国民総ライター時代のWebライティングとは
ミツエーエディトリアル ディレクター 上原 佳彦優れたライティングに必要なことは、文才ではなくアイデア
これまでライティング、いわゆる文章を「書く」技術は、誰もが日常的に行っている作業ということもあり、他のビジネススキルと比べて軽視されるケースが少なくありませんでした。しかし、最近では多くのビジネスマン向け雑誌で「伝わるビジネス文書の書き方」、「ワンランク上の企画書ライティング術」といった特集が組まれ、スキル向上をはかる機会が増えています。これは、それだけたくさんの人が「書く」技術の重要性を再認識しつつあるという証拠かもしれません。
また、そういった雑誌の特集の中では、優れたライティングに「文才は必要ない」ということと、それよりも分かりやすく要点を伝えるアイデアこそが肝心だということが特に強調されています。確かにビジネスシーンにおけるライティングでは、秀でた文才を必要とするシーンはまれで、ぱっと見たときの分かりやすさの方が重要とされています。つまり、ビジネス文書においては、あれこれと言葉を選び文才をひねってライティングするよりも、見出しであったり、文章群の配置であったりといった「見せ(え)方」を工夫することの方が大切なのではないでしょうか。これはもはや、デザインに近い技術といえるでしょう。
Webページにこそ、見出しや配置などの工夫を
このことは、Webにおけるライティングでも同じことがいえます。むしろ、クリックひとつで簡単にページ移動ができてしまうWebの方が、ユーザーにメッセージを伝えるための工夫を、より充実させていかなくてはならないといえるかもしれません。しかし、雑誌上でのライティング技術再認識の流れとは異なり、Webではそれがなかなか活かされていないケースが数多く見受けられます。
たとえば、現在多くの企業Webページで採用されているSEO/SEM。この場合、検索エンジンでの上位表示獲得のため、ページ内に多くの関連キーワードを埋め込んだライティングが必要となります。しかし、最近ではその関連キーワードを意識しすぎて、文章が不自然な内容となっているWebページや、何度も読まなくては訴求したいことが伝わってこないWebページも増えてきました。これはキーワードへの強いこだわりが、説明文を冗長させてしまい、内容をぼやけさせてしまっていることが原因と考えられます。せっかくSEO/SEM対策を施して検索エンジンでの上位表示を獲得しても、ユーザーが行き着いたページの内容をまったく理解できなかったら、それこそ意味がありません。
こういったWebページにこそ、見出しや配置などの工夫を凝らす必要があるのです。
あえて伝えたいポイントだけを前面に
それでは、実際にどんな工夫をしていけばよいのでしょうか。まずはページ全体の総論を、冒頭の見出し部分で惜しみなく掲げてしまうことです。あえて伝えたいポイントだけをドンと前面に押し出していく方が、ユーザーの目に留まる可能性も高まります。さらに、ここへキャッチコピーを加えればより効果的です。ただし、「商品Aによる効率化のご提案」、「費用対効果アップが期待できるサービスB」といった無機質な言葉では、競合との差別化という点では難しいかもしれません。代表的な例でいえば、「貴社は本当に効率化できていますか?」、「費用対効果を高める秘訣とは?」といったユーザーに問いかけるような見出しなど、ちょっとしたアイデアが必要になります。
また、たとえどんな長さの文章であっても、すべてのページを検索エンジンからの入り口と考えるマトリックス型Webを意識し、「前のページでも述べたような〜」というように文章を省略しない方がよいでしょう。文字ばかりという印象を抱きがちなユーザーを考慮して、書いている内容ごとに細かく段落分けをすることも大切です。このとき、段落ごとに「段落ごとの概要を表す見出し」を入れるようにするといいかもしれません。
こういった工夫は、ビジネスシーンでの利用が急増しているBlogのライティングにも適用できると思われます。
「参考にしてもらえるコンテンツ」となるようなライティング
学生時代に使っていた参考書の多くは、「このページでは何を伝えたいのか」、「それによってどんな結果が得られるのか」といったことが、分かりやすく冒頭で目立つように記してありました。また、どのページから読み始めても内容を理解できるように、文章が工夫されていました。短時間で「どこが問題解決のためのヒントが掲載されているページであるか」や「どうすれば必要な結果が得られるかという解決策」が導き出せるように、というユーザーへの心配り。Webコンテンツのライティングに求められているものは、きっとこういう「参考にしてもらうための施策」なのでしょう。
ライティングにおいて重要なことは優れた文才よりも創意工夫です。しかもそれは、奇抜なアイデアではなく、「ユーザーにとって理解しやすい文章」を作るためのアイデアでなくてはなりません。メールやBlogの浸透によって国民総ライター時代を迎えた今、ライティング力によって競合との差別化をはかっていくためには、Webコンテンツ内の文章を単なる自己満足の発表にすることなく、「参考にしてもらえるコンテンツ」となるように意識してライティングすることが大切なのではないでしょうか。
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