「話がつまらないWebサイト」、「話が面白いWebサイト」
標準表記チーム 上原 佳彦「話が面白い」方に、人々は集まる
先日、何気なく観ていたテレビ番組の中で、面白い話がありました。それによると、人間だけではなく動物の世界でも、「話が面白い方がモテる」らしいのです。
その番組中では、小型の鳥を使った実験を紹介していました。内容は、2羽のオスAとBを順番に1羽のメスがいる鳥カゴに入れて親密度の上下を計測・比較するというもの。結果だけを報告しますと、「ピー、ピー」と単調な鳴き声しか出さなかったオスAの場合、30分以上経ってもメスと仲良くなれません。それに対し、「ピー、ピュー、ピュイ」など、さまざまな抑揚や緩急を織り交ぜた鳴き声を出したオスBは、ほんの10秒ほどでつがいになることができたのです。番組いわく、どうやら鳥の世界では、単調な鳴き声=生存力がない、変化に富んだ鳴き声=生存力がある、という評価になるとのことでした。
この結果をそのまま人間の世界にスライドさせるのは、暴論かもしれません。しかし、実際に話が単調か変化に富んでいるかによって、差が出てくるシーンは日常生活にもあふれています。例えば、大勢の人が参加する飲み会などの場では、アルコールのおかげで本能的になるせいか、話が単調な人の周りにはだんだん人が少なくなり、話し方のうまい人の周囲には自然とコミュニティができやすいもの。その求心力が、「話がつまらない」、「話が面白い」という印象・評価にもつながってきます。
相手が理解しやすいように構成して、変化を付ける
「話がつまらない」という印象を覆すためには、話を面白くしなくてはなりません。では、「面白い」と感じてもらうにはどうしたらよいのでしょうか? それには、反射神経で会話するのではなく、話を一度自分の中でまとめてから、相手が理解しやすいように構成し、飽きられないように変化を付けながら表現することです。
「楽しい」、「美しい」という感情を表したいとき、そのまま「楽しい」、「美しい」という言葉だけで表現するのも、渋くてよいかもしれません。ただ、こちらが「楽しい」、「美しい」と表現したことの真意を相手が理解するまでには、時間がかかってしまうでしょう。また、「すごく楽しい」、「とても美しい」と度合いを表す形容詞で飾っても、単調な印象はあまり変化しません。この場合、「●●だから、楽しい」、「△△のように、美しい」のように、「なぜ」、「どうして」、「どのように」といった要素を盛り込むことで、話にちょっとした構成ができます。また、表現にも変化が生まれるので、相手に与える印象は大きく変わってくるのです。
ユーザーが、Webサイトのメッセージを理解するために必要なもの
前置きが長くなりましたが、ここから本題です。実はこうした「話がつまらない」、「話が面白い」という印象・評価の問題は、Webの世界でも大きくかかわってきます。どんなに素晴らしいデザインで着飾っても、どんなに奇抜な動きで注目を集めても、最終的にユーザーがWebサイトに込められたメッセージを理解するために必要なのは、そこに記述された話であり言葉です。ほぼ同等の性能・機能を持つ商品を紹介するWebサイトがあったとして、同じくらい見やすくて分かりやすいデザインであった場合、「話が面白いWebサイト」の方がユーザーに選ばれる確率は高くなります。むしろ、多少性能・機能が劣っていたとしても、「話が面白いWebサイト」が選ばれることだって考えられます。
ユーザーが「時間をかけて読まなければメリットが伝わらない」ということは、Webサイトのメッセージとしてはマイナスポイント。インターネット上にあるあまたの情報の中から、自分のWebサイトに興味を持ってもらうためには、短時間で「面白い」と感じてもらえるように構成を工夫しなければなりません。「思いつくままにライティングしたWebテキスト」や「必要なときに追記したWebテキスト」では、ユーザーの理解しやすさまで配慮されずに構成されていることも少なくないため、メッセージの訴求力が下がってしまい、内容を過小評価されることもあり得るのです。
逆に、「誰の代弁者であるWebサイトが、どのような内容を、どのように表現するのか」など、しっかり準備したうえでWebテキスト制作にのぞむだけでも文章に構成が反映され、アクセス数の先にある資料請求数などのコンバージョン率が変わってきます。いかにユーザーにとって理解しやすい内容を、分かりやすい表現でWebサイトに掲載できるかが、「話がつまらないWebサイト」、「話が面白いWebサイト」の境界線になります。
見直すべきは、Webテキストの価値であり質
これまで、WebテキストはWebサイト制作全体の中で、比較的マンパワーやコスト、作業時間的にも、大きな割合を占めることが少ない素材でした。しかし、「話が面白いWebサイト」とユーザーに感じてもらうためには、これまで以上に十分なマンパワーや作業時間を用意する必要があると考えます。Web技術が広く浸透し、競合Webサイトとの差別化が図りにくくなった今、「モテる」Webサイトを制作するために見直すべきは、Webテキストの価値であり質、ということはいえないでしょうか。
最後に、手前みそで申し訳ないのですが、私が執筆を担当した本『Webライティング成功の法則60』が、翔泳社より2007年12月18日に刊行されました。テキストをもっと「理解しやすく」、「伝わりやすく」するためのWebライティングについて、有益と思われる情報を60のポイントにまとめて記述しています。Webサイトのテキストをライティングする機会のある方や、テキスト内容の見直し・改善を考えている方は、ぜひ一度読んでいただきたいと思います。
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