コンテンツ制作は引き算
ミツエーメディアクリエイティブ 取締役 橋本 敬私事で大変恐縮ですが、ここ数ヵ月の間、新しいデジタルカメラを購入しようといろいろな商品を比較検討しています。銀塩、デジタル共に一眼レフを所有しているので、もう少し持ち運びに便利なコンパクトなタイプが欲しいのですが、なかなかどうして決めかねています。画素数や記録メディアの種類等はもちろん比較や検討の対象なのですが、もうひとつどうしても譲れないものがあります。その譲れないものというのはファインダーです。液晶モニタだけでなくファインダーが付いているというのが私のデジカメ選びのポイントになっています。
趣味として写真を撮り始めたのは高校生の頃ですが、やみくもにシャッターを切っていた頃に比べ、最近ではファインダーを覗いた時に多少なりとも構図の整理ができるようになってきました。それでも失敗することの方が多く、写真雑誌に書かれている「写真は引き算」というようなアドバイスを思い出しては、自分の撮影した作品を見ながらがっかりすることがあります。
そうした作品に共通するのは「撮らされている」「撮ってしまった」という感覚です。ファインダーを覗いてシャッターを切るまでの間に自分なりのテーマを明確にできないまま、シチュエーションやタイミングで撮ってしまったなぁ、と後悔します。寄ったり引いたりすることで、ファインダーの中で対象物をうまく切り取りながら撮れるようになりたいなぁと常日頃思うのですが、まだまだ先は長そうです。こうしてテーマを整理しながらシャッターを切るためには、何となく全体像が見えてしまう液晶モニタよりもファインダーが付いているカメラの方が私には望ましいのです。
同じようなことがコンテンツ制作にも言えると感じています。これはビジュアル的な側面だけではなく、コンテンツという広い範疇で考えた場合の話です。表現すべきテーマを絞り、余分なものをそぎ落としながら組み立てていくことは引き算そのものです。
しかし、この引き算が難しいというのも写真と同じで、画面の中にさまざまな要素を詰め込むことで多角的にうまく説明しているように見えますが、逆に焦点が絞れなくなるためにテーマがぼけてしまうことはないでしょうか。
引き算による整理に固執するあまりコンテンツが「枯れた」状態になってしまっては本末転倒ですが、本当に伝えたいこと以外は思い切って捨てる潔さが必要な時もあると考えています。もちろんこの考え方が全てではなく、バランスをとりながら組み立てることも可能ですし、そのバランスをとることもまた技術を要します。
しかし、本質(=テーマ)を捉えるという点では、表現方法や技術よりも、この引き算ができるかどうかが究極的にはコンテンツ制作の始まりであり、ゴールでもあり、そして全てなのではないかと思います。
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