IIA2014ICに参加して
経営監査室 公認内部監査人(CIA) 野口 由美子今年の IIA(The Institute of Internal Auditors/内部監査人協会) の国際大会は、2014年7月7日から9日まで、イギリスのロンドンで開催されました。チャールズ英皇太子のビデオメッセージやブレア元英首相の報道官キャンベル氏の講演があり、レセプションではビートルズナンバーの演奏までと、イギリスならではのコンテンツが満載でした。
客観性
国際大会への参加は、今年で4年目になりますが、毎年、内部監査人としての精神的態度をリセットする機会になっているように思います。
精神的態度と言っても、チャレンジ精神、責任感、その他いろいろありますが、ここで問題にしたいのは客観性です。客観性は、IPPF(International Professional Practices Framework/専門職的実施の国際フレームワーク)の倫理綱要における、内部監査人の4つの原則にも挙げられており(ちなみに残りの3つは、「誠実性」「秘密の保持」「専門的能力」)、内部監査をするうえで重要なものです。「内部」の監査人は、社風を理解し、それを踏まえた監査や提案ができるという強みがありますが、会社の常識に染まってしまうという危険性もあります。こうした機会に、会社の外、日本の外に目を向けることで、客観性を取り戻せるような気がしています。
「人」
通常の業務監査では基本的に、人ではなくプロセスを問題にしますが、人が行うプロセスは、人全般への理解が重要だとかねがね思っています。
“People Risk Management”(人的リスクのマネジメント:筆者訳。以下かっこ内同様)というセッションは、人の認知に関するリスクについて考えさせるものでした。大きな事故は、人の先入観や正当化による思考パターンに起因することがほとんどであり、そうしたものを理解し、対処するためのプロセス整備が重要なのだと思いました。
“So You Think You Are Good - How Do You Get Better?”(現状でいいと思っているわけですね・・どうしたらもっと良くなる?)という、別のセッションでも共通するポイントがありました。「現状でいい」という感覚も、一種の思い込み(先入観+正当化)だと思います。改善するよりも、一度壊して作り直した方が簡単だという話がありましたが、変わるきっかけが重要ということかもしれません。
変化のなかの監査、変化する監査
“Auditing in a Hyper Growth Environment”(急成長の環境における監査)、“How to Audit in a Virtual World”(仮想世界における監査の仕方)からは目まぐるしく変化するものを監査していかなければならない、という事実をあらためて突き付けられました。当社は、Webインテグレーションという移り変わりの速いビジネスを展開していますので、身につまされるテーマです。
また、“New Business, New Value”(新しいビジネス、新しい価値)、“Innovations in Data Analytics for Internal Auditors”(内部監査人向けデータ分析における革新)からは、環境の変化に対応していくために、監査自体の変革も重要であることを痛感しました。“New Business, New Value”のなかの「いつもどおりの仕事というのは過去のことなのである」という言葉がとても印象的でした。
変化する役割
当社の内部監査は2006年の秋にスタートしました。2006年といえば、5月に新会社法が施行され、6月に金融商品取引法が成立した年です。右も左もわからないまま、手当たり次第、参考になるものを目にしましたが、当時の業務監査の主流は、規程やマニュアルどおりに業務が行われているかどうかチェックすることだったと思います。
その後、2008年に内部統制報告制度の運用が開始され、内部監査人は、リスクに照らして、整備状況(規程やマニュアル自体や体制等も含む)が妥当かどうかもチェックすることが求められるようになりました。さらに、そのリスクというのも、準拠性や効率性に対するものだけでなく、有効性が加わることで、内部監査人に求められる守備範囲は劇的に増大したと思います。何かが目的に対して有効であるかどうか、結果が出る前に判断することは、変化の多い時代にあって、容易なことではありません。
また、チャールズ英皇太子のメッセージにあった、“Sustainability”(持続可能性)に関する役割など、内部監査人への期待は高まるばかりです。
これからも社内外の期待に応えられるよう、努力を怠らないようにしていきたいと思います。
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