デザインガイドライン/デザインシステム入門(2024年8月21日開催)
2024年8月21日、「デザインガイドライン/デザインシステム入門」をオンラインで開催しました。
競合との差別化が難しくなってきている現在、ブランディングを通じブランド固有の一貫性を保つことは、重要です。そして、Webサイトにおいて一貫性を保つには、デザインガイドラインのようなドキュメントやデザインシステムと呼ばれる仕組みが有効です。本セミナーでは当社 木達が、その重要性や活用の仕方を詳しく解説しました。
はじめに、デザインにおいて満たすべき品質を担保するための指針やルールをまとめた文書をデザインガイドラインと呼び、その活用がブランディングやガバナンスの維持につながることを説明しました。そのうえで、近年話題に上ることの多いデザインシステムについても、他社事例を交え紹介しました。最後に、デザインガイドラインの作成プロセスを詳しく解説。最初から欲張らず、徐々に拡充することが運用上のポイントであると訴えました。
エグゼクティブ・フェロー 木達からのコメント
セミナーへのご参加、誠にありがとうございました。当日は大勢の方にご参加いただけたほか、質疑応答の時間には回答しきれないほど多くのご質問をいただき、講師冥利に尽きます。まずは、当日お寄せいただいた(なおかつ時間内にお答えできなかった)3つのご質問に、お答えします。
先ほどの銀行のように、ボタンのデザインがバラバラだった場合、ガイドラインを作るだけでなく、(おそらく数えられないほどある)ボタンのソースを書き換える必要があると思います。膨大な時間と手間がかかるため、なかなか踏み切れないと思いますし、手をかけたとしても(感覚的なものであるため)効果を把握するのが難しいと思いますが、御社のご経験からコメントをいただけないでしょうか。
おっしゃる通り、見た目や使い勝手がバラついているUIの一貫性を高めようとしますと、程度はさておき一定コストの捻出は避けられません。仮に、そのバラつきが深刻なブランド毀損を招いている可能性がある、ないしすでに毀損している事実が確認できた場合には、時間と手間をかけてでも早期に改修する必要があると思います。
いっぽうで、そこまで差し迫った状況にはなく、改修コストに見合った効果を期待しにくければ、あえてバラつきを維持するのも一案かと思います。ただし、単に現状を放置して良いわけではなく、バラつきの発生原因を特定のうえ、以後の発生を最小化する取り組みや、次期リニューアルにおいてバラつきを解消するために必要な準備を進めるといった取り組みが必要です。
紙ものや店舗内装までを含めたイメージ統一に向けたガイドラインの場合、ステップ感やまとめる情報の対象は変わりますでしょうか?
残念ながら、私にはそこまで広範にわたるブランドコントロールの経験がないため、はっきりとしたことは申し上げにくいのですが、デジタル領域とそれ以外とで一元化できる部分とそうでない部分の両方があると考えます。
企業サイト、サービスサイトと分かれている場合、 デザインなど多少異なることもあると思いますが、 それぞれガイドラインは分けて考えたほうがいいのか、共通して考えたほうがいいのかでいうとどちらでしょうか
必ずこうすべき、という一律の正解は存在しないと私は思います。企業ブランドとサービス固有のブランドを、どの程度分けてコントロールするのが望ましいかは、完全にケースバイケースだからです。ポイントは、ステークホルダーにとって両者がどれくらい重なり合っているか、またその重なり合いを企業目線でどう扱いたいかです。
またセミナー終了後には、次のようなご質問をアンケート経由でお寄せいただきました。
デザインシステムとまではいかず、デザイナー向けにUIパーツのライブラリのようなものをひとまずXDで作成していますが、パーツの粒度・カテゴリ分け、1ファイルにどこまで乗せるか、今後の運用管理しやすさなど、悩んでおります。
XDやフィグマなどで作成された良い事例などあればご教示いただけますでしょうか。
セミナーのなかでデジタル庁のデザインシステムをご紹介しました。デジタル庁では、デザインデータをFigmaで作成・公開していますから、まずはそちらを参照されてみてはいかがでしょうか。
ただし、デジタル庁のデザインデータのつくりが、そっくりそのまま質問してくださった方の組織におけるデザイン管理に最適かは、わかりかねます。運用や管理のしやすさは究極、組織ごとに異なる認識ですので、そこは定期的に見直していただきながら、組織固有の理想に近づけていく必要があろうかと思います。
最後に、これは質問ではなく感想ですが、アンケートで大変ありがたいコメントを頂戴しました。
私どもの組織にはデザインシステムあるいはガイドラインは存在せず、また今後そう呼べる形式を今後導入するかは未定ですが、「ブランドの維持」「デザインの統一」「業務の効率化」という目的の遂行を考えたとき、本日のお話は大変参考になりました。「制作会社≒デザインシステム論」という論考についてもご紹介いただきましたが、まさにデザインシステムそのものよりも「デザインシステムという考え方」が重要であり、その実現には多様な方法論があるだろうという視点を得ました。
セミナーを通じ私がお伝えしたかったこと、をしっかり受け取ってくださったようで、本当にうれしく思います。デザインガイドラインにしろデザインシステムにしろ、それを作ることが目的になっては本末転倒。デザインガイドラインやデザインシステムはあくまで手段であって、それが何を目的としているかは、関係される皆さまのあいだで常日頃から認識をそろえていただけますと、ありがたく思います。
アンケートにお寄せいただいたコメント(一部)
- 具体例を交えながら、わかりやすく簡潔にご説明いただいた点がとてもよかったです。90分あっという間でした。
- 具体例や体験談をもとにお話しいただけたので、より納得感が得られました。重視すべき軸が知れたのと、どこをどう参考にすべきか、という注意点も意識できたて良かったです。今後に活かせそうです。ありがとうございました。
- もっと技術的な内容のお話かと身構えていましたが、基本から順を追って説明くださり勉強になりました。私はどちらかというとデザイン側の人間ですが、このセミナーを受講したことでデベロッパー側の立場もよくわかり、今後の業務にも活かせそうです。
- 検討のステップや、決めるべき点のご説明がわかりやすく、社内で検討中のガイドラインについてつまずいているポイントが見えてきました。