Webクリエイティブ(アイデアの創出)
代表取締役 髙橋 仁この春入社した新人スタッフの業務日報を拝見しますと、ひとつひとつの言葉が余りにも新鮮で、忘れかけていた大切な感覚を取り戻してくれます。「我以外みな我が師」という言葉がありますが、本当にその通りだとつくづく感じています。
クリエイティブ系のスタッフが、コラムを書いていますので、今回はこの領域に関して私が日頃思っていることを書いてみたいと思います。
結果を導きだすキーワードを探せ
2年前の話です。R社による研修を社員5名に受けさせたことがありました。その研修の様子を見ているときにある発見をしました。これは一生忘れることのできない大きな発見でもありました。
講師が「今までの人生で最大の『喜・怒・哀・楽』は何ですか?」という質問をしたときのことです。各自、生い立ちや環境要因が違いますので、シーンは違いますが、言わんとしていることあまりにも似ていて驚くほどでした。そこで私は、結果として現れる人の感情には一定の法則があるという仮説を立てました。
- 感情
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スタッフが発表した共通の言葉
導きだされるキーワード - 喜
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「出来ないことが出来た」「認めてもらった」「自分の力で達成した」「存在の認知」
- 怒
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「無視された」「誤解された」「否定された」「存在の否定」
- 哀
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「別れた」「去った」「亡くなった」「離」
- 楽
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「皆で食べた」「皆で頑張った」「皆でやった」「連帯・分かち合い」
その後、スタッフと接する時の心構えに変化が現れました。例えば、「スタッフを喜ばせるには、きちんと誉め存在を認めること」。「怒らせないためには、決して無視しないこと、あるいは存在自体を否定しないこと」「楽しいことをやるには、目標を設定して皆で一つの方向を向き、実施すること」。
こんな具合に、結果を導き出すためのアクションプランが湧き上がるようになってきました。
アイデアの創出プロセス
ところで私は、アイデアの創出には特有の思考プロセス(回路のようなもの)があると考えてます。アイデアマンといわれる人は、その人特有の思考プロセスにしたがってテーマをブレークダウンし具現化しているのです。決して「無から有を生む」などというように突然に出来上がるものではありません。
先ほどの例を使えば、「喜」というテーマがあった場合、「喜」を導きだすキーワード=「存在の認知」を捉えることができれば、アイデアを創出するための想像力が膨らみます。言葉を言い換えれば、テーマ(喜)とアイデア(創出されたもの)の間を橋渡しする媒介がキーワード「存在の認知」ということになります。
アイデアを出すことができないのは、単にそのキーワードがないからなのです。
キーワードが見つからない場合は、どうするか。私が先ほどキーワードを見つけたようなプロセスを活用すればいいと思います。例えば、数名集めてテーマからイメージする具体的な感覚を収集する、それを集計する、そしてセグメントする。すると大概キーワードが特定できます。この方法は川喜田二郎氏が発案した「KJ法」と同じプロセスのような気もします。
もちろん、そのアイデアが受け入れられるか否かに関しては、選ぶ素材や、個々の価値観およびその時代の社会価値感が影響してきますので、その部分はさらに鍛える必要があることは言うまでもありません。
クリエイティブの世界はとかく、できあがった成果物を気にする傾向がありますが、まず大切なことは、その成果物を作り出した思考プロセスを研究することであり、素材の選び方を研究することであり、素材を選択した価値観を研究することだと考えています。
「無」から「有」は創造できない
私も若いとき(20代)は、「無から有を生む」などと大胆なキャッチを壁に張った覚えがあります。また、「アイデアが突然湧き出たよ」などと人に話したこともありました。しかし、よくよく考えてみると、それが間違っていることに気づきました。
アイデアを創出したプロセスを分析してみると下記のように分類できました。
- 今存在する物に新しい素材を衝突させてみた。
- 既知の法則を、新しい環境に適合させてみた。
- 存在するものAと存在するものBを合体させてみた。
- A・Bの組み合わせに変化をつけてみた。
- Aの形に変化をつけてみた。
この程度でしょうか。
アルバート・アインシュタインがかつて創造性を評して 「組み合わせの遊び」と呼んだことがあるようです。また、ある人は、「垂直思考、水平思考、合体思考」というようなことを言っていました。またある人は、創造とは既存概念と新概念を衝突させ爆発させることだと言っています。それぞれ言い方は違いますが、何が共通点があるように思えるのは私だけでしょうか。
Webクリエイティブ
最後にクリエイティブに関して一言触れたいと思います。
私は、人は全く新しいものというだけでは感動しないと考えています。人間は学習から学び取った既成概念を持っているからです。「事実と心に写し出される感覚」は必ずしも同じではありません。例えば、肉食動物の多くは色盲だと言われます。肉食動物は動いているものを捕らえて食べるだけですので特に色覚が必要がなく、草食動物は、毒等を識別するため、色覚が必要だといわれます。人間の目は色を識別しますがそれぞれの色の使い方を誤ると錯覚を起こすことがあります。
また、ある物体を左上から照明をあてると必ず右下に影ができます。その事実は学習から学び、自然なものとして受け入れていますので、誤った場所に影を配置したデザインは不自然なものとして捉えられます。
1998年の秋、ビットバレーのメーリングリストの中で、あるクリエイターが発言した一文を思い出します。クリエイティブ(デザイン)を評して、「ひとが自然なものとして受け入れられるもの」と。本質をついた素晴らしい認識だと感動した記憶があります。
現代においてWebクリエータがクリエイティブワークを行う環境には、実に恵まれたソフトやハードが存在しています。その技術をさらに極めることは当然ですが、それだけではなく、人が共通して感じる特性をしっかり見極め、さらに、新しい素材、新しいテーマをそれに衝突させたとき、とてつもない新たな表現が生まれ、見る人の心をつかむのではないでしょうか。
クリエイティブに関してもう一言付け加えれば「特別な人(異才)が人を魅了する特別な表現をする」などという考えを私は持っていません。むしろ、誰よりも普通の感覚をもっている人こそ、人を魅了する表現ができると考えています。いいなあと思うデザインは、一目で理解でき、全体の80%の人が同じ感覚を持つからです。つまり80%の人(普通の人々)の心の琴線を動かす共通感覚を支配する自然法則に近いキーワードをそのデザインに埋め込んであるからです。
さらに踏み込みましょう。ではそのキーワードをどのように体得するか? その答えは残念ながら努力のみです。あえて言うならば、「主観(自分の感覚を中心におき答えを導きだすこと)を突き詰めても、客観(データを分析し、答えを導きだすこと)を突き詰めても、徹した末の答えは大概同じであるという認識を私は持っています。
最後に
ビジネスに活用するためのWebという視点に立った時、デザインを中心とするクリエイティブ部門だけでは事が足りないという認識をしています。また、同時にデザインを中心とするクリエイティブ部門は、最終表現としてユーザの目に触れるため、極めてクリティカルな要素だとも認識しています。これらの融合を図りながら真のWebソリューションを提供していきたいとスタッフと一丸となって研究を進めております。
この度、弊社ではデザインに特化した特別なミッションをもったクリエイティブ集団を組織化し、新たな可能性に挑戦し始めました。ミツエーリンクスグループのWebクリエイティブにご期待ください。
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