SECIモデルとWebコミュニケーション
プランニング&ディレクショングループ プランナー 棚橋 弘季野中郁次郎氏が提案した知識創造のプロセスモデルであるSECIモデルが気になっています。
SECIモデルは、組織の中での暗黙知と形式知のスパイラルを創り出す知識移転のプロセスを表したもので、「共同化」⇒「表出化」⇒「連結化」といったプロセスを経ます。そのプロセスの中で、知識は個人からグループへ、グループから組織全体へと共有されていき、最後にはまた組織全体で共有された形式知が個々のレベルで暗黙知として「内面化」されます。ナレッジ・マネジメントでは、特に、このSECIモデルのうちの「共同化」から「表出化」にいたるプロセスに必要な場、個人の暗黙知が複数の個人が集まるグループ内で共有され、形式知化が推し進められる場の形成が重視されています。
ところで、一般的にこうしたサイクルは、それがスパイラル型のモデルであることは強調されつつも、最後のサイクルから最初のサイクルに移行するプロセスに関してはあまり語られることがありません。しかし、僕が注目するのは、この最後のI(内面化)からまた最初のS(共同化)に至るプロセスで、むしろ、ISECモデルと言い直したいくらいです。
SECIモデルの図の左端(SとIが縦に並んだ端の部分)の部分に、縦方向に1本の境界線がある、そうイメージしてみたらどうでしょう。その境界線の左右には、企業を内外に隔てる境界で、内には、経営層や従業員が、外には顧客−非顧客をはじめ、パートナー、チャネルなどのさまざまなステークホルダーが存在します。顧客との打合せ、チャネルとの交渉、非顧客への営業活動、協力会社との新技術のサービス化に向けた一連の活動など、個人に暗黙知がもたらされる場面は、意外とこの境界線で起きることが多いと思います。とうぜん、そうなると外部と接することの少ない従業員は、こうした暗黙知を獲得するチャンスも少ないということになってきます。
しかし、Webでのコミュニケーションを考えれば、こうした従業員にも外部との接点で暗黙知を得るチャンスは得られます。ツールとしてBlogを使えば、コミュニケーションを行なうのもカンタンです。顧客、ユーザーのアクションは基本的にはリアクションであることが多いのです。特にプル型のWebマーケティングツールであるWebサイトでのコミュニケーションを行なう場合、まずは企業側から情報発信を行ない、その反応をみるのが手っ取り早かったりします。特に決まった商品を売るためではなく、まだ市場に出回っていないアイデアに関する市場の反応を知りたければ、まずはWebサイトを通じて、反応を見るのが一番です。企業内の個人の中に内面化(I)された暗黙知を、Webコンテンツという形で、外部へ発信し、それに対する外部の反応、リアクションをさらに暗黙知として共同化(S)する。こうしたコミュニケーションを活かすこともWebマーケティングを考える上では非常に重要ではないかと思います。
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