SEO対策+ログ解析で、Web運用の効果を高める
プランニング&ディレクショングループ プランナー 棚橋 弘季先日、あるクライアントのログ解析を行っていた時に、前月とくらべて著しく閲覧数が減っていた製品があるのを見つけ、その理由を調べてみるうちに思わぬ事実に遭遇しました。その製品はWeb上に2つの名前で掲載されており、片方はページへのリンクが目立たず、もう片方はページへのリンクが存在しなかったのです。 クライアントに確認したところ、「製品名を新しく変える予定だが、社内調整の関係で一部だけ先行して新しい製品名で出してしまっている」という事情でした。結局、Web上で製品名が混在してしまっているのはよくないのですぐに統一しましたが、ログ解析を行っているとこんな思わぬ発見にも遭遇するものです。こういう思わぬ発見に出会うことがログ解析を行う1つの醍醐味といえるでしょう。
なぜ、Webサイトのアクセス数の向上にもっと真剣に取り組まないのか?
私たちは日ごろ、多くの企業のアクセスログデータ解析に携わっていますが、多くの企業Webサイトでアクセス数が横ばいだったり、季節変動はあるものの前年比ではほとんど変化がないといった状況を目にします。もちろん、そういった企業でもWebサイトの運用をまったく行っていないわけではなく、むしろ日々、さまざまな情報更新を行っていたりします。
これはある意味、異様なことです。考えてみてください。コストをかけているのに、売上も利益も前年とまったく変わらず横ばいのまま、などということは、普通の企業で許されるでしょうか?上場している企業であれば株主が許してくれないでしょうし、当然経営層も黙ってはいないでしょう。しかし、Webサイトのアクセス数が横ばいだったり、前年と変わらなくてもあまり問題にならない。Webサイトは企業にとって、既存の顧客や見込み客に対するコミュニケーションの場でもあります。それが前月、前年と比較してアクセス数が変わらない。これは、Webサイトが、ビジネスにおける既存顧客および見込み客数の向上に貢献していないことになります。決して少なくないコストをかけてWebサイトを運用しているのに、現状維持がやっとであるなら、明らかに問題視すべきではないでしょうか。
健康維持か、体力増強か
私たちが定期的なログ解析レポートなどを活用しながら、お客様のWebサイト運用のお手伝いを行う中で1つだけ明らかなことがあります。それは同じコンテンツの運用でも、アクセス数の向上を意図したコンテンツ運用でない限り、アクセス数は伸びないということです。定期的なログ解析レポートを提出していたお客様に「これはサイトの健康診断なのか」と言われたことがありますが、サイト自体の力を高めるトレーニングのような運用が行われていなければ、定期的なログレポートはただの健康診断に終わります。健康維持ではなく、体力増強のための施策がなければ数字に変化が見られないのは、ビジネスにおけるマーケティング施策と変わりはないのです。
サイトのアクセス数を伸ばすための「攻めの運用」
新製品投入時の製品ページ追加であれ、製品訴求を意図した読み物コンテンツや顧客事例の紹介であれ、明確なアクセス数向上を意図した施策を持たないコンテンツの追加では、サイト全体あるいは製品単位で見たアクセス数はほとんど向上が期待できません。なんとなくコンテンツを運用し、情報を更新するだけでは、アクセス数の伸びも、新規見込み客の獲得も望めません。はじめに挙げた例にもあるとおり、アクセス数が減るのにも増えるにも理由があるのです。アクセス数の増加を目指すなら、通常のコンテンツ運用とは異なる視点で、どうすれば新規に見込み客をサイトに呼び込めるかを考慮したうえでの「攻めのコンテンツ運用」が必要になるのです。
SEO対策は、AIDMAの法則における最初のAを実現する
AIDMAの法則を思い出してみてください。顧客の購買プロセスの最初にあるのは注意(Attention)です。多くのWebサイトのコンテンツ運用で欠けているのは、既存顧客や見込み客の注意をひくのに必要な施策です。たいていのコンテンツは製品にどう関心(Interest)をもってもらうか、製品を欲しくなる(Desire)ようにするかといった視点で開発されています。それでは効果が出ないのは当然です。誰の注意もひいてないのに、いったい、誰に関心をもってもらい、欲求喚起をしてもらえるというのでしょうか。
注意をひくための施策として、効果的なのはSEO対策やリスティング広告です。どうもSEO対策というとサイト全体でどんなキーワードでユーザーを呼び寄せるかという話になってしまいがちですが、各コンテンツ(ページ)ごとに考えればカンタンなことです。そもそも検索エンジンというのはユーザーが欲している情報を探すためのツールです。検索キーワードに「パソコン 周辺機器」「ギフト 花」などと入力するのは、あるサイトに辿り着きたいからではなく、探している情報を手に入れたいからです。どんなにSEO対策を行い、検索エンジン上位表示が実現できても、その情報がキーワード(=ユーザーのニーズ)と一致していないものであれば、ユーザーはそのままサイトから立ち去るでしょう。いまのSEO対策の発想はそもそも逆転してしまっているのです。本来は、まず、ユーザーの欲しい情報をコンテンツとして用意し、そのコンテンツを単純に内容に即した形でSEO対策を行い、ユーザーが検索エンジンで見つけやすくしてあげればいいだけです。ユーザーの関心や欲求を喚起するコンテンツの開発ができるのなら、あとは注意をひくためのSEO対策をそれに加えてあげればいいのです。私たちのSEO対策サービス「マトリックスWeb構築サービス」の根底にあるのもそうした考え方です。
SEO対策と定期的なログ解析によるスパイラルアップ
Webサイトは、企業がユーザーとのコミュニケーションを行うのに、非常に適したツールの1つです。ユーザーはいつでも必要とする情報に検索エンジンを通じてアクセスできます。辿り着いたページに適切な関連情報へのリンク(導線)があれば、ユーザーはさらに自分の関心のあるものに対する情報を得ることができます。企業側にしてみれば、ユーザーが何を欲してるか、必要としているかを知り、そのウォンツやニーズを満たすことはマーケティングの基本です。SEO対策が施された適切な情報コンテンツ、さらに関連する情報が見つけやすいユーザビリティ設計が行われていれば、企業はログ解析の結果により得られるユーザーの行動分析データから、ユーザーの興味、関心を知ることができます。
SEO対策を行ったコンテンツ、ログ解析の実行により、Webサイトおよびその運用は、強力なスパイラルアップ(継続的改善)機能をもったマーケティングツールとなります。例えば、私たちのコンテンツ開発サービス「ATOM型製品ページ支援ソリューション」は、SEO対策を行ったコンテンツ開発サービスですが、このサービスにあわせて、定期的にログ解析レポートと適切な改善提案を行うサービス「スパイラル ログ解析(定点観測レポート)」をご利用いただければ、サイトのアクセス数向上および見込み客獲得といったマーケティング目標の達成を支援することが可能になります。
成長のために
「意思決定、とくに戦略的な決定を行ううえで最も必要になるのが、外の世界についての情報である。成果、機会、脅威は外にしかない」とドラッカーは言っています。
前回のコラム(「戦略実行を可能にするWeb版バランススコアカードという考え方」)では戦略の実行について書きましたが、戦略の実行のためにはまず戦略の決定が必要です。ただし、それには現場の情報とともに、ドラッカーのいうところの外の情報(例えば、競合他社や、顧客−非顧客に関する市場の動向など)も必要となります。こうした情報を得るためにも、Webサイトの攻めの運用(積極的な情報発信・コンテンツ運用とその効果測定としてのログ解析)は必ず役に立つと私たちは考えています。PDCAを基本とした現場のスパイラルアップと、現場と経営をつなぐクローズド・ループ・システム 、そして、これら2つの円環をつなぐクロス・ループの実現。企業の成長のために、必要なこうしたシステムを実現するためのソリューションを現在、開発中ですが、それに関してはまたの機会に。
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