「あるべき姿」を求めて
プランニング&ディレクショングループ ディレクター 安井 公平振り返ると
5年ほど前までBtoBサイトといえば、顧客企業様の会社案内パンフレットをデジタル化し、Webサイトとしての形にはめる案件が多かったと記憶しています。少し噛み砕くと、パンフレットの章立てを半ば無理やりにグローバルナビゲーションに転換し、本文のテキストに至ってもパンフレットをそのまま流用し、写真イメージについてもパンフレットをスキャニングしてWebサイトとしての体をなすように加工していただけの作業に思えます。いわゆるブローシャーサイトと呼称される形式です。この構築手法自体が間違っているわけではありませんが、ここ数年の顧客企業様のご要望をおうかがいしていると、Webサイトを構築してから、その情報リソースを活かしてパンフレットを作成したい。というニーズの逆転現象がおこっています。
顧客企業様が望むもの
Webサイトのリソースが重要、印刷媒体のリソースが重要ということではなく、エンドユーザーには可能な限り自社のリソースを最大限に提供したいという主旨だとうかがう機会が多くなりました。その展開手段として最適な媒体が汎用性の高いWebサイトだという結論だと認識しています。ただしそれら必要とされる情報リソースや情報構造の設計については、ただ単に情報リソースを積み上げればWebサイトが完成するというほど、簡単なものではなくなりました。アクセスユーザーのターゲット層をエンドユーザーのみとして捉えるのではなく、ステークホルダー全般として捉えることが多くなった現在、非常に多くの関係者の方々とプロジェクトを遂行する場面が多くなったように思えます。
複雑化するWebサイト構築
顧客企業様が提供したい情報リソースの増大に伴い、工程の考え方も従来とは大きく発想を変える必要が生じてきました。一例を挙げますと、情報を並び立てるのではなく、現状調査(主にWebサイトのリニューアルが多いため)、関係する顧客企業様内関連部署との調整、協業企業様との意識合わせなど、ページを構築・開発する以外の局面で多くの時間を割くことが必然的になって来ました。私の経験則では大規模なプロジェクトほど、PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)のマネジメント思想を取り入れ、必要とされる工程を体系化していくことが必要不可欠であると認識しています。
PMBOK
- スコープ
- 時間
- コスト
- 品質
- 組織
- コミュニケーション
- リスク
- 調達
- 統合
この中でも特に注目したいマネジメントとして、スコープマネジメントが挙げられます。Webサイト全体のデザインは?構築するページ数は300ファイル?1000ファイル?と、成果物に着眼してしまいますが、スコープの中に含まれるさまざまな「やること」を5W1Hの視点で整理、課題解決をしてゆくことが何よりも重要であると考えます。
常に「あるべき姿」を見失わないこと
プロジェクト進行中は、実にさまざまなことがおこります。予算の変更、対象構築内容の変更、公開日の変更、インフラ環境の変更など、当初計画していなかったさまざまなことが発生し、現場が混乱することもしばしばです。ここで一番重要な点は、プロジェクト計画当初に策定した「あるべき姿」は何だったか?ということではないでしょうか。本来求めていた「あるべき姿のデザイン」とは何か? 「あるべき姿の情報設計指針」は何であったか?・・・。プロジェクトの進行が難解になった場合は、初期の目的が失われているケースが多く見受けられます。
困ったときには、常に「あるべき姿」に立ち返る。そういった一見当たり前であり、ごくシンプルな発想がWebサイト構築時において、一番重要な指針であると考えます。
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