Webアクセシビリティ改善の始め方・続け方(2024年7月25日開催)
2024年7月25日、「Webアクセシビリティ改善の始め方・続け方」をオンラインで開催しました。
2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、アクセシビリティへの注目が高まっています。その中で、なにから着手すれば良いか悩んでいるWeb担当者もいるのではないでしょうか。本セミナーはそんな担当者に向けて、当社 木達がアクセシビリティ改善の実践的な方法について解説しました。
はじめに、日々更新していくWebコンテンツの変化に対応するため、継続的にPDCAサイクルを回すことが不可欠であると話しました。次にガイドラインについて説明。Webアクセシビリティでよく利用されるWCAGとJIS X 8341-3について紹介しました。アクセシビリティ改善の実践的な方法については、それぞれPDCAの順に具体的な内容を解説。初めから完璧をめざすのではなく、まずは小さなことからでも取り組んで改善していくことの大切さを強調し、セミナーを終了しました。
エグゼクティブ・フェロー 木達からのコメント
セミナーへのご参加、誠にありがとうございました。冒頭で申し上げたとおり、「Webアクセシビリティ入門セミナー」の続編と位置付けつつ、一昨年に開催した際の反省を踏まえ、時間を60分から90分に延長、内容を拡充したのが本セミナーです。
アンケートの結果を拝見しますと、おおむねご好評をいただけたようでしたが、オンライン形式のセミナーで90分はちょっと長かったかなと、講師の立場ではそう感じております。そのいっぽう、質疑の時間が十分に確保できず申し訳ありませんでした。
参加をお申し込みいただいた際に寄せられたご質問で、当日お答えできなかったコメントがあります:
現サイトのWebアクセシビリティ向上を始める上で、どのように進めれば良いのか、どのような方法が効率的なのか、などを教えていただきたいです。
ご依頼の内容は、あらかたセミナーの時間中にお伝えしたつもりではありますが、繰り返しを気にせずお答えしますと、まずはとにかく関係者のあいだでしっかり「なぜ取り組むか」の理解をそろえることが大事かと思います。
私は、そういう基本的なところで関係者の理解や意識をどれだけそろえられるかが、その後の取り組みにおける効率に大きく影響すると考えています。
「なぜ取り組むか」は本セミナーの主題ではありませんが、大きくは守りと攻めの2種類に動機を大別できます。守りとはいわゆる法令遵守、コンプライアンスのために取り組むということです。攻めについては、アクセスを増やし、コンバージョンを増やし、ブランドを高めるといった目的で取り組むということです。
どちらの動機がより広く支持を集めるにせよ、オススメは企業理念やパーパスといった組織の上位概念と「なぜ取り組むか」を紐づけることです。上位概念はたいてい抽象的で、「良いこと」しか書かれていませんから、多少こじつけっぽくなってしまっても、紐づけることはできるはず。それができれば、関係者の理解を得やすいはずですし、また取り組みが後戻りする懸念も減らせます。
また当日、質疑応答の時間中にいただいたご質問に、以下のものがありました:
アクセシビリティの試験は、どのくらいのスパンで実施するのが適切かご教示いただけますと幸いです。
JISに基づく試験にしろ、JISに基づかないアクセシビリティ検証にしろ、その実施頻度に一義的な定めがあるわけではありません。ご予算であったり、コンテンツの更新頻度に応じて異なるでしょうし、またどの範囲を対象として実施するか、どのような手法で具体的に何を検証するかによっても異なってしかるべきと考えます。
その設計において、やはり指針となり得るのが「ウェブアクセシビリティ方針」です。ぜひ、達成すべき品質のみならず、その品質を確認する頻度や体制、ワークフローなどについても、「ウェブアクセシビリティ方針」を策定する中でご検討ください。
またアンケートを通じて、アクセシビリティ オーバーレイに関し、以下のご質問をいただきました:
オーバーレイを導入しております。社内でも不要では?という声もたびたび上がるのですが、一度導入したものをなくす強い根拠もなく、毎年更新している現状があります。無くしたほうがより良い明確な根拠はあるのでしょうか?
たとえオーバーレイを導入していても、すべてのユーザーにとって、それが有効とは限りません。従い、オーバーレイが有効ではない状況において、組織が目標とするアクセシビリティ品質が確保されているか、まず確認いただきたいと考えます。もし、その答えが「ノー」であるなら、オーバーレイに費やしていたお金は、ぜひコンテンツそのもののアクセシビリティ向上に使っていただきたいと思います。
かつてコラム「アクセシビリティ オーバーレイに対する見解」において、私は対症療法ではなく根治を目指した治療なり施策を提供したい
と書かせていただきました。上記の提案は、その考えに基づくものとご理解いただければ幸いです。
アンケートにお寄せいただいたコメント(一部)
- 社内でもアクセシビリティ改善の動きが活発化しているため、大変ためになりました。特に、参考サイトや資料のご共有はありがたかったです。
- 用語の説明だけでなく、具体的な事例などを用いて説明いただけたので分かりやすかったです。
- 実装に関する考え方や、アクセシビリティオーバーレイに関する見解など、これから対応するにあたって参考になるお話を聞くことができました。ありがとうございました。