顧客視点でのWebサイト構築法−SEO対策は顧客のためになるか?−
取締役副社長兼COO 小野 裕之近年企業のマーケティング戦略におけるWebサイトの位置付けは、確実に重要視されてきております。一時ITバブルで低迷していたWeb関連企業の業績もほぼ回復して拡大傾向が加速されているのは周知の事実だと思います。当然企業側のWebサイトを活用したマーケティング活動の拡大傾向もますます加速することでしょう。ただし現状は、例えば流通業では、ECによる販売総額は市場全体から見れば1-2%程度、またマンション販売においてWeb経由でのモデルルーム来場者比率は全体の10%程度と、まだビジネス全体からみるとWebサイトへの貢献度はそれほど大きくなシェアには至っておりません。
一方、2003年の通信利用動向調査によれば日本のインターネット利用者数の人口普及率は60%を突破したそうです。またブロードバンド普及率も50%前後という数字で世界でもトップクラスです。(2004年1月時点)。別な調査によると、月間あたりの家庭からのインターネット利用者数は3600万人程度という統計数字が出ております(2004年10月)。つまり全体の人口に対して約4人に1人が最低月1回はWebサイトを利用していることになります。もちろん会社からの利用や携帯サイトからのアクセスはこの数字に含まれておりませんので、あくまでも自宅からPC経由でWebサイトへアクセスするシーンだけを想定した場合の数字です。
上記の数字だけをみるとインターネットへのアクセス環境の整備が進み、利用ユーザー数の裾野は広がっているものの、実際ユーザーの日常生活の中で利用頻度はあまり進んでいないようです。やはりまだWebサイトが万人に対して使いやすく、開かれたモノになっていないのだなぁ、という印象を受けざるを得ません。
顧客が望むWebサイト及びWebサイトの利用環境が十分に提供できていないという前提にたつと、Webサイトを提供する企業、またそれらに替わってWebサイトを構築する我々のような立場の者は、もっと顧客視点にたったWebサイトを考える必要があると認識しております。例えばWebサイトは何らかの情報収集目的で利用する場合が多く、約8割の人が検索エンジンを利用して情報を探しているという報告があります。検索エンジンを利用したことのある人であればすぐわかると思いますが、検索エンジンを利用しても、なかなか目的の情報にたどりつけないケースが多いのではないでしょうか?目的が明確な場合はそうでもありませんが、ニーズがあいまいなケースになればその傾向は顕著になって現れます。
次に何とかそれらしき情報が掲載されたサイトにたどりついたとして、そこで完全に目的が達成されるケースは少なく、通常さらに詳しい情報もしくは関連する情報を知りたくなるという欲求が生まれます。そのような場合、果たして満足の行くナビゲーション機能等が提供されているでしょうか?Webサイトへ行っても結局1ページだけで去ってしまう顧客が多いことは、各企業のアクセスログやWeb視聴率データ等の結果からみても明らかな事実です。
これら顧客視点から問題点を捉えると、Webサイトを提供する企業側が対応しなければならない課題がはっきりと見えてきます。第一に検索エンジンに対する考え方です。最近ではSEO(検索エンジン最適化)を実施しているWebサイトも増えてきておりますが、顧客の望む情報を提供するというよりも、検索エンジンのアルゴリズムを解析して無理矢理自社商品掲載ページを検索エンジンに上位表示させようとする手法が多いように見えます。第二にはWebサイト内のユーザビリティの問題です。とくに検索エンジン経由で直接下位の商品ページ等から流入するケースに対する関連情報への導線の確保等といった対策が必要になります。
SEO対策については、企業側にとっては自社サイトへの訪問数を増やすために取り組まなければならない重要施策の一つですが、顧客視点も加味した手法を講じないと逆に企業イメージに傷がつく可能性すらあります。自社の商品PRだけではなく顧客が必要としている情報提供をもっと積極的に行い、自社の商品に対する理解や信頼感を構築していく姿勢が必要だと思います。そういう状況ができれば、望んだ情報が的確に上位表示されるという意味で、顧客にとってもSEO対策はありがたいものになるはずです。
SEO対策の本質は提供するページの内容を正しく検索エンジンに理解させることです。その意味ではWeb標準に準拠して構築されたWebサイトが最も適していると言えます。昨今SEM(サーチエンジン広告)が流行になってきておりますが、これは企業がモノやサービスを販売しつづけて対価をもらうという企業活動を促進するために必要な施策であることは間違いありません。しかしながらSEO対策においては、潜在的な購買ニーズをもった顧客をターゲットとして、情報提供を通して顧客との関係性・信頼性をつくり、最終的には企業ブランドを構築するといった目的も視野にいれた対応が望ましいと思います。Webサイトはプル型のマーケティング手法ですので、発想の転換が必要です。このように弊社のSEO対策の考え方は顧客の視点に基づくものです。是非ともWeb時代の新しいWebサイトを活用したマーケティング活動を顧客企業と共に構築していければと思います。
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