Webテキストの品格
標準表記チーム 上原 佳彦テキストの乱れで、ユーザーの行動意欲がそがれてしまう
今、Webサイト上のテキストが乱れています——これは、若者の使用する言葉が従来のルールから逸脱していることについて、先輩たちが嘆いている…というわけではありません。来訪したユーザーの「購買したい」「詳しく知りたい」といった行動意欲をそがれてしまうテキストが、放置されたままになっている企業Webサイトの多さを嘆いているのです。
ユーザーが行動意欲をそがれてしまうWebテキストとは、「分かりにくさ」「読みにくさ」を感じさせる素因が含まれている文章のこと。ユーザーは「分かりにくい」「読みにくい」Webテキストに直面したとき、途中で読むのをやめて、そのWebサイトから出て行ってしまいます。たとえば、情報をまとめきれずに冗長化した文章や、的確な見出しのない文章、謙遜の意思を表現するために過剰に重ねられた敬語などは、内容の「分かりにくさ」を増幅させています。誤字脱字・誤変換は、企業イメージ低下や機会損失を招く恐れもあり、Webサイトだけではなく企業全体の信用度が疑われてしまうことでしょう。
Webサイトのテキスト品質低下が招く、機会損失
どうして「分かりにくい」Webテキストがそのまま放置されてしまうのでしょうか?
それは、どのテキストが「分かりにくさ」を生んでいるのか特定できないまま、気付かずに公開しているからではないか、と推測されます。もともと、一般的なWebサイトの制作過程において、テキストだけはプロの手を介さずに制作されるケースが数多くありました。また、テキストが各担当者からの寄せ集めであることも少なくないようです。本来業務でテキスト制作に深く携わっていない複数のスタッフによって、テキストが作られて公開されるのですから、「分かりにくさ」の放置も起こるべくして起きている、といえるのかもしれません。
市場把握やターゲティング、ページデザインやレイアウト、SEOやリスティング広告など、企業が戦略ツールとしてのWebサイトを制作・運用するためには、さまざまな要素に注力していく必要があります。近年では、多くの企業がこれらの要素に対して、十分なコストを割り当てるようになりました。ただ、なぜかテキストだけは重要視されないケースがまだ多いようです。
しかし、忘れてはならないのが、インパクトのあるFlashや写真でどんなにユーザーの興味を喚起したとしても、最終的に商品の特徴やメリット、価格やスペックを伝えるのはテキストだ、ということです。「分かりにくい」Webテキストのままでは、目的をもって来訪したユーザーがその希望をかなえられずに離脱してしまうでしょう。いくらトップページのビジュアルを更新してインパクトを強めても、SEO/SEM対策を施してアクセス数を増加させても、中身を説明するテキストが「分かりにくい」ままでは、コストが無駄になってしまうかもしれません。これは、とても「もったいない」ことです。
テキスト改善のために、まずは現状把握
「分かりにくい」Webテキストを改善していくには、「分かりにくさ」が発生する原因を明確にする必要があります。まず、自社のWebサイトにはどのような種類の問題点が潜んでいるのか、それはどのくらいの数なのか、現状をチェックしてみることです。単純なキーボードの打ち間違いや、「前人未踏/前人未到」「サーバ/サーバー」などの表記の揺れ、機種依存文字の使用など、問題点の発生傾向から、Webサイトのテキストやその作成プロセスに潜む「問題の根本」を把握することができます。「へりコプター」のようにカタカナと思っていた部分(リ)がひらがなだったり、「ユ−ザー」の中にある長音がハイフンだったりと、意外な場所から問題点が見つかるものです。
次に、明らかになった「問題の根本」から、自社の業務フローやテキスト制作工程に合った改善方法を導き出します。企業ごとにオリジナルの表記ガイドライン策定、起用するライターやテキスト担当者への勉強会実施、OSで使用する辞書ツールのカスタマイズなどが、考えられる主な施策です。もちろん現在の問題点を修正することも重要ですが、将来的なテキストの品質向上を考えれば、今後同様の問題が発生するのをどのように抑制していくのか、ということのほうがより重要になります。
なお、こういった改善は、一度実施しただけでは意味がありません。たとえば、「内部統制」周辺の用語が初期段階では「日本版SOX法」「J-SOX」「IT統制」など多くの呼び方があったように、世間に流布する言葉は日々変化しつづけています。こうした変化にできるだけ速く対応するためにも、定期的なWebサイトの現状測定や分析、表記ガイドラインの見直しをおこなっていくことが重要です。誤解のない企業メッセージの訴求を実現するためには、長期的かつ継続的な改善が求められます。
企業Webサイトのテキストに、もっと品格を
現代では、ほとんどのユーザーが商品の購買やサービスの利用といったアクションを起こす前に、しっかりとWebサイトでその概要や評判を調べます。そうした情報を求めているユーザーに対して、「分かりにくい」Webテキストを提示してしまえば、その対象は比較候補リストの中でも一歩後退することになってしまいます。こうした事態を避けるために、企業Webサイトはテキストにもっと品格をもたせることが必要になると思います。
ミツエーリンクスでは、Webテキストの長期的かつ継続的な改善をサポートする「ウェブ標準表記ソリューション」をご用意しています。専門家の手を借りなければ困難なWebテキストの現状チェックや、独自の表記ガイドライン作成など、「分かりやすい」テキストの実現に向けて総合的に支援させていただきます。
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