ナレッジ・マネジメント(KM)、本当のノウハウって?
代表取締役 髙橋 仁今日は、ナレッジ・マネジメントについて触れてみます。
経営管理にとって重要なキーワードであるということは誰もが理解することではありますが、どのように実践するかというフェーズになりますと頭の中が硬直し、いかにも難しいそうに見えてしまうキーワードに思えます。
アルファベット3ワードのマジック
KM、CRM、SCM・・・・・等、英単語の頭文字をとった専門用語が次々に生まれ、世の中に出回ります。私達はその不明な言葉に翻弄させられ、理解するひまも無く、活用しなければと脅迫観念にかられます。そしてシステムを利用しなければ達成できないと思い込み、導入しても、形入って魂入らずの状態で、結局失敗に終わり、失敗の原因をシステムのせいにしてしまいます。また、その概念自体に無理があると思ってしまいます。そしてこれらのことは繰り返されます。
私達は、「アルファベット3文字」にどうも弱い傾向があるようです。「なんとなくすごそう」「なんとなく難しそう」「なんとなく失敗しそう」というように心理的にすでに負けてしまっています。まず、ここから攻略する必要があります。どのように捉えると楽に向き合うことができるのでしょう。私の場合、下記のような攻略方法を定義し取り組んでいます。
- どんな新しいキーワードも、99%の既存概念と1%足らずの新しい概念を合わせただけ、と思い込む。(全く新しい画期的方法論などあるわけがなく・・・大概のものは組み合わせに過ぎない)
- 大元のキーワードは非常にシンプルで、当たり前のことを言っているに過ぎない。(幹を捉えることに専念し枝葉は必要に応じて学ぶというスタンス)
- 言葉の意味を捉えたら、自分の仕事環境に置き換えてみる。そして自社用に意味を再定義する。(テーラリング=仕立てなおし)
- 仮説を立てて実践する。
こんなノリです。
ナレッジ・マネジメント
辞書に書いてあることを引用すれば、ナレッジ・マネジメントとは、「組織の中や社外にあるナレッジ(過去の経験から得られた知識)を経営管理し、新しい価値を創造する力(資産)に変えていく知的資産を最大限に活用する経営管理・手法。欧米の企業の間で導入が加速しています。情報通信サービスの高度な進展を背景に、1980年代後半からその枠組みが形成されてきた」とあります。
ナレッジ・マネジメントで先進的な取り組みをしている企業のなかで、富士ゼロックスの例が理解促進には極めて有効であったと記憶しています。3年前、ある総研のHPに紹介されていた内容を紹介します。
コピー機メンテナンス部隊の話
一日の仕事が終わって会社に帰ってくると、大きなテーブルを囲み、各自が休んでいます。そこで自然に下記のような会話が行われます。
Aさん「今日の顧客のコピー機の点検だけど、今までにない症状でね。マニュアルにも書いてないんだよ。いろいろトライした結果、○○部分の問題だということがわかってね。○○部分に補正かけたら直ったよ。」
Bさん「そうなんですか。それは勉強になりました。」
こんな内容だったと理解しています。アナログな例ではありますが、一人の知識が連鎖し、循環していく瞬間をよく捉えています。「なるほど、そういうことね!」と思った瞬間でもありました。
私が捉えたナレッジ・マネジメント
私が当時捉えたナレッジ・マネジメントは簡単にいうと下記のようになります。
- この言葉は、欧米から持ち込まれた概念であるが、ボトムアップ式の経営手法を実践して来た日本には本来備わっている文化である。
- 実際の業務では、マニュアル通り行かないことが多数存在するものであるが、社員が実際の現場で得た、経験に基づく専門知識、ノウハウ、情報を共有化することに成功すれば、社内外の問題解決、技術・用途・商品開発に結びつけることが可能になる。
- 実践で活用するためのキーワードは
- ナレッジの定義は、マニュアル知識ではなく、実際の現場で体得した知識、情報、ノウハウである。
- 発表する環境の設置
- 関連スタッフがその情報を入手できる権利と場の設置
- スタッフ同士が情報交換や会話が可能な環境の設置
- データベース化し、いつでも、だれもが利用できるような仕組みの設置
- 最終的には、問題解決、技術・用途・商品開発に結びつける段階まで高めることが目的
実践、ナレッジ・マネジメント!
それでは、どのように実践してきたか。また、実践での最も難解な部分は何であったかを紹介いたします。
私達は、私達が定義したことに対して実験的に実施して来たことは下記の通りです。
- 実践した期間
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約4年間(2003.05現在)
- 採用したシステム
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社内イントラ(オープン型の掲示版を採用)
- 採用した方法論
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業務日報
- 業務日報の記述内容
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- 今日の感想
- 一日の業務内容(案件別/コメント)
- トラブル・苦情情報
- 明日の予定
- その他(3項目程度)
特徴−業務日報を上下間の報告システムとして活用するのではなく、ナレッジの発表環境、情報入手の場、情報交換の場として活用させようとしました。また、イントラを使用することでそのままデータベース化を達成しようとしました。
どのような効果があったか?
フリーコメントの「今日の感想」には、日々仕事を通じての感動、悩み、ストレスが刻みこまれ、また、フリーコメントに対して他のスタッフが意見やアドバイスを行い、経営効果もさることながら、人間関係の構築にも効果的であったと認識しています。また、それらの会話やアドバイスのやり取りは事業部全員が閲覧できるため、共通認識ができる状態になりやすい傾向もありました。さらに、全員毎日書くことになっていますので、社内ポータルとして機能するため、その他の報告事項等、情報共有の水平展開が可能になったという結果がでています。
難題はどこに存在したか?
非常にシンプルなナレッジ・マネジメントシステムを構築したわけですが、問題がなかったわけではありません。
- 業務日報を全員が必ず書くという社風形成まで、約2年の歳月が必要であった。
- 全員が閲覧できるフリーコメントは建設的意見だけがあるわけではなく、破壊的意見をも容認してしまうという社風形成には2年の歳月が必要であった。
最後に
弊社では、ナレッジの共有化という意味では、その他4つの機能を稼動させていますが、非常に時間を要したものは最初に行った上記の「業務日報プロジェクト」だけでした。
ナレッジの共有化は、スタッフの積極的な協力が必要であるため、システムの導入だけでは成功しないというのが僕の考えです。また、ナレッジ・マネジメントを成功に導くにはそれらを受け入れる社風形成にこそ、最もパワーと時間を費やさなければならないと考えています。さらに一旦社風が形成されてしまえば、何を新規で行っても簡単に機能する傾向も発見し、業務改善は加速度的に早くなる傾向があることも実証いたしました。
このように考えますと、ナレッジ・マネジメントを成功に導く最大のノウハウは裏に潜む運用ノウハウにあるように思えます。弊社の場合「共有化・評価・刺激・習慣化」という4つのキーワードを使うことで運用ノウハウを構築してきました。現在でも新たな機能を社内全体に浸透させる場合、この運用ノウハウを必ず使うことにしています。
顧客企業様において、興味のある方がおられましたらご連絡ください。ノウハウの公開を致します。
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