ウェブコンテンツJISに準拠するには
シックスシグマ推進本部 木達 一仁6月21日、ウェブアクセシビリティのJIS規格、通称ウェブコンテンツJISが公示されました。
アメリカでは3年前のちょうど同じ日に、公的情報へのアクセシビリティ確保を義務付けるリハビリテーション法508条が施行されました。今回公示されたウェブコンテンツJISは、リハビリテーション法のような強制法規ではないものの、国内初の公的ウェブアクセシビリティ・ガイドラインとして、注目を集めています。
ウェブコンテンツJISの概要
ウェブコンテンツJISは、その正式名称を「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器・ソフトウェア・サービス−第3部:ウェブコンテンツ」といいます。
インフラとしてのインターネットが急速に普及するなか、アクセシビリティへの配慮が十分行き届いていないウェブコンテンツが増加してきたことを背景に、単一のコンテンツで、より多様なユーザーへの利便性を図るべく制定されました。
ウェブコンテンツJISの規格は、主に「一般的原則」「開発・制作に関する個別要件(以下「個別要件」)」「情報アクセシビリティの確保・向上に関する全般的要件(以下「全般的要件」)」の3つのセクションから構成されています。
一般的原則とは、ウェブコンテンツについて配慮すべき一般的な事項であり、それを守るうえで必要な要件が個別要件としてまとめられています。全般的要件では、ウェブコンテンツを運用するプロセスに対象を特化して、配慮すべき事項が規定されています。
ウェブコンテンツJISに準拠するには
一般的原則を十分理解したうえで、個別要件と全般的要件の双方を満たすことができれば、そのコンテンツはウェブコンテンツJISに準拠したといえるでしょう。しかしいざ準拠するとなると、話はそう単純ではありません。なぜなら、この規格で示されているのはあくまでも指針だからです。
多くの要件では、付随して具体的な対応策が提示されており、参考にはなりますが、しかし一例に過ぎません。どのような実装で対応すべきかは、ケースバイケースで考慮する必要があります。
また要件の多くは、「しなければならない」「することが望ましい」という2種類の言い回しを用いて規定されています。後者の要件については、サイトが満たすべきアクセシビリティの基準をより詳細に定めたうえで、対応の要・不要を判断すべきでしょう。
そして、要件に対し適切に対応できたかどうかを検証するためのツール類が今のところ存在しません。ですから、検証についても具体的な手法や基準を別途設け、実施する必要があります。
ソフトウェアを利用するなどし、機械的に検証が可能な事項もなかにはあります。たとえば画像の代替情報をテキストで提供する場合、img要素中のalt属性の有無は、HTMLの文法チェッカーで検証可能です。しかし、その内容が文脈に照らして適切かどうかは、人が判断しなければなりません。同様の状況は、他の多くの個別要件についても該当します。
さらに、全般的要件を満たすには、ウェブサイトの運用フロー全体を見直す必要があります。コンテンツは常に更新され変化していくものだけに、一定のアクセシビリティを確保し続けるには、継続的な検証と改善が必須となります。
高まるウェブアクセシビリティへの需要
アクセシビリティというと、障害者や高齢者にだけ関係のある言葉のように受け取る向きもあるようですが、それは完全に誤りです。アクセシビリティの向上は、万人がメリットを享受できることです。人はみな加齢から逃れられませんし、たとえ今は健常であっても、いつ・何がきっかけで障害を持つことになるかは、予測が不可能です。
とりわけ日本は、長寿化・少子化が進んだ結果、世界一の高齢国となっています。公的機関にとってウェブコンテンツのアクセシビリティ確保は急務であり、また一般企業についても、社会的責任の達成はもちろん、商機会の損失を抑えるという意味でも、「待ったなし」の状況となりつつあります。
弊社では、規格公示日にウェブコンテンツJIS準拠サービスをリリースしました。人間中心設計プロセス(ISO13407)を含む数々のマネジメントシステムを導入してきた経緯や、ウェブアクセシビリティ分野での経験と実績を基に、ウェブサイトのアクセシビリティ改善に貢献していきたいと思います。
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