗り越えたか等、質疑応答で聞けたような実例をもう少し伺えると」といったご要望もいただきました。WCAGへの理解をいかにして深めるか、またチェックツールと専門家によるチェックをどう組み合わせるかなども含め、2023年にはまた新たなセミナーを企画・開催したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
最後に、アンケートを通じていただいたご質問、2問にこの場を借りて回答させていただきます。
動画をWebサイトに埋め込んで掲載することが多いですが、どのような点に配慮すればWCAG2.1のレベルAの達成基準を満たすことができるでしょうか?Webページ上への文字起こしはハードルが高いと感じているため、動画字幕を付けることを考えていますが、字幕のつけ方にも気を付けるべき点があるでしょうか
動画、とひとことで言ってもいくつかの種類が想定されます。ここでは収録済み、つまり生中継などの類いではない映像と仮定してお答えさせていただきますが、そのようなコンテンツで適合レベルAの達成基準について特に注意していただきたいのは
が該当すると思います。それぞれ、解説としては
において、達成基準の意図や達成方法が記されていますので、まずその内容をご理解いただく必要があります。字幕(キャプション)については会話の内容だけではなく、コンテンツを理解するのに必要であれば効果音などについても適宜、テキスト化のうえ表示していただく点にご注意ください。
経営陣に必要性を理解させたいのですが、どのようなアプローチが有効ですか?
経営層の方々が現状、アクセシビリティを殊更に障害者や高齢者と関連づけて認識ないし理解をされているとすれば、まずその否定から取り組む必要があると思います。もちろん、障害者や高齢者の皆さんにとっても不可欠の品質ですが、アクセシビリティを高めることがすべてのユーザーにとって有意義であることを、正しく理解していただきましょう。
そして、Webサイトを「使うことができる」ユーザーの母数を最大化するのがアクセシビリティです。従い、アクセシビリティの良しあしはビジネスに直結しており、その向上に取り組まなければ一定数のユーザーなりコンバージョンの取りこぼしが生じることを説明しましょう。同じ文脈においては、アクセシビリティの向上がSEOにつながるという説明も有効かもしれません。
また、法令順守のような文脈のほうが刺さる経営層の方もいらっしゃるかもしれません。日本国内でも、アクセシビリティへの取り組みは既に障害者差別解消法などにより一定程度求められていますが、海外ではWebを含め広くデジタルアクセシビリティに関連して、訴訟が数多く起こっています。グローバルにビジネスを展開する企業にとって、アクセシビリティに取り組むことは必須となりつつあることを紹介しましょう。
いろいろ書かせていただきましたが、シンプルに、多様なユーザーが多様な方法でWebにアクセスするようになった、というただ一点をもってしても、もはやアクセシビリティに取り組まない理由はありません。もしかすると、そのような説明のほうが、経営層の皆さまも理解しやすいかもしれません。
アンケートにお寄せいただいたコメント(一部)
- アクセシビリティについては、一般的な概要はわかるものの、どのようにチェックを進めていくのかよいかわかりかねていました。本日のセミナーでイメージを掴むことができました。
- Webアクセシビリティを進めるにあたって、参考となるサイトの紹介がよかったです。また、WCAG・ISO・JISの歴史の図がとてもわかりやすかったです。
- 雰囲気もやわらかく話し方に穏やかさがあるところが、気構えることなく参加しやすい理由と感じています。また情報が根拠に基づいているところに注目させていただいています。