コンテンツガバナンス「次の一手」は何か
システム本部 第二部 マネージャー 榛葉 裕幸コンテンツは企業Webの最も重要なアセットです。
“ Content is King (コンテンツが王様)”とはWeb黎明期から人口に膾炙した言葉ですが、あらゆる消費者行動の起点がWebとなるいま、あらゆる企業はデジタル企業でありコンテンツ企業でもあります。令和の企業Webでは、保有するコンテンツ資産をうまく活用し、顧客エンゲージメントの創出、新しいデジタル体験の創造など、これまで以上にビジネスへの貢献が求められることと思います。
コンテンツ活用を阻む情報と組織のサイロ化
自社のコンテンツをうまく活用するためには、貴重なアセットのひとつとして、ヒト・モノ・カネといった経営資源と同様にコンテンツを重視することが大切です。しかし、多くの企業Webにおいて、他の経営資源ほどには、コンテンツ資産は十分有効に活用できているとは言えないかもしれません。
Web誕生から30年が過ぎ、PC閲覧を前提としたWebサイトから、モバイル、ソーシャル(SNS)、VUI(音声UI)などと、コンテンツを提供するチャネルもデバイスも多様化し複雑化しました。しかも、それぞれのチャネルやデバイスで適切な顧客体験を提供しようとするなら、それ専用のツールや技術を必要とし、技術を使いこなすヒトも組織も専門分化しています。
組織構造が専門分化し分業体制ができあがると、分業された組織間のコミュニケーションコストは徐々に増大するといわれます(あるいは、組織間コミュニケーションへのインセンティブが低くなります)。結果として、縦割り組織ごとに情報が管理されることとなり、コンテンツデータも、チャネルごと、デバイスごと、分割した部門ごとに散在し、いわゆるサイロ化が生じます。
チャネル、デバイス、施策の違いに関係なく共通利用すべきコンテンツ資産がサイロ化され組織ごとに管理されると、コンテンツの再利用性、保守性は低下し、必然的にコンテンツガバナンス不全に陥ります。例えるなら、せっかくのアセットを有効活用できず、資産を塩漬け死蔵している状態といえるでしょうか。
“COPE”でワンコンテンツ・マルチユース
そこで注目されるのが、「COPE: Create Once, Publish Everywhere」。コンテンツ産業では以前から提唱されるコンテンツ基盤に関する哲学(設計原則)ですが、あらゆる企業がコンテンツ企業となる現在、企業Webの文脈においても、塩漬けされたコンテンツ資産を活性化させ、多様なデバイスやチャネルで柔軟な再利用性を確保するアーキテクチャコンセプトとして、あらためて注目されています。
COPE原則のポイントは、チャネルやデバイス、文脈上の“見た目”には関与せず、それぞれのタッチポイントで必要とされるコンテンツデータのみ API(Application Programming Interface)を通じて提供する、コンテンツ資産のサービス化(CaaS:Content as a Service)です。WebページなどのUIを構成するヘッド(head:頭)=プレゼンテーション層を持たない、いわゆるヘッドレスアーキテクチャでもあります。
このようにコンテンツをAPIで参照可能なひとつのハブとして集中管理することで、コンテンツ活用の統制と利便性の両立が期待できます。また、プレゼンテーション層とバック層のコンテンツデータを完全に分離しAPIを通じて疎結合とすることは、異なる専門性をもった組織や業務(ビジネスドメイン)間の境界を定義し、より小さなコミュニケーションコストでの連携を実現することにもつながります。
なお、COPEの初出とされる上記記事の実装レベルのアーキテクチャについては、当時の技術的制約にもとづくため、より現代的な実装技術への置き換え再考が必要です。以前なら、商用に耐えるレベルでCOPEのアイデアを実現しようとすれば、インフラ整備と維持に決して少なくない投資を必要としたはずです。
しかし、クラウドコンピューティングが進展した今日では、FaaS(Function as a Service)や Functional SaaS といった、サーバーレス/フルマネージドのクラウドサービスを活用することで、より安く早く容易に、COPE原則の実践が可能になりつつあります。
アフター2020のコンテンツ活用
当社は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のテクノロジーパートナーとして、AWSが提供するサーバーレス/フルマネージドサービスをベースに、「Content Hubソリューション」を提供しています。
組織内に散在しサイロ化したコンテンツ資産(商品、店舗、人物、FAQ、用語、イベントなど)を集中管理し、APIを通じて多様なデジタルチャネル、デバイス、文脈でのコンテンツ活用を実現するクラウド・ベースの Content Hub(コンテンツハブ)です。
また、近年、モダンなWeb開発手法として JAMstack が注目されています。JavaScript、APIs、Markupの3つの技術要素をベースにサーバーレスで構築することで、リッチで動的なWeb体験と、高速で安全な静的Webの良さを兼ね備えたWebサイトやWebアプリを実現しようというアーキテクチャコンセプトです。
Content Hub ソリューションは、JAMstackの「A:APIs」を提供するバックエンドコンポーネントでもあります。お持ちのコンテンツ資産をサービス化(CaaS:Content as a Service)し、フロントエンド技術と組み合わせることで、JAMstackコンセプトを具現化したモダンなWebサイト構築にもご活用いただけます。
アフター2020を見据えて、コンテンツガバナンスとより良いデジタル体験の促進に取り組みたい、といった課題がありましたら、お気軽にご相談ください。
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