CSR:「らしさ」をアピールするサステナビリティ報告へ。
HCDコンサルティングチーム 坂詰 千恵「企業の社会的責任」と言われると、「やらなくてはいけない」、「やらされている」というイメージがあるのではないでしょうか。環境に配慮した製品を作らなければならない、社会に貢献しなければならない、報告書を作らなければならない。確かにCSR(Corporate Social Responsibility)を直訳すれば、企業の社会的責任になります。企業が利益のみを追い求めるのではなく、環境や社会、経済、そして人とともに発展しなければいけないことは間違いありません。
今ならCSRは企業にとってプラス
当たり前のことだから、当たり前にやる。そう言いきれれば言うことはありません。しかし、そう思う企業は少ないのではないでしょうか。「やらなくてはいけないこと」という傾向に追い立てられ、CSRに取り組む企業の方が多いと思います。
今後、企業の規模に関わらず、CSRに取り組むことが当たり前になる時が必ず来ます。環境、社会、経済、人に対して配慮のない企業は相手にされず、「責任」としてCSRに取り組まなければならなくなるでしょう。しかし、今はまだCSRは「責任」ではありません。たとえ取り組まなくても、大きなマイナスにはならないでしょう。しかし、だからこそ今からCSRに取り組むべきなのです。今、CSRに取り組むことは社会から「誠意ある姿勢」と判断され、それは大きな「信頼」へとつながります。また他社と比べ、早い時期からCSRに取り組んだという事実は、今後必ず企業のプラスイメージになります。今ならCSRに取り組むことは企業にとって大きなプラスなのです。
「コア」を押さえ、「らしさ」をアピールする
では、CSRに取り組みたいが、何をすればよいかわからない企業も多いと思います。弊社は今までにDJSI(Dow Jones Sustainability Index)*1に選ばれた日本企業35社を中心に、140社以上の環境報告書、サステナビリティ報告書を収集し、分析してきました。そこで見えたのは「迷い」と「模索」です。持続可能な社会を築くために、いったい何をしたらいいのかが見えていないのです。
今はまだCSRは不確定の分野ではあります。GRIサステナビリティレポーティングガイドラインでは環境、社会、経済の3分野を中心に行うことを明記していますが、その3分野で何に取り組めばよいのかは示されていません。良くも悪くも「自由」なのです。しかし、何に取り組んでもCSRの取り組みとして認められるというわけではありません。必ず押さえなければならない要素が存在します。さらにそれをステークホルダー(利害関係者)にアピールする報告書にも報告しなければならない「コア」となる項目があるのです。
弊社はDJSIに選ばれた日本企業35社の報告書を比較、検討し、CSRとして報告すべき28の基本項目と、10のオプション項目を設定しました。たとえば、基本項目として「グリーン購入」があります。グリーン購入とは主に事務用品を対象に、環境に配慮した商品を優先的に使うことで、ほとんどの企業は取り組んでいるのではないかと思います。しかし、それをどう報告するのか。弊社は、1.どのような体制でグリーン購入を行っているのか、2.そのグリーン購入の基準の公開、3.全購入のうちグリーン購入が金額的・数量的にどの程度を示しているかを示す、この3点を報告することが必要であると分析しました。このような基本項目を押さえて報告することで、CSRの形となるのです。
しかし、「コア」な項目を押さえるだけではどの企業の活動をとって見ても、変わりばえがないものになってしまいます。同じ形のデータ、同じ報告形式では他社との差別化はできません。「コア」を押さえた上で、その企業らしさをアピールする。それがブランディングです。植樹を行う、トップのメッセージを映像でアピールする、コラムを掲載する、子ども向けの報告書を作成する。「らしさ」としてアピールできる活動内容、報告方法は多くあります。そして、それを表現する場として、Webが最適のツールであることは間違いありません。。
Webサステナビリティ報告の可能性
CSRの取り組みを報告する場合、サステナビリティ(持続可能性)報告書と位置付ける企業が増えてきています。環境、社会、経済、人、すべてが持続可能である社会を目指す取り組みの報告です。
Webでサステナビリティ報告を行う利点は、まず紙資源の節約になり、それ自体が環境保全活動となることです。すでに紙の報告書から徐々にWeb報告へと移行していっています。紙では概要を報告し、詳細な情報はWebもしくはCD-ROMで閲覧できる体制をとっている企業は複数見られます。紙での報告を行わない企業もあるくらいです。また、紙の報告書では1年に1度しか報告ができませんが、Webでは簡単にアップができ、すぐにステークホルダーに報告することができます。
そして何より映像、ナレーション、音楽が利用できる点、フォームアンケート等による双方向性の点からもWebがサステナビリティ報告の表現を無限にできるのは言うまでもありません。「らしさ」をアピールする場として、Webがサステナビリティ報告の中心となるときもそう遠くはないと思っています。
- ※1 米国ダウ・ジョーンズ社とスイスのSAM (Sustainable Asset Management)が選んだサステナビリティ株式指標。世界34カ国、59種の産業の大手企業2500社の中から、環境、経済、社会の3分野から企業の持つ持続可能性(Sustainability)を測り、SAMの評価が上位10%の約300社の株式銘柄を選んでその株価と配当利益を指標に組入れるもの。
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