個人情報保護:会員登録フォームの落とし穴
シックスシグマ推進本部 山下 徹治最近引越しをしたため、家具や電化製品、生活雑貨など、いろいろと買い物をする機会があります。どの店も利用するのが初めてなので、多くの場合「会員カードをお作りしますか?」ということを聞かれます。会員になると割引になるなど特典が魅力的で、今後も度々利用しそうな店では会員になるようにしています。この1ヶ月ほどでおそらく5〜6店舗ほどの小売店やデパートで会員になったでしょうか。
個人情報登録フォームの設計
さて、この会員になるという手続きには、当然個人情報の登録ということが必要になるのですが、私は職業柄その登録フォームの設計には大変興味があります。何をチェックするかというと、会員サービスの主旨と収集しようとしている個人情報の整合性がとれているかどうかです。例えば、ある店では住所、氏名、電話番号の他に誕生日やE-Mailアドレスを記入する欄がありましたが、その店では特に誕生日の割引やメールマガジンなどは発行していないようでした。では何のために誕生日やE-Mailアドレスを収集しているのでしょうか?おそらくマーケティングの観点から、とりあえず集めておけば今後使うかもしれないからという理由で集めることにしたのでしょう。このような状態を「整合性が取れていない状態」と言います。私がこの1ヶ月で入会した店の7割〜8割は個人情報の収集と会員サービスとの整合性が取れていませんでした。ここまで会員システムが浸透してきているのにもかかわらず、個人情報保護への対応はまだまだ後手に回っていることは残念でした。
なぜその個人情報が必要なのかをアピールする
収集する個人情報と、会員サービスとの整合性を取るというのは、実はさほど難しい作業ではありません。例えばE-Mailアドレスを収集しようと考えたのは、ご担当者の頭のどこかでE-Mailマーケティングを検討していたからだと思われます。整合性を取るというのは、なぜ収集しようと思ったのかを整理して考える作業に他なりません。そこさえ明確になればあとは表現するだけです。既に行っている会員サービスかどうかは大きな問題ではありません。まだサービスとして開始していなくても、計画があれば(頭のなかだけの計画であっても)、計画している旨を宣言してしまえばよいのです。
例えば、今後頭の片隅にE-Mailマーケティングのことがあり、E-mailアドレスを先行して収集しようと思うのであれば、
今後、セール情報やキャンペーン情報をメールでご案内する予定です。
情報をご希望される方は下記にE-Mailアドレスをご記入ください。
この2行を加えておくだけで、情報の整合性がとれるだけでなく、顧客サービスがしっかりした会社というイメージさえ会員にアピールできます。また、E-Mailアドレスを記入してくれた会員は、それだけロイヤリティが高い会員になる可能性も高く、フィルターの役目にもなります。無差別にダイレクトメールを送付するよりも、はるかに高い効果が得られるでしょう。
不必要な個人情報を収集するリスク
上述の話は、リアルの店舗での会員登録のケースですが、もちろんWebを媒体として会員登録を促すというケースも同様の気配りが必要であることは言うまでもありません。しかも、Webの場合データは既にデジタルで蓄積され、加工、二次利用が容易にできるというメリットがある一方、セキュリティをしっかりしておかないと不正アクセスや過失による漏えいのリスクは高いです。ご存知のように個人情報漏えいの事故は後を絶たず、毎週数件の事故がメディアに取り上げられています。消費者も、そうした記事を目にすることは多く、個人情報の収集目的と利用範囲が記載されていないサイトには自分の情報を入力しない傾向があります。
収集する企業にしてみても、当社に限っては大丈夫という過信は捨てたほうが賢明です。漏えいしないように対策しておくことが最重要であることは間違いありませんが、リスク管理の側面から言うと、不必要な個人情報を保有していること自体がリスクであり、万が一漏えいした場合であっても被害を最小にするために、収集する個人情報を吟味し最小にしておく必要があります。
また、個人の嗜好情報(購買履歴やページの閲覧履歴など)を容易に記録しておけるのもWebシステムのメリットですが、そうした情報をもし貴社のWebサイトで収集しているのであれば、個人の基礎情報(住所、氏名、電話番号など)とは直接ひも付けせずに、分散してデータを保有しておいた方がいいでしょう。これは蓄積方法による漏えいリスクの軽減策として有効です。
こうしたWebサイトで収集する個人情報を定義し、ルールを定めているのがプライバシーポリシーです。プライバシーポリシー策定のノウハウも当社では提供しています。お気軽にご相談ください。
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