もてなしの心(ホスピタリティ)
ミツエーメディアクリエイティブ 取締役 橋本 敬友人を自宅に招いてもてなす時の、部屋を掃除したり、和菓子ではなくケーキを買っておいたり、コーヒーではなく紅茶を用意したり、お皿やカップを選んだり。そういった気配りがウェブサイトでももっと大事にされるべきです。
恥ずかしながら私がホスピタリティ(もてなしの心)という言葉を知ったのは、今から10年くらい前になります。とあるゲームクリエーターの方の制作秘話のようなものを聞く機会があり、その時に彼が熱心に語っていたホスピタリティ(もてなしの心)という言葉を、自宅に戻って辞書で調べた記憶があります。また、パソコンゲームとしては大ヒットした、その方の作られたゲームの心憎い演出に、昼夜を問わず熱中した記憶もあります。なるほど、人を楽しませるというのはこういうことか、と実感した瞬間でもありました。
それ以来、仕事の中ではホスピタリティについて特によく考えます。デザインはもとより、企画・設計段階から、ユーザビリティ、アクセシビリティ、SEOなどウェブサイト構築の際には考慮すべき要素が数多くありますが、それらは全てホスピタリティに基づくものであるべきです。しかしながら、そういった考慮すべき要素に注目するあまり、もてなしの心がない、使いやすそうだけど頭でっかちな、つまらないサイトが増えているように感じます。
近年アプリケーションの進化が進み、サーバーサイド技術も含め、表現方法もいろいろと考えられるようになりました。制作者としてはどの方法を使ってどうやって見せようか、と嬉しい悩みを抱える状況です。またウェブを用いてのマーケティング手法やビジネスソリューションも次々と現れ、投資対効果に着目し、効果測定が欠かせなくなっています。ウェブ以外の業界での成功事例を持ち込んだり、既存のメディアでの表現方法を取り入れてみたり、様々なトライアンドエラーが繰り返されています。
そういった技術や手法を駆使したとしても、企業や制作会社が語る「べき論」ではもはやユーザーをもてなすことは難しいと感じています。競合比較はもちろん大切な要素ですが、それ以上に自分達はユーザーに対して何を提供できるのか、そしてそれをどのように提供するのか、がポイントになってきます。一企業担当者、一制作担当者という立場を離れ、ユーザーが何を欲しているのかを掴み、そこにビジネスとしての訴求ポイントをうまく盛り込んでいく必要があります。このことは簡単なようで意外と難しく、一ユーザーとしてのこれまでの様々な経験や、希望を反映させていくことが不可欠です。
例えば、RIA(Rich Internet Application)というキーワードがありますが、この言葉は何を意味しているのでしょうか。ウェブ上で可能な技術や表現力を駆使して(これまでのウェブでは見られなかった)豊かな経験を提供するというのが大きな捉え方のようです。しかし、これは技術にとどまる話ではなく、企業担当者や制作担当者が、どれだけ豊かな経験をしてきたか、という本質が問われることになります。
単純に「きれい」「かっこいい」「面白い」「便利」そういった直感的な付加価値をまずは提供すること、そしてその付加価値を次の新たな付加価値につなげること、これが私達のウェブサイトでのおもてなしに対する考えです。たくさんの「べき論」を並べ立てることよりも、一つの感動。この考え方は私の所属するチームにも浸透しており、制作の現場は日常の経験やアイディアを具現化する企画と、それを実現する技術について意見をぶつけ合う毎日です。
そしてそのアイディアや技術についてお客様にプレゼンテーションし、そこでもまた一ユーザー、一個人としてどう展開していこうか、という意見を交換させていただいております。
もちろん理論も大切ですし、私達も様々なデータに基づきコンテンツを組み立てます。
そこに「もてなしの心」というエッセンスを加えることで、ウェブサイトはより輝きを増すのです。
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