ブランド戦略における、ひとつの視点
代表取締役 髙橋 仁Webの世界でもブランドという言葉がよく使われます。ブラント戦略は他人が構築するものではなく、自社が中心となり実行すべきものと考えています。真のブランドとは、ロゴとかマークではなく、企業の理念と行動が伴わなければ達成することはないと考えるからです。しかし、現状のニーズを考えると無視もしていられません。今日は、ブランドについて、私の認識を述べてみたいと思います。
魔法の言葉、「ブランド」
内容は理解できなくても、企業活動にとって非常に影響力のあるキーワード、それが「ブランド」という言葉です。
(例えば)ブランド力があったら・・・・・・・・・
- 苦労しなくても、商品の市場浸透が速い(スピード化達成)
- よって、不要な販促費をかけなくても売れる(経費削減)
- 顧客はブランドを拠りどころにして購入し、使うことに満足する(顧客価値増大)
- さらに値引きもしなくていいので、利益率も高い(利益率増大)
- もちろん、競争優位性およびキャッシュ・フローが増大する(競争優位性確立)
- こうなれば社員のモラルも上り、優秀な人材が入社する(従業員価値増大)
- 結果的に株価も上がり、株主は満足(株主価値増大)
「ブランド」という言葉からイメージできるものはまるで魔法のようです。ブランド力があれば、何もしなくても皆がハッピーになれるように思えてしまいます。「ブランド構築します」などと言われれば誰もが飛びつきたくなるのは無理もありません。
ブランドとは、競争相手の製品等と識別化または差別化するためのネーム、ロゴ、マーク、シンボル、パッケージ・デザインなどの標章と定義(経済産業省企業法制研究会による)されますが、悲しいことにその構築段階において、内容やプロセスに目をやらないで、その最終形(ロゴやマーク)だけに視点が行きやすい性質があります。ブランド戦略の失敗の始まりは、まさにここにあるような気がします。
ブランドってなんだ?
ブランドという言葉の起源に遡ってみましょう。「ブランド(brand)」とは、「焼き印を付けること」を意味する“brand”という古期フリジア語等から派生した言葉であり、家畜の所有者が自己の家畜と他人の家畜を識別するための印が語源であるといわれています。
現在では、企業は自社製品等の品質の高さ、デザイン、機能の革新性等を普遍的に表現するために、ブランド標章(ネーム、ロゴ、マーク、シンボル、パッケージ・デザイン)を統一的に用いて事業活動を行っています。
企業が製品等に対する顧客の愛顧、信頼を獲得し、継続した顧客関係を維持できるようになると、顧客はもはや製品等の物理的または機能的側面を毎回確認することをしないで、信頼の証としてのブランドを拠りどころに製品等を購入する意思決定を行います。したがって、そこまで力が達した企業は、ブランド戦略によって企業活動がより効果的効率的にまわっていくのです。以下のような段階を経ながら、構築されるものと思われます。
- 自社の製品等に対して愛顧、信頼を寄せてくれる顧客は誰?(20%の主要顧客の把握)
- 自社製品等の品質の高さ、デザイン、機能の革新性の特徴は何?(サービス基準の把握)
- 上記1.2を象徴的に表現でき、競合と明らかに差別化できるブランド(焼印)は何?(ブランドの確立)
ブランドと知名度の違い
少し、わき道に逸れてみたいと思います。
本来ブランド戦略とは、ファンになっている顧客の為に行う戦略であり、さらに同じ価値観を持った同質の顧客層の増加を図る戦略であり、単に知名度向上とは意味合いが異なるというのが私の考えです。しかし、「ブランド戦略=知名度向上戦略」と思われる方は比較的多いようですが、なぜこのように考えられがちなのでしょうか。
それは市場全体の成熟度と関係があると思われます。市場の黎明期においては、 「ブランド戦略=知名度向上戦略」は同等に扱われる傾向にあるように思えます。 2年ほど前、ある新聞(朝日か日経)のコラムに下記のような興味深い話が掲載されていました。
「市場が未成熟の場合、ひとは何を選んでいいか判断できない。なぜならば判断基準が確立されていないからである。その場合ひとは露出が高く知名度のある製品のブランド(ネーム、ロゴ、マーク、シンボル、パッケージ・デザイン)の方が良いと感じてそちらを選ぶ傾向にある。しかし、市場が成長し、皆が使用し始めると客観的な判断ができるようになるので、何がよくて何が悪いかを自らの力で判断するようになる。知名度だけに重点をおいたブランド戦略はそのとき意味を成さなくなる」
あまりにも鋭い切り口で、その当時感動した記憶があります。知名度向上は企業活動にとって極めて重要な要素ですが、ブランド戦略と同一視すると間違った方向にいってしまい、結果的に成果が生まれない事態になる可能性が高いと思われます。
ゼロからのブランド戦略
本題に戻ります。
ブランド戦略の本来の姿は、本来ある中身の特徴を象徴的に表現することだと私は解釈していますが、中身が無ければブランド戦略が実行できないかといえば、そうでもありません。
問題解決プロセスという手法を使って方法論を導きだすことを試みてみましょう。
ブランドとは企業と顧客の両者において、お互いが共有する価値観を象徴化したものと捉えると大きく前進します。中身が無ければ、先に宣言してから中身(サービス基準、品質の高さ、デザイン、機能の革新性等)を後追いで作っていくということです。顧客は決して結果だけでついてくるのではなく将来の期待値や価値観や行動プロセスに感化されることも大いにあるという考えです。例えば、
- 企業が企業そのもの(コーポレート・ブランド)や製品(プロダクト・ブランド)の意味する本来あるべき姿を、本来あるべき主要顧客に対して示し、宣言をする。
- それに価値を感じる顧客は感化され振り向き、購入し使用する。
- 企業は、現状の顧客が何に感化され購入し、使用しているのか。また顧客の本来求めるものは何かを「生の声」を収集し、分析し、現状とのギャップはどこにあるかを把握し、継続的改善を繰り返す。
- さらに、企業はそのギャップを埋めるため、どのような行動を実施し、将来どのような姿になるか語り、訴える。
- 次第にギャップは埋まり、顧客は信頼し、継続した関係性を構築する。
- 結果的に、ブランド(ネーム、ロゴ、マーク、シンボル、パッケージ・デザイン)で、購入する段階まで達する。
- ブランドは、価値を創造し、顧客価値、従業員価値、株主価値を高め、企業に大きな利益をもたらし、コントロール段階(ブランド管理)へとステップアップする。
このようなシナリオでしょうか。
個人に置き換えてみましょう。
オリンピックの金メダリストは、世界から賞賛を浴びます。しかし人々が賞賛し感動するのは、一位になった結果ではなく、一位の結果をもたらした4年間の努力の軌跡(ストーリー)でありそのプロセスに対してであることはご理解いただけると思います。企業活動とて同じだと考えます。人々は理念に感化され、理念を通した行動に共鳴し、ファンとなり、ついてくるものではないでしょうか。
こんな悠長なことをやっていられるかと思われるかもしれませんが、もともとそんなに簡単なものではないのです。名実ともにしっかりしたブランドを構築するには、それなりに努力と継続的改善を伴う努力と行動が絶対に必要と考えます。
これからのブランド戦略
ブランド戦略に関して私の考えを述べてきました。ブランドとは、ブランド(焼印 = ネーム、ロゴ、マーク、シンボル、パッケージ・デザイン)によってイメージアップされるのではなく、ブランドの名にかけても顧客に高いサービスを提供しようとする、企業の姿勢、内容、行動、プロセス等が顧客に伝わったとき、はじめてブランドは価値を創造し始めるものと考えます。そして継続的改善を伴う姿勢こそ、将来への大きな期待をイメージ付け、光輝くブランドが構築されるものと思われます。
Webならではのブランド戦略、ご一緒に検討しませんか?
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