Web戦略、企業活動のプロセス分解が「戦術」の方向性を示す!
代表取締役 髙橋 仁スピードの速い業界とはいえ、ひとつの技術、ひとつのノウハウを習得し社内に浸透させ、市場に出すためには1〜3年の研究期間が必要なものも多く存在します。現在弊社でも、そうした中長期的なプロジェクトは数本動いています。またそのための人材が必要になる場合もあります。そうした中で世界的企業として知られる外資系某社の設計技術者が6ヶ月前、弊社に入社いたしました。あるとき、彼女の業務日報に興味深いメッセージがありました。「弊社を決めたきっかけは、面接の時、会議室にきれいな花が飾ってあったから・・・」。また、あるとき営業担当のひとりに、営業活動における、最初から納品終了までのすべてのプロセスを報告するように指示をだしました。その中で興味深かったことは、「初対面のお客様に最初に説明することは、具体的なサービスではなく、会社概要だった」ということです。
「ユーザーは何によって、意志を決定するのか?」ということを考えたとき、上記の例は非常に参考になります。企業活動は効率を求めますので、例えばWeb戦略上で、サービスを強化したければサービスページだけに視点が行き、人材採用を強化したければ、採用ページだけに視点が行く傾向にあります。
しかし、精密なログ解析を実行すれば、こうした企業側の思い込みが、ユーザや応募者の視点を無視していることが一目瞭然です。
弊社を例に取れば、ユーザーはサービスに興味があってサイトに訪れた場合でも、会社概要、組織、沿革、ニュース等を巡回していきます。また、応募者は、意外にも環境報告書や社会貢献活動のページをよく見る傾向にあります。
これらの現象から仮説を立てると、ユーザや応募者は、目的対象=「点」だけでその対象を評価するものではなく、その目的対象に関連する前後関係=「線」、周辺環境=「面」を捉えようとしており、主観的にあるいは直感的にトータルな評価をした後、目的対象のサービスやプロダクトの価値を評価し、価値のポジショニングを行うものと思われます。
切り口を変えて解説すれば、企業がユーザに伝えたい情報があり、そこには「主」と「従」があったとしますと、ダイレクトに「主」情報を提供するに留まらず、「従」の情報も抜けなくバランスをとって提供することが重要のようです。さらに極言すれば、「主情報」に同業他社と大きな違いが無い限り、ユーザは「従」の情報によって、価値の判断を下し、そのささやかな違いが「最終的意志決定要因に大きく影響を与える」ものと考えられます。
今日はこれらの課題を解決するための、効果的な一つ方法論をご紹介いたします。
「SIPOC(シーポック)」でプロセス分解すると、全体像が一目で把握できる
SIPOCとは、『機能横断的な活動をSupplier、Input、Process、Output、Customerの5つの要素に分けて図示したもの。プロセスの全体像をひと目で把握することができる。(シックスシグマ・ウエイ 日本経済新聞社)』ということであり、一般的には、業務改善やプロセス改善を行うときに、活動の全体像を一枚のダイアグラムに表現するときに使用します。
分かり難いと思いますので具体的な例で解説します。たとえばWebを営業支援ツールとして機能させたいと仮定します。まず、リアルで現状活動している営業活動全体を下記のように5つの要素にセグメントし、プロセス分解します。
- Supplier
-
営業活動の原資となる情報、資材、資源を得られるひと、クループ、それに類するもの
- Input
-
営業活動によって具体的に得られる「モノ」
- Process
-
インプットによって得られた「モノ」を加工する一連のステップ
- Output
-
プロセスによって出来た最終成果物
- Customer
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アウトプットを受け取る人(顧客)
これを図で表現しますと下図のようになります。
これでプロセスの全体像が把握できます。各プロセスの要素に関しては、項目が多岐にわたり、まとまりがつかない場合が想定されますが、その場合は、「親和図」等の技法を使い、カテゴリー分類しますと整理されます。こうして記述されたプロセスひとつひとつがお客様の意志決定要因に何らかの影響を与えるものと考えられます。さらに分析を続けるとリアルの世界での営業活動の強み・弱み、課題・問題が浮き彫りになります。そのとき初めてWeb戦略で何をすべきかが見えてきます。
Web戦略の方針が決まれば、具体的な「戦術」へとフェーズを移します。この段階では強化しなければならないコンテンツの範囲はすでに決定していると思いますので、それぞれのコンテンツの範囲に対して「営業活動の強みをWebで支援する手段・方法」「営業活動の弱みをWebで補う手段・方法」に関して、具体的な機能やコンテンツ、表現手法、ナビゲーションなどを考えていくことになります。売上を上げるWebサイトを作るという大変困難なテーマが、ここまでブレイクダウンされてくればさほど難しいテーマではなくなってきます。SIPOCで一度リアルのプロセスを把握し、強み・弱みを捉える、そしてWeb戦略に落とし込む。一見遠回りに感じるこの手法ですが、実はそれほど遠回りではないことがおわかりいただけると思います。
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