障害者差別解消法の改正とWebアクセシビリティ
取締役(CTO) 木達 一仁今年5月28日に遡りますが、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、いわゆる障害者差別解消法が改正されました(令和3年法律第56号)。これにより行政機関等に加えて事業者、つまり一般企業に対しても、改正法の施行後には合理的配慮の提供が義務付けられます。
この文脈で言うところの合理的配慮とは、一体何でしょう? これを理解するには、障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)の定義を参照する必要があります。同条約の「第二条 定義」に、以下のくだりがあります。
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
例えば、あるWebサイトにおいて、障害者が他の人と同じように利用できなかった(Webアクセシビリティが不足していた)とします。その障害者から改善の申し出があった場合、過重な負担とならない範囲で、必要かつ合理的な調整・対応を提供することが、サイトを運営する組織が一般企業であっても、法的に義務化されることになります。
従来、合理的配慮は一般企業に対しては「必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない」という表現、努力義務とされてきました。障害者差別解消法は、雇用以外のさまざまな分野(情報アクセシビリティを含む)を対象としていることもあり、義務化は非常に影響の大きな改正と言えるでしょう。
となると、改正法の施行がいつからか、気になる方も少なくないと思います。その点については目下、令和3年法律第56号が公布された今年6月4日から起算して3年を超えない範囲内において、政令で定める日とだけ定義されています。どんなに遅くなっても2024年6月4日までには、ということしかわかりません。
去る6月28日に開催された第55回 障害者政策委員会の資料2-1、 障害者差別解消法改正法の施行に向けたスケジュール(イメージ) を拝見しますと、基本方針の改定など、施行までには数多くの取り組みが予定されていることがわかります。その一方、委員の方々の議論からは、少しでも前倒しで進めたいとの意見も聞かれました。
施行がいつになろうと、合理的配慮として求められる中身が変わるわけではありません。また、努力義務か法的義務かの違いはあるにせよ、行政機関であれ事業者であれ、もとより合理的配慮の提供は必要とされてきたわけです。そこでWeb担当者の皆様に問われるのは、サイト運用においてどれだけ継続的にアクセシビリティ向上に取り組んできたか、です。
アクセシビリティ品質のチェックや、チェック結果に基づく改善を、定期的ないし不定期に実施されているのであれば、改正法の施行日がいつになろうとも、焦るような必要は無いでしょう。コンテンツの日々の追加や更新にかかわらず、担当されているWebサイトにおいて、既に一定のアクセシビリティが担保できている可能性が高いからです。
もしWebアクセシビリティに関する取り組みに自信がない、やらないといけないとわかってはいるけれど時間が足りない、社内教育をどう進めれば良いか悩んでいる……そういった方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。改正法の施行に向け、必要な施策の立案や実行を、ご一緒させていただければ嬉しく思います。
当社ではアクセシビリティ ソリューションの名の下に、さまざまなサービスを取り揃えて、皆様からのご相談を心よりお待ちしております。また関連して、8月20日にはオンラインセミナー「Web担当者のためのピンポイント講座 / 画像の代替テキストを考えよう」を開催します。こちらもぜひお気軽にご参加ください。
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