Webにおけるアンケート設計
代表取締役 髙橋 仁さて、今回は3回に分けた連載の第2回になります。今回は「Webにおけるアンケート設計」について触れてみます。私の取り扱いたいテーマは、VOCを明確に捉えるためにアンケートをどのように設計するかについてです。一般的にいうアンケートのインバウンド率を向上させるための手法論は今回は差し控えたいと思います。
アンケートは顧客要求事項を捉える素材入手の手段に過ぎない
VOCを収集する有効な手法として、アンケートがあります。最近ではWebを使うことで非常に容易にアンケートを実施することができるようになりました。アンケートを実施することにより顧客満足の状態を測ることができますが、それ自体は決してゴールではなく、企業活動における改善活動を行うための素材入手の手段に過ぎません。
そのアンケートの結果から顧客要求事項を明確に捉えることが極めて重要です。なぜなら次のフェーズである改善事項の特定に絶対的な影響力を及ぼすからです。
顧客満足測定=CSM(Customer Satisfaction Management)とは
アンケートというと、顧客満足測定=CSM(Customer Satisfaction Management)を想像される方が多いかと思います。そこでCSMについて若干触れます。
CSMについてはISO9001(2000年度版)にもうたわれており、グローバルスタンダードの考え方はすでに確立しているといえます。その定義は、「顧客満足度は、一連の顧客要求事項に対して組織の総合的な製品がどの程度対応しているかを表す尺度」です。
また、この尺度というのは、相対的な尺度であり、「企業がどれだけ力を注いだか」ではなく、「本来、顧客は何を望んだか」に対する達成度という意味になります。さらに、顧客満足は顧客自身が決める性質のものであるということは言うまでもありません。
「満足」と「重要性」の違い
まず、例として下記のような興味深い事例があります。
ある飲食店が来店客を増加させるためにアンケート調査を行いました。その結果、飲食店を来店する重要な要素として、「トイレがきれいでなければならない」という項目に高い点数をつけるモニターが非常に多かったという反面、顧客の満足を満たす要素に「料理の美味しさ」「従業員のサービス」は高い点数をつけましたが「トイレのきれいさはあまり影響しなかった」という結果がでました。
このように同じ種類の質問でも、満足度を聞く場合と、重要性を聞く場合とでは、アンケート結果が大きくばらつく場合があります。もし、 「満足」と「重要性」を同じ意味に捉えてしまいますと、この飲食店の店主は、来店客増加策としてトイレの改装を選ぶことになり、結果は、莫大な経費をかけながら、満足度を上げることができないという事態になってしまったでしょう。
ただ単に思いつきでアンケート設計するのではなく、2つの事項をしっかり切り分けたアンケート設計が重要になります。
満足要因と不満足要因は、顧客要求事項の性格が違う
顧客要求分析を行う場合、つねに考慮しなければならないことは、満足要因と不満足要因は別物と考える必要があるということです。上記の場合、「重要性=不満足要因」に近かったということが言えます。また、不満足要因に関しては、削減しても満足度をプラスマイナスゼロにもっていくことができますが、それ以上の力を注いでも満足度は高くならないという性質があります。
下記のコラムが参考になると思います。
- ユーザビリティは顧客満足度を高めるか?
- 表層サービスと本質サービスの比較表(表層サービスと本質サービス:満足要因と不満足要因の関係性が理解できると思います)
- 品質とは?
これらのことを十分に考慮しながら、アンケート設計を行うことが、顧客要求事項を明確化するために必要であり、費用対効果の高い改善項目を導きだすための条件であると考えます。
今回は、VOC(顧客の声システム)をより精度の高いものにするためという視点で、「Webにおけるアンケート設計」について触れてみました。これらの目的は、顧客要求事項を明確に捉えるためであり、最終的には、Webは勿論のこと、企業や製品/商品、あるいはサービスに対する改善事項を特定し、アクションプランへ導くためのステップです。
来週は、多くの顧客要求事項の中から、何を改善すべきかについて、品質機能展開というツールをつかって解説したいと思います。
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