カスタマー・エクスペリエンスを可視化する
取締役副社長 兼 経営企画室長 熊谷 真二企業80%に対し顧客は8%−「カスタマー・エクスペリエンス」認識に大きなギャップ
Jesse James Garrettは、著書『 The Elements of User Experience 』で、Webサイトにおける優れたユーザー・エクスペリエンス提供のための考え方を、構造的に提示しました。そして、以下のように述べています。
Businesses have now come to recognize that providing a quality user experience is an essential, sustainable competitive advantage. It is user experience that forms the customer’s impression of the company' s offerings, it is user experience that differentiates the company from its competitors, and it is user experience that determines whether your customer will ever come back.
(企業は、今や、「質の高いユーザー・エクスペリエンスの提供は不可欠なものであり、持続可能な競争優位である」ということを認識するようになった。企業が提供するものに対する顧客の印象を決めるのは、ユーザー・エクスペリエンスである。競合企業からその企業を差別化するのは、ユーザー・エクスペリエンスである。さらに、顧客が戻ってくるかどうかを決めるのもユーザー・エクスペリエンスである。)
一方、 ベイン・アンド・カンパニー は、「調査対象企業の80%が、顧客に“優れたエクスペリエンス”を提供していると信じているが、顧客の認識では、実際には8%の企業しか“優れたエクスペリエンス”を提供していない」という興味深い 調査結果 を提示しています。
カスタマー・エクスペリエンスの提供が、企業にとっての競争優位確立・持続のための重要な要因になっているにもかかわらず、それを実現できている企業は少なく、しかも企業の認識と顧客の認識の間に大きなギャップが生じているのが現実、ということになります。
カスタマー・エクスペリエンスを可視化する
まず、企業が実施しなければならないのは、実態の見えにくいカスタマー・エクスペリエンスを可視化することです。その上で、改善の方策と目標を明確にし、それを実行し、結果を着実にモニタリングしていきます。具体的には、以下の7つのステップによる取り組みが必要となります。
- 1.カスタマー・エクスペリエンスの要素の抽出
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代表的な顧客へのインタビューを通じて、カスタマー・エクスペリエンスの要素(カスタマー・エクスペリエンスの決定要因)を抽出します。この時重要なのは、企業にとっての先入観を捨て、顧客の声に率直に耳を傾けて決定要因を抽出、整理することです。
- 2.カスタマー・エクスペリエンスの要素の“重要度”と“満足度”の把握
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サンプル顧客を対象に、インタビュー、アンケート調査等を実施し、カスタマー・エクスペリエンスの各要素について、顧客にとっての“重要度”と“満足度”を定量的に把握します。サンプル顧客の抽出にあたっては、偏りがなく、顧客の代表性が確保された、十分な数のサンプルが無作為抽出されることが必要です。また、ここでは、顧客満足度だけでなく、“顧客にとっての重要度”を把握することが大きなポイントです。
- 3.カスタマー・エクスペリエンス改善の優先順位付け
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カスタマー・エクスペリエンスの要素単位で、改善の優先順位付けを行ないます。この際、顧客にとっての“重要度”が高く、しかも“満足度”が低い要素が、改善優先順位として最も高くなります。
- 4.業績指標(KPI:Key Performance Indicator)の決定と改善目標値の設定
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特に重要なカスタマー・エクスペリエンスの要素について、業績指標(KPI)を決定するとともに、それぞれのKPIごとの改善目標値を設定します。
- 5.アクションプランの立案
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改善対象のカスタマー・エクスペリエンスの要素ごとに、改善のためのアクションプランを立案します。
- 6.アクションプランの実行
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改善のアクションプランを確実に実行します。
- 7.顧客満足度とKPIのモニタリング
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カスタマー・エクスペリエンスの要素ごとの顧客満足度とKPIを、定期的・継続的にモニタリングします。そして、改善の実績を踏まえ、必要に応じてKPIの改善目標値を再設定し、アクションプランを見直します。
“ミッションは、最高のカスタマー・エクペリエンスの提供” − デル
以下、定評のあるオンラインマガジンFAST COMPANY.COMに掲載されている カスタマー・エクスペリエンスにかかわるデルの取り組み を紹介します。
デル の経営陣は、カスタマー・エクスペリエンスが、市場における勝者と敗者を分ける重要な要因であり、カスタマー・エクスペリエンスへの対応が会社の将来についての鍵を握っていると認識し、以下の ミッション を掲げました。
To be the most successful computer company in the world at delivering the best customer experience in markets we serve.
その上でデルは、顧客にとっての価値創出に影響する最も重要なカスタマー・エクスペリエンスの要素を3つ選定しました(下表参照)。そして、それらの要素ごとに業績指標(KPI)を設定して、定期的なモニタリングを行なっています。実際、それぞれの主要要素について、年15%以上の改善目標を設定し、達成しています。
デルの主要要素 | 業績指標(KPI) |
---|---|
1.注文処理 | ターゲットへの出荷:期日どおりに顧客に届いた注文の比率 |
2.製品パフォーマンス | 初期不良率:初期不良の発生率 |
3.サービスとサポート | 時間どおりに初回解決:サービス要員が時間どおりに到着し、初回訪問で問題を解決した比率 |
デルは、カスタマー・エクスペリエンスを“顧客とその企業の製品、社員、プロセスとの相互作用の総和”ととらえています。つまり、カスタマー・エクスペリエンスは、顧客に対する企業の総合的な対応によって決まってくるものといえます。
Webサイトを通じてのカスタマー・エクスペリエンスを可視化する
当然のことながら、企業によって顧客とのコンタクトポイントの状況もカスタマー・エクスペリエンスの要素も異なります。特に、Webサイトが最も重要なコンタクトポイントに位置づけられる企業においては、Webサイトを通じてのカスタマー・エクスペリエンスの提供の成否が企業の命運を左右します。このような企業においては、特に次のような考え方による取り組みが必要となります。
まず、すべてのコンタクトポイントにおけるカスタマー・エクスペリエンスを可視化し、カスタマー・エクスペリエンスの全体像を把握します。その上で、特に、Webサイトを通じてのカスタマー・エクスペリエンスに焦点を当て、細部を可視化します。それらをもとに改善策を立案・実施することによって顧客満足度を向上させ、業績改善に貢献するWebサイトの実現を図ります。
ミツエーリンクスの提供するサービス
ミツエーリンクスは、去る11月12日、英国に本社を置く顧客満足度測定サービスの専門企業 The Leadership Factor社 と国際ライセンス契約を締結しました。ミツエーリンクスは、今回の提携を通じて、カスタマー・エクスペリエンスの可視化と改善によって、ステークホルダーの満足度向上を実現するための「顧客満足度測定サービス」を日本にて展開し、インフォメーション・インテグレーション・サービスの一層の充実を図っていきたいと考えております。
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