Web標準と表現
ミツエーメディアクリエイティブ 取締役 橋本 敬Web標準に準拠してサイトを作り上げることは、制作チームにとっては長く待ち望んでいたことであると共に、挑戦でもあります。作り手の観点から見ると、文書構造と見栄えを分けるということは、そのサイトで解決されるべき課題の本質に、より近づくことに他ならないと考えます。
多くの場合、Web標準というと文書構造やマークアップの観点から語られることが多いようですが、文書構造が明確になり、CSSにより配置や装飾要素などを定義するということは、情報デザインをする上でもその影響は大きいと言えます。情報を構造化により整理すると共に、画面での閲覧のための設計と配置をし、見出しなどの文字に対して強弱をつける。文書構造の考え方、配置や見出しの扱い方などを考えると、新聞を作るようなイメージに近いのでしょうか。
しかしながら、Webサイトを構築する場合、新聞を作るというよりも、雑誌を作るようなイメージに近いことが多いような気がします。メディアの特性を考えると、情報発信・伝達ツールという役割に加え、コミュニケーションツールとしても機能することから、ユーザーの感情に訴えかけることが必要とされるからでしょう。Web標準に準拠するからこそ見落とせないのが、実は表現の部分ではないかと私は考えています。つまり、文書構造やHTMLやCSSが本来あるべき姿として定義されるのに合わせて、内容や表現も最適化されることが必要とされるのです。
文書が正しく構造化され、文法的にも正しくマークアップされることで、SEOやアクセシビリティの面からもメリットがあるのは、これまでのコラムでもご紹介した通りです。そういったメリットを最大限に享受するのはコンテンツそのものに他ならないということは言うまでもありません。
そのメリットを活かすためには、情報(コンテンツ)の質の向上、そしてその情報を魅力的に訴求するための表現が必要になります。
Web標準に準拠するには技術的な側面からのアプローチは必要ですが、特別なことではないと思っています。むしろ、これまで混沌としていたものが標準化され、原点に帰ると言えます。それは設計やソースレベルの話だけではなく、情報の質や表現といったもの全てが原点に帰るようにさえ感じられます。
「誰に」「何を」「どのように」伝えるのか。
そしてその結果何を得ることができるのか。
文書構造の整備も、表示の定義も表現手法も、当然のことながら全てはここからスタートします。
マーケティング的な見地、技術的な見地から捉えると、考えるべきことは多々あるのも事実ですが、解決すべき課題自体は案外とてもシンプルに捉えることができるような気がします。
Web標準に準拠することは、Webの持つ本来の役割や機能を見直した上で課題にアプローチすることになると考えています。その解決方法としての表現の追求は、制作チームにとっては新たな挑戦であり、ひいてはユーザーの満足に繋がることだと信じています。
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