統合マネジメントシステムプロジェクト進捗報告
MS本部 平山 敬ミツエーリンクスでは、6つのマネジメントシステムを運営しています。今年6月、弊社では、これらのマネジメントシステム群を統合するためのプロジェクトを開始しました。
マネジメントシステム統合の必要性
統合の必要性については、何度か社内でも話題になってきました。システムの運営が長年にわたり、成熟度が上がってきたものの、弊害も生じています。現在、弊社にはマネジメントシステム関連の文書(マニュアル・規定類)が29編、様式・記録類が102種類あります。これは、マネジメントシステム管理担当者の文書更新の工数となり、現場担当者には手順がどこに規定してあるか分かりづらいという混乱に結びついています。規格の要求事項を満たし、弊社の解釈を盛り込み、文書体系は他に類を見ないものが完成しましたが、文書全体を見渡すことが困難な、巨大な文書群になっています。
このプロジェクトを開始するにあたり、キックオフミーティングを開催しましたが、各システム責任者の統合に対する思いも様々であり、統合作業を開始する前に、各システム責任者間の認識の統合が必要だということが分かりました。しかし、話を進めていくうちに各システム責任者の認識は、表現方法が異なるだけで、認識している問題点は同じということが分かってきたのです。システム統合の目的を統一するために、その捉え方を変え、共有するという手段をとることで、統合するために採るべき方法が徐々に明確になっていきました。
こうして、約2ヶ月間の準備・検討期間を経てプロジェクトが具体的に進み始め、現在は各システム責任者と協議しながら、今までの運営ノウハウを水平展開するために、毎週各責任者と統合のための定例ミーティングで議論を重ねています。
統合のゴールを設定するために必要な3つの視点
統合する目的を捉えるためには、視点の切り替えが必要でした。その視点を3つに分類し、「マネジメントプロセスの視点」、「従業員の視点」、そして最後に「顧客の視点」と設定しました。さらに、統合作業を進めるために、以下の通りに仮定し、統合プロジェクトは、これらを改善するための手段と捉えることにしたのです。
- マネジメントプロセスの視点
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マネジメントシステムを「規格要求事項(もしくは審査対応)」として認識している
- 従業員の視点
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マネジメントシステムを「守るべき手順(もしくは手間)」として考えている
- 顧客の視点
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マネジメントシステムをメリットや信頼性の根拠として認識している
審査で指摘を受けないマニュアルを記述することは簡単なことですが、記述した文書はシステムとして再構築しなければならず、システムは運用しなければいけません。また、運用には証拠としての実施記録が求められます。
マネジメントシステム統合にとって重要なのは、各責任者の思考を「マネジメントシステムを規格要求事項から考えるのではなく、上記の3つの視点から考えるように促す」ことです。マネジメントシステムを「規格や審査員の視点」で捉えていくと、本来あるべき姿を見失うことになります。審査への適合のみを考えていては、効果的な運用と、異なるシステムの有機的な結びつきは実現できません。
また、統合に際して、各システムにはこれまでにない取り組みや活動のレベルアップをお願いすることになります。逆に、既存の活動を停止する場面も出てくるでしょう。重要なのは、既存のルールのうち、変えてもいい項目と守り続けるべき項目を区別することです。
規格の専門家である審査員は、われわれの会社の内情をほとんど知りません。会社をコントロールするのは、その会社にいる従業員自身であるはずで、マネジメントシステムそのものや、その元になる規格ではありません。
私たちのアプローチ
プロジェクトの正式スタートまでに、約2ヶ月間かけ、さまざまな準備を行ないました。今回は、その中から、参考までに統合作業の一部をご披露したいと思います。
準備作業は、用語の統一、規格の対応表作成、各マネジメントシステムマニュアルの目次対応表、文書体系の対応表、役職名の対応表、記録・様式の統一、年間スケジュールの統一など多岐にわたりました。
この中でも、特に重要で、多くの工数を必要とするのが、文書の統合でしょう。文書の統合に際しては、新しい文書を作成しながら、徐々にそちらに移行していく「順次移行型」と、既存文書での運用を維持しながら、事務局で新文書を作成し、文書の完成度を確保した時点で一気に切り替える「切り替え型」を検討しました。
検討の結果、「切り替え型」を採用し、現在、事務局スタッフが参照するルール集を統合した「統合マネジメントシステムマニュアル」を作成中です。
統合作業の例を先ほどの3つの視点でまとめると、以下のようになります。
マネジメントプロセスの視点
文書数の減少による管理工数削減、紙使用量の節約、問題点の把握・計測・改善を共通のプロセスで処理することによる改善までのスピード向上などが期待できます。このほかにも、マニュアルを統合するため、各システム間で漏れ・ダブリやバラツキを解消できます。
従業員の視点
文書の統合は、手順の統合へと進んでいきます。例えば、弊社のISO9001の管理手順の一つに素材の管理(顧客支給品の管理)がありますが、これを既存マニュアルでは、「素材の預かり〜返却」はISO9001、「不要素材の処分」はISO14001、「素材データのバックアップなどの可用性・完全性・機密性の管理」はBS7799、「個人情報を含む場合」はJISQ15001、「万が一トラブルが発生した場合」はJIS Z9920という風に、素材管理ひとつ取ってみても、それに関する規定を包括的に理解するためには、5つの文書を確認する必要がありました。
これらを、新設する『統合マニュアル』の中で「素材の管理」という項目立てを行い一括記述することで、「素材を受け取ったら記録を残し(ISO9001)、バックアップを取る(BS7799)。特に、その素材が個人情報含む場合には個人情報管理責任者に報告する(JISQ15001)。素材が不要になった場合、メディアの処分の手順に従い(BS7799)、不燃物として処理する(ISO14001)。万が一事故が発生した時は、責任者に報告を行い適切な対応を取り(JIS Z9920)、予防処置を検討する」という記述をすることが可能になり、現場担当者は、各マネジメントシステムの垣根を意識することなく、「日常の手順」を「日常の言葉」としてとらえることができるようになります。
顧客の視点
守るべき手順の記述が簡素化され、従業員の理解度が促進されたことで、手順の遵守が進み、その結果が恩恵として顧客にフィードバックされます。さらに、手順の改善は、これまでのように一つのマネジメントシステムにとどまらず、他の関連するマネジメントシステムにも水平展開され、継続的改善も統合されるというスパイラルアップが生まれます。
最後に
このプロジェクトは、スタートしたばかりで、これから様々な調整を経て、統合を進めていくことになります。準備期間を多めに取ったので、今後の進展は比較的早く進むと考えています。このプロジェクトの進捗は、弊社サイトのマネジメントシステムの活動報告の中でお伝えしていくことができると思います。
さらに、弊社と同様の悩みをお持ちのマネジメントシステム事務局のお客様もいらっしゃるという仮説を立て、マネジメントシステム統合ソリューションとしてご提供するための準備もスタートしておりますので、是非ご期待いただきたいと思います。
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