アクセシビリティの祭典 in MLC 2018 開催レポート(8月29日開催)
UI開発者 宇賀
皆さんこんにちは!UI開発者の宇賀です。
平成最後の夏がついに終わりを迎えます。皆さんは素敵な思い出が作れましたでしょうか?
昨年に引き続き、今年もテックラウンジ運営委員会主催の臨時イベント「アクセシビリティの祭典 in MLC 2018」を開催しました!
今回は平成最後の夏のイベントとなった祭典の様子をご紹介します。
アクセシビリティの祭典 in MLCとは?
NPO法人アイ・コラボレーション神戸さんが主催しているアクセシビリティの祭典にインスパイアされ企画されたイベントです。
アクセシビリティの祭典は、自治体・企業・制作会社・障害者支援施設などに属する方々、障害を持つ当事者など様々な立場の人が、新しいアクセシビリティ技術に触れて体感できるお祭りです。
アクセシビリティの祭典 2018
社内でも年に一度はアクセシビリティに関するお祭りを開催し、アクセシビリティに対する理解をより一層深めていきたいという狙いがあります。
※ なお、アクセシビリティの祭典という名称で社内イベントを行うことについては、イベントの主催者より承諾いただいております。
タイムテーブル
当日はLT(ライトニングトーク)3本、特別コーナー、トークセッションの5本立てで進行しました。
- 開会式
- LT:編集者が意識しているアクセシビリティ
- LT:本当にあった怖いWAI-ARIA
- LT:日本で唯一のアクセシブル動画制作
- 特別コーナー:支援技術の話
- トークセッション:当社アクセシビリティ対応の過去・現在・未来 2018
それでは早速、当日の様子をご覧いただきましょう!
開会式
ちょっとした緊張感とともにいよいよイベントスタートです。
昨年同様テックラウンジ運営委員会最高顧問兼当社CEOの木達によるあいさつで、ぐっと朗らかな雰囲気に。
今年初めてアクセシビリティの祭典 in MLCに参加されたスタッフに向けて「アクセシビリティの祭典」の紹介のほか、社外に向けたアクセシビリティに関する取り組み、着ていらっしゃる法被の逸話などをお話しいただきました。
編集者が意識しているアクセシビリティ
最初の登壇者は、広報販促部のUさん。広報の仕事だけでなく、エグゼクティブ・エディターとして編集の仕事もしているそうです。
普段Uさんは、スクリーンリーダーなどの読み上げツールが読みやすい文章に仕上げることに取り組んでいるとのことで、空白文字や記号の注意点や漢字とひらがなの使い分けについてご紹介いただきました。
送り仮名が同じで、単体では読み方の判断がしづらい「行った」などの言葉は、読み方によって漢字とひらがなで使い分けたりするそうです。そもそもUさんは「おこなった」という言葉自体を使わない文章を心がけているとおっしゃっていました。
ほかにも、視覚的には伸ばし棒に見えても実はまったく意味の違う記号で代用されていることがあるそうで、そういった一見わかりづらいところにも、Uさんは目を光らせているそうです。
確かに、「ユーザー」が「ユ―ザ―(伸ばし棒がダッシュ)」と書かれていても、ひと目ではわからないですね...。
本当にあった怖いWAI-ARIA
先月のテックラウンジに寄せていただいたのでしょうか。ほんこわWAI-ARIAをお話いただいたのはアクセシビリティ部のKさんです。
Kさんは「ここでその技術を使うべきかどうかの見極めも大事」といいます。これまでKさんが見たWAI-ARIAの誤った実装が次々映し出され、会場はサンプルコードに釘付けです。
If the current node is hidden and is not directly referenced by aria-labelledby or aria-describedby, nor directly referenced by a native host language text alternative element (e.g. label in HTML) or attribute, return the empty string.
Accessible Name and Description Computation 1.1
https://www.w3.org/TR/accname-1.1/#step2
意外と気づきにくいようなパターンから、聞いているだけで恥ずかしくなるようなパターンまで、たくさんの例を紹介いただきました。特にこの「隠せてない問題」の例は、見えていないと思っていたものが実はユーザーに伝わってしまうというところもなんだか気恥ずかしさを感じますね...笑
具体的な失敗例と共に仕様が書かれているURLもご紹介いただけたので、理解しやすい印象でした。自分も同じ誤った実装をしないように心がけたいです。
日本で唯一のアクセシブル動画制作
3人目の登壇者は映像部のMさんです。
当社には様々な映像制作サービスが存在しますが、その中からアクセシブル動画制作サービスを軸にお話いただきました。
今後も一層Web動画コンテンツの需要は高まることが予想されている中、Webサイトだけではなく動画に対してもアクセシビリティへの配慮は重要とのこと。
実際のアクセシブル動画をお見せいただきながらの実績の紹介には、普段かかわりのない部署のスタッフにも直感的でわかりやすいセッションだったと思います。
字幕や副音声、アクセシブルなプレーヤーを備えた動画のアクセシビリティ対応が1社で完結できる当社のサービス概要を、ぜひ皆さんも覗いてみてください!
特別コーナー:支援技術の話「これ、お高いんでしょう?」
いよいよお待ちかね、特別コーナーのお時間です。
このコーナーでは、アクセシビリティ部に所属する全盲の視覚障害者であるTさんが実際に利用しているiOSアプリケーションをご紹介いただきました。Tさんが解説をし、その解説を聞きながらテックラウンジ運営スタッフが実際に使ってデモンストレーションを行いました。
今回紹介いただいたのは次の3つのアプリです。
聴くWebは、まるで音楽のようにWebページを聴くことができるアプリケーションとのこと。再生・停止、早送り巻き戻しなどのインターフェースがついているイヤフォンがあれば、満員電車の中でもiPhoneを取り出さずにWebページを聴くことができるとのこと。お高いのかと思いましたが実はダウンロードは無料のアプリだそうです!
Seeing AIは、まさにそのなの通り肉眼でモノを見る変わりにiPhoneのカメラを使ってAIに見てもらうアプリケーションだそうです。実際に使ってみましたが、文字の読み上げはもちろん、人の顔を判断したり場所の様子を解説してくれたり、部屋の明るさまでわかってしまう優れものでした!こちらもお高いのかと思いましたがなんと無料のアプリだそうです!
最後のBlindSquareは、自分が向いている方角に何があるかを教えてくれるアプリとのこと。25メートルから2キロメートルにわたって、どういう施設やお店があるのかを知ることができるそうです。こちらも無料なのかと思いましたがなんと有料のアプリだそうです笑 とはいえ、機能自体は大変便利だそうで、日常的にもかなり助かっているとのこと。
どのアプリケーションもその便利さに会場は大注目です。近年の技術革新は目覚しいですが、身近なところでもどんどん便利になっていっていることがわかって、なんだかわくわくしますね。
トークセッション:当社アクセシビリティ対応の過去・現在・未来 2018
やってまいりましたグランドフィナーレ!お祭りもまもなく大詰めです。
最後は社内屈指の名司会と呼ばれるNさん進行の下、アクセシビリティ部の方々が繰り広げるトークセッションです。
当社が公開しているアクセシビリティBlog、実は2005年8月から執筆されているのを皆さんご存じでしょうか?URL変更前の分をたどると、実はもう10年以上続いています。このアクセシビリティBlogについてのお話や、Windows向けスクリーンリーダーNVDAの日本語化を実はミツエーリンクスがかつて担っていたお話、アクセシビリティチェックツールWorldSpace Complyの紹介に社外セミナーに関する思い出などなど盛りだくさんに語っていただきました。
そのすべてをできることなら紹介したいのですが、この時点でとてもボリューミーな記事になってきている気がするので、とても貴重な話に参加者全員が真剣に耳を傾けていらっしゃったという雰囲気だけをお伝えするにとどめたいと思います...。
終盤では、今日のWeb界隈を見回してみるとアクセシビリティに関する関心が高まってきているように感じる、というお話になりました。最後は、アクセシビリティへの関心が高まるだけではなく、そこでさらにその先をもっともっと目指していくことがミツエーリンクスのミッションだというお話で締めくくられました。
来年もやるぞ!アクセシビリティの祭典 in MLC!
今年も多くの方々にご協力いただきまして、非常に有意義な時間となりました。
平成最後の夏というと少し寂しい感じがしますが、よく考えたら来年は「新元号最初の夏」が来るので個人的には少しだけもうわくわくしていたりします笑
なお、「特別コーナー」については2018年9月5日にもっと具体的にアプリに触れてみるための体験イベントを社内で別途開催いたしましたので、後日公開されるそちらの開催レポートもぜひお読みいただければと思います!
次回のテックラウンジは10月です!また、来年もこの祭典は開催したいと思いますので合わせてお楽しみに...!