UIデザイナーとUI開発者
取締役社長 木達 一仁当社でWebコンテンツの制作に携わる職種は、「UIデザイナー」と「UI開発者」の2種類しかありません。
Web業界全体を見渡すと、「Webデザイナー」「フロントエンドエンジニア」「HTMLコーダー」など、多くの職種名が存在・流通しています。そうした実態を踏まえ、社外向けの採用活動などにおいては、括弧書きを加え「UIデザイナー(Webデザイナー)」「UI開発者(フロントエンドエンジニア)」のような表記を用いています。
過去には、当社でもさまざまな職種名を用いていた時期がありましたが、制作職を現在の「UIデザイナー」「UI開発者」の2種類に収斂させたのは2016年4月のこと。本コラムでは、その理由や背景、狙いについてお話ししたいと思います。
シンプル化
組織文化のページにおいて、「Mitsue-Links 2.0」と称している、当社組織のあり方をあらわす概念について解説しています。そこに登場するキーワードのひとつが「シンプル化」で、同ページにはその意味するところとして「複雑になった社内制度を単純化し、誰もが理解できようにすること」とあります。この指針を、社内で半ば乱立状態にあった制作職の職種に適用し生まれたのが、「UIデザイナー」と「UI開発者」の2職種です。
あまり職種を細分化して定義してしまうと、個々の職種が担う守備範囲を必要以上に狭めてしまい、結果としてそれが制作物の品質低下要因になったり、あるいは各人の成長、とりわけ幅広いスキルの獲得に対する阻害要因となりかねません。守備範囲は緩く広めに定義することで前述のリスクを下げる必要からも、職種定義のシンプル化は有効と考えます。
UI ⊇ Web
「Web」という単語を職種名に含めていないのは、当社の経営理念「Smart Communication Design Company」の中に「Web」を含めていないのと、概ね同じ理由からです。業種・業界を問わず、あらゆるコミュニケーションにおいてWeb技術が活用されつつある昨今、敢えてそれを強みとして謳う必要性は相対的に無くなりつつある、という現状認識があります。
そのうえで、WebではなくUser Interfaceの略語であるUIを職種名の枕詞で用いているのは、私たちがデザインしているのはコミュニケーションで必要となるUI全般であって、Webコンテンツはその一部に過ぎない、との考えからです。
インターフェースと言うと、ユーザーが能動的に操作する何がしかを強く想起されるかもしれません。しかし、たとえ静的なWebページであっても、それがコミュニケーションにおける界面である点に違いはなく、Web制作とはすなわちUI制作でもある、と思います。
一人二業とスキルマップ
社内で推進している施策のひとつに、一人二業があります。これは、各人が複数の異なる専門領域を極めることにより、生産性を向上させると同時に、チーム内での協業を一層促進し、業務負荷を平準化することを目的としています。一人二業を実現するには、各人がどのようなスキルを、どのレベルで保持しているかの「見える化」が欠かせません。そこで活用しているツールがスキルマップで、制作職については以下の7つの技術領域につき、各人のスキルレベルを表形式で記載するものです。
- アートディレクション
- ビジュアルデザイン
- 情報設計
- アクセシビリティ
- HTML
- CSS
- JavaScript
チームの特性上、チーム固有のスキルが必要ということであれば追加しても構いませんが、基本的にはどの制作チームもこの7項目につき、所属スタッフのスキルレベルをスキルマップで共有することにしています。
そして、制作職の職種を2種類にシンプル化したことで、各職種の一人二業もシンプルに、分かりやすく定義することができました。具体的には、UIデザイナーはビジュアルデザイン、UI開発者はフロントエンド設計を中心的業務としながら、どちらの職種もWebコンテンツの実装(既にあるフロントエンド設計を元にしたページ制作)は担えるようにする、というものです。
制作職としてカバーすべき7つの技術領域、ならびにUIデザイナーとUI開発者がそれぞれコアスキルとして習得すべき技術領域をベン図であらわすと、以下のような図になります。
- UIデザイナーのコアスキル
-
- アートディレクション
- ビジュアルデザイン
- 情報設計
- アクセシビリティ
- HTML
- UI開発者のコアスキル
-
- 情報設計
- アクセシビリティ
- HTML
- CSS
- JavaScript
UIデザイナーのコアスキルのひとつにHTMLが含まれていることを、奇異に感じる方がいらっしゃるかもしれません。しかし先述の一人二業を実現するには、UIデザイナーもHTMLを知らなければ、実装工程に実務で携わることができません。そもそも情報設計やアクセシビリティと共にHTMLを知ったうえでビジュアルデザインに取り組まなければ、Webの特性を活かしたデザインは困難のはず、という認識でもあります。
UIデザイナーとUI開発者について、長々と書かせていただきましたが、この職種名なり区分が絶対的な正解などと主張するつもりはありません。職種名に関する英語圏の記事を読んでも、実にさまざまな考え方なり整理が見受けられますから、組織の規模や特性により用いる職種名は異なって然るべきでしょう。
こうした状況は、この業界がまだ未成熟であることの証左かもしれませんが、当社としては今後も業界動向や技術動向に注視し、職種定義を適宜見直していきたいと考えています。
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