スクリーン・リーダーで学ぶWebアクセシビリティ(2023年6月22日開催)
2023年6月22日、「スクリーン・リーダーで学ぶWebアクセシビリティ」をオンラインで開催しました。
近年、VoiceOverやNVDAなど、画面の表示内容を音声で読み上げるスクリーン・リーダーを、無料で手軽に利用できる環境が整いつつあります。その一方で、スクリーン・リーダーを主に使用している視覚障害者が、どのように利用しているのかは、あまり知られていないのではないでしょうか。
本セミナーでは、スクリーン・リーダーを日常的に使用している全盲のエンジニアが、その基本的な使用方法からWeb閲覧の方法まで、デモンストレーションを交えながら解説しました。
はじめに、澤田がスクリーン・リーダーの概要について説明。複数のスクリーン・リーダーを紹介し、それぞれの特徴について説明しました。
大塚からは、スマートフォン版とPC版それぞれのスクリーン・リーダーを使用したデモンストレーションを実施。文字入力の方法や画像認識、Webサイトを閲覧する際のポイントなどを話しました。
シニアマネージャー 澤田からのコメント
当社セミナーへ参加いただきまして、ありがとうございました。
今回はスクリーン・リーダーのデモンストレーションをご覧いただきましたが、いかがだったでしょうか。
画面が見えている状態とは操作方法が大きく違うことに、驚かれたと同時に、きっとさまざまなことに思いをはせられたのではないかと思います。アクセシビリティ向上の取り組みを始められている方にとっては、多くの謎が解けた、あるいは大きな納得感が得られたのではないかと感じています。
皆さんが取り組まれている多くの施策は、大塚をはじめアクセシビリティを必要としている多くの方や環境に届いています。ぜひ、その取り組みを継続、拡大していただければと思いますし、当社が少しでもお手伝いできれば幸いです。
アクセシビリティ・エンジニア 大塚からのコメント
この度は、セミナーへご参加いただきありがとうございました。スクリーン・リーダーのデモンストレーションを通じ、より実際に近いスクリーン・リーダーの利用方法や、スクリーン・リーダー利用者がWebサイトを閲覧する際に直面する課題についてお伝えできたかと思います。
セミナーでお伝えしたように、特定の要素間を移動したり、画像に設定された代替テキストを読み上げるなど、スクリーン・リーダーには画面を見ることなく情報を取得するためのさまざまな機能が存在します。デモンストレーションをご覧いただき、スクリーン・リーダーで情報を取得するうえで、適切な見出し要素や代替テキストの設定がなぜ重要になるのかを実感いただけたのではないでしょうか。
今回のセミナーを、アクセシビリティの向上について検討する一つのきっかけとしていただければ幸いです。
アンケートでいただいた質問への回答
本日質問で|(パイプ)についてご回答いただきましたが、その他、文中で書いている文字として「~」を「から」と読んで欲しいが「なみ」と読んだり(金)を金曜日とは読まないので理解しにくいかなと感じています。この文字はこの文字に置き換えると理解しやすいなどの一覧や手引書などはあったりするのでしょうか。
一覧や手引書については存じておりませんが、範囲を表すために~(波線)を使用したり、曜日を漢字1字で表すといったことは一般的に行われており、スクリーン・リーダーの利用者は慣れているため、わかりづらさを感じることはあまり多くないと思われます。一方、メールマガジンやSNSでのプロモーションなどで、装飾のために過剰に記号が使用されているケースを時々見かけます。このような場合、スクリーン・リーダーは装飾的な記号を繰り返し読み上げるため、必要な情報が閲覧しづらい状態となってしまいます。
スクリーンリーダーユーザーが集まって、良いサイトやWebサービスについて語っているコミュニティなどがあれば知りたいです。
一例とはなりますが、日本ではTwitter上でアクセシビリティについて情報発信や情報交換を行っている方が一定数存在します。また、主に英語圏のユーザーが参加するコミュニティとしては、Appleに関連したアクセシビリティについての情報を扱う、AppleVisというWebサイトなどがあります。
iPhone 実機で VoiceOver の通常起動、ショートカット起動を実施してもらいましたが、VoiceOverがOFFでショートカット起動も登録していない場合(端末購入時)などはどのように起動させているのでしょうか?そこは周りの人に設定変更してもらうのでしょうか?
初期設定の際も簡単に起動させることができます。端末購入時に何も設定を行っていない状態でiPhoneの電源を入れ、ホームボタン、もしくはサイドボタンを3回押すことでVoiceOverを起動させることができます。また、Siriが利用できる場合、「VoiceOverをオンにして」と話しかけても有効にできます。
大変勉強になりました。誠にありがとうございました。スクリーン・リーダーでは、読み上げる声や速度が、内容によって通常変化すべき抑揚がなかったりと、人が話すよりも内容の理解しにくさがあると思うのですが制作側の工夫次第で内容理解がしやすくなることがあれば知りたいです。
スクリーン・リーダーでの読み上げを過剰に意識する必要はなく、一般的に読みやすいとされる文章を書くことを意識すると良いかと思います。例えばできる限り文章を簡潔に記載するなど、目で見ても理解しやすい文章とすることで、スクリーン・リーダーでもある程度理解しやすい状態になると考えています。
アンケートにお寄せいただいたコメント(一部)
- スクリーン・リーダーがどのように使われているのかを知る機会がなかったので、イメージすることができました。また、読み上げにあたりtitle要素、見出し設定、代替テキスト設定、フォームの設定など、あらためてその重要性を認識できました。
- 今すぐにできそうな簡単な対策(タイトル、不要なスペースは良くない、CSSを設定し正しくマークアップ等)はやっておこうと感じました。視覚障害のある方がWebサイトを閲覧しているところを拝見する機会は初めてだったので、大変勉強になりました。
- デモンストレーションが大変印象に残りました。アクセシビリティに関するテキスト情報ではスクリーン・リーダーやキーボード操作への考慮が大切だ、とよく見かけることはあったものの、あまり理解できていなかったように思います。今日のお話でこの大切さがよくわかりました。今後の業務に活かしたいと思います。