なぜ炎上? CMS導入の“落とし穴”
株式会社ミツエーリンクスTSDプロダクトマネジメント部 プロダクトマネージャー 榛葉 裕幸
「CMS導入プロジェクトのリスクは何か」「CMSを効果的に導入するには、何を評価すべきか」「組織的なコンテンツ管理とガバナンスのプラクティスは何か」――。企業組織へのCMS導入、活用に適切に備えるには、事前のリスク評価と予防が重要です。
コーポレートサイトの情報発信強化に、活用が広がるCMS(コンテンツ管理システム)。特に近年は、統制のとれた組織的な情報発信を実現する文脈で、”業務システム”としてCMS導入に取り組む事例が増えています。しかし、成功裡に終わるプロジェクトがある一方、失敗の烙印を押されてしまうケースも…
CMS導入に限らず、以前から、ERPや会計システムなど、パッケージ製品を利用したITプロジェクトが一般的になっています。しかし、パッケージ製品は適切に利用しなければ本来のメリットを享受できないと、専門家は警鐘を鳴らしています。
リニューアルを機に、CMSの導入や乗換えに取り組むWeb担当者の皆さまに、業務利用でのCMS導入にも有益な、IPA(情報処理推進機構)発行の2つのガイドラインから、”落とし穴回避”のエッセンスをご紹介します。
“既製品”がメリットであり制約
まず押さえておきたいのは、CMS製品は、他の業務用パッケージソフトウェアと同様に、特定ユーザのためではなく、汎用的に使える標準機能を提供する「既製品」だということ。実はこれがCMSの最大のメリットであり、気をつけるべき制約となります。
あらかじめ用意された標準仕様をそのまま利用できれば、業界標準の適用による業務品質の向上、開発期間の短縮、開発/保守・運用コストの節減など、いわゆる「高品質・短期導入・低コスト」が期待できます。
しかし、自社要件に適合しないものを採用してしまうと、満たせない機能や性能要求への追加対応など、プロジェクト始動後に大きな手戻りが発生し、それこそプロジェクト炎上もの。また、適合しない要件を安易にカスタマイズに頼るなら、予期せぬ「品質低下・スケジュール遅延・高コスト」につながるでしょう。
“標準仕様に合わせる”が正解
それゆえ「パッケージ利用の期待効果とリスク回避には、現在の業務運用を極力パッケージに合わせていくことがポイント」となります。
つまり、「既製品」を利用するメリットである、「高品質・短期導入・低コスト」を享受したいなら、カスタマイズありきではなく、CMS製品の標準仕様を所与(given)として、最初から自社の業務要件を出来る限り標準仕様に寄せていく発想が重要です。
標準仕様に業務を合わせるためには「まずはパッケージを導入する目的を明確にし、目的に照らした要件の実現性を十分に検討し、慎重にレビューと検証を行い、その上でユーザ部門との合意を得ることが必要」となります。
CMSも“試着体験”が大切
パッケージ製品の標準仕様に自社要件を寄せるのを原則とするなら、「フィット&ギャップ(Fit&Gap)分析」の精度がカギとなります。既製服の購入の際、自分の体型やサイズに合うか試着するのと同様に、自社の業務プロセスや組織構造がCMSの標準仕様と適合するか、“フィッティング”してみることです。
しかし、服の試着ほど簡単ではありません。CMSをホストする稼働環境や維持保守フェーズのバージョンアップ対応など、重要なのに”見えない業務”があるからです。目に見える「適合の判断が容易な要件だけでなく、非機能要件や動作環境、諸々の動作条件等についても検証することが重要」です。
また、パッケージ標準機能では満たせない要件の扱いは重要です。業務継続性の観点と、作り込みによるコスト・スケジュールの膨張を防ぐ点から見極めが必要です。その際は、スタイリストにコーディネートアドバイスに求めるように、CMSに知悉したベンダーに情報提供など助言を求めるのも有効です。
フィッティングは“企画・計画”段階から
こうしたフィット&ギャップの検討は、プロジェクトのどのタイミングから意識すべきでしょうか。
ガイドラインでは「企画・計画段階で現行の業務運用に対するパッケージ製品の Fit&Gap 分析とユーザ部門への確認を行い、パッケージ製品の利用可否を十分に吟味し、また次期システムでの業務運用の変更点について早期にユーザ部門と認識を合わせることが重要」といわれます。
リニューアルを機にCMSの導入を検討するなら、コンペや業者選定のためのRFPを発行するより早い段階、予算化の検討や現状課題の抽出といった、社内での企画・計画段階でフィット&ギャップやリスクアセスメントに該当するプロセスを実施することが推奨されます。
ご紹介したガイドラインでは、そのほか具体的なリスク防止の対策が解説されます。プロジェクトをリードするWeb担当者の方には一読しておいて損のない内容です。
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業務利用におけるCMS選定のポイントとともに、CMSを実際に操作するビジネスユーザの視点から、企業向けCMS製品(WebRelease)の操作画面をもちいた更新・管理プロセス、CMSならではの使い方など、実務に即して解説します。
業務システムとしてのCMS選定の検討材料として、商用CMSであるWebReleaseの操作性や製品理解を深める機会として、皆さまのプロジェクト企画・計画にお役立てください。
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