企業の「独自性」を見出すヒント
代表取締役 髙橋 仁弊社のスタッフも週末は新潟や長野に行ってスキーを楽しんでいるようです。このコラムは週末に書いていますが、ちょっと用事があり、スタッフに電話をしても最近つながりにくくなっているのはそんな理由もあるかもしれません。
独自性を発見するプロセス
今日は「独自性」というキーワードに触れてみたいと思います。このコラムでインターネット戦略を成功に導くためには、企業における独自性の把握が重要だと強調してきました。ある経営者から、「独自性と言ってもなかなか難しいなあ。」という質問をいただきました。今回はこのキーワードに挑戦して見ます。
私はかれこれ18年近く経営の身近で生きてきましたが、私自身の経験から学び取ったことを通して解説を試みます。
まず、視点を個人に置き換えると説明が容易です。
守・破・離
落語の世界に「守・破・離」という言葉があると言われます。一流の落語家にはこのプロセスを踏まないと絶対になれないともいわれます。
「守」= 守ること、マネをすること。師匠を徹底的にマネするプロセスです。話し方、しぐさは勿論、ご飯の食べ方、寝癖、酒の飲み方等など、とにかく徹底的にマネをすることが第一フェーズと言われます。
「破」=破ること。自分の芽を出すこと。一定の期間を経て師匠のマネをすべてしてしまうと自然と新たな試みをしたくなるのがひとでしょうか。例えば、「師匠はこういう話し方をしているが、今のお客様は若い女性が多い(環境要因)ので言葉の語尾の部分だけ変化をつけてみよう!」となります。試行錯誤を繰り返す中で、お客様に受け入れられた瞬間に、師匠ではない「自分」の芽が出てきます。その後は「離」に向けてまっしぐらです。
「離」=離れること。自分の独自性を確立すること。ほんの一部、語尾に変化を与えたところから、少しずつ広がりをみせ、最後には全体を自分オリジナルのものにすると言われます。独自性へのプロセスといえないでしょうか?
モーツァルトの逸話
彼は、8歳ごろから交響曲を作曲した天才と言われます。ところが、その頃の曲は、御祖父の曲にそっくりと言われるほど似ていたといわれます。彼は、マネをすることからスタートし、それをマスターするプロセスを経た後、自分自身の「独自性」を発見したと思われます。守・破・離のプロセスに似ているように思えます。
神彰の教え
昔、神 彰(じん あきら=故人)という人に随分お世話になりました。元世界の「呼び屋」の異名をもった、日本初の国際プロモーターでかなり豪快な人でした。若い頃その彼からいつも叱られていたことがあります。「自分を捨てろ。ちっぽけな自分に固執するから、大きな本当の自分が見えてこないんだ!」と。その当時自分は20代でしたので理解できませんでしたが、最近少し分かるような気がします。まずは、「守」に徹しろと言っていたように思えます。
ビジネスの世界に視点を置いてみます。
プロセスマネジメント
世界的なプロセスマネジメントの本質を捉え経営に生かそうとスタッフと共に自らいろいろ実践していますが、最近CMMIというソフトウェア開発における成熟度モデルの導入を試みています。その他、シックスシグマ、ISO関連の活動を振り返ると共通したキーワードが出てきます。それは何か? 「ベスト・プラクティス」という言葉です。早い話が、「社内外を問わず一番いい方法をまずマスターしてみよう」ということです。「守・破・離」の視点で捉えれば、最初は「守」からと言っているようなものです。
自社
ミツエーリンクスを設立して12年以上経過しますが、自社の独自性がはっきり見えて来るまでには、10年の歳月が必要でした。恥ずかしい話ですがこれが事実です。それまではただ必死に生きて来ただけだというのが本音です。顧客企業様に叱られたり、誉められたりを繰り返しながら、「これをやったらおしまいだ」、「これは大切なことなんだ」と一つ一つ学びながら、スタッフと共に、ミツエーリンクスをどの方向に向けるか、何を独自性として展開すべきか、やっと見えかけた程度です。
独自性は見えて来るもの
学問的な視点には興味を持ちませんが、実践を通して社会から教えて頂いた事実から申し上げれば次のようになります。
まず、自分の信義においてその対象が「本当に大切なこと、あるいは価値があるもの」と思うのであれば、徹底的に模範として活用してみること。次に、ひとはどんなに他人のマネをしてもマネし切れない自分を発見するものです。そのギャップこそ他ではない自分自身です。そのとき初めて自分の真実を発見した瞬間と言えるのではないでしょうか。その後はその芽を試行錯誤しながら、育てていく中にだれもマネの出来ない独自性が出来上がってくるように思えます。
「独自性」は本来備わっているものでしょうが、発見するには一朝一夕というわけには行かないようです。私の認識では「守・破・離」のプロセスと、継続的改善を繰り返す中に、きっと「何か」が見えてくるものだと思っています。
私達ミツエーリンクスもそういう意味で言えば、やっと「破」の局面に差し掛かった程度だと認識しています。顧客企業様を師とし、ますます努力して参る所存です。
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