Webサイトの改善に資するログ解析とは
プランニンググループ 新屋 晴信私たちがログ解析サービスを本格的に提供し始めたのは2002年の夏でした。早いものでそれから2年の歳月が経過しています。サービス開始当時は「ログ解析」とは何か、何が分かるのか、なぜ必要なのか、といったことをお客様に対して啓蒙することから始まりました。現在では、お会いするお客様のほとんど全てといってよいほど、ログ解析を実施されており、隔世の感があります。
ログ解析が一般的になってきた現在では、多くの企業でWebご担当者様がログ解析を実施されています。最近、ログ解析の結果をどのように利用すればよいのか分からないといったことをご相談いただきます。そこで、今回のコラムでは「Webサイトを改善するためにはどのようにログ解析を活かしていけばよいのか」といったことを中心にログ解析結果の上手な利用方法についてお話ししてみたいと思います。
Webサイト改善の指標としてログ解析を利用する場合、大きく分けて2種類の指標があります。ユーザーの閲覧経路や閲覧方法といった「ユーザーの行動に関する指標」とユーザー数やアクセス数といった「ボリュームに関する指標」です。
リニューアルフェーズに有益な指標
ユーザーの行動に関する指標とは、コンテンツ間の相関関係、閲覧パターンによるユーザーのセグメンテーション、閲覧経路など、ユーザーの行動を傾向としてとらえる分析手法です。
ユーザーの行動に関する指標は、リニューアルの効果、特にWebサイトの使い勝手が改善されたか否かという問題を測定することに向いています。
私が携わった、実際のリニューアルプロジェクトをご紹介します。このプロジェクトではリニューアルに先立ち、従来のサイトの問題点を明確にする目的でユーザーの行動分析を主体としたログ解析を行いました。その結果、アクセスは相当数あるものの、TOPページのみ閲覧して去ってしまうユーザーが大半で、下層ページにユーザーが移動していないという事実が判明しました。
そこで、リニューアルのポイントをTOPページのナビゲーションを工夫し、ラベリング(リンクに使用する文言)を分かりやすいものに改善することとし、サイトのユーザビリティ向上を最大の目的としました。
リニューアルサイト公開後の効果測定として、同じ内容のログ解析を実施したところ、TOPページから下位階層のページへスムーズにユーザーが流れている様子がコンテンツ間の相関関係に如実に表れていました。
この事例にみるように、リニューアルではWebサイトの見た目やナビゲーションに大きな変更が加わります。それに伴い、ユーザーの閲覧行動も大きく変化します。その変化が、意図したものになっているのか、かえって使い勝手が悪くなっていないか、という点を把握する上で、ユーザー行動に関する指標が重要になります。
運用フェーズに有益なログ解析
ボリュームに関する指標とは、サイト全体や各ページに対するユーザー数・アクセス数、各検索キーワードの流入件数といった数値の増減に関する指標です。
一般的にボリュームに関する指標は、Webサイト改善の目標値として利用されています。もちろん、私たちも目標値として利用していますが、それ以上に有益な利用法があります。運用フェーズにおける仮説形成と仮説に基づく施策の効果検証を行う指標に利用することが重要です。
サイト全体や各ページに対するユーザー数・アクセス数の変化は、そのサイトに対するユーザーの反響です。Webサイトはリニューアルするだけでユーザー数やアクセス数が急激に上昇するものではありません。Webサイトは構築したまま放置しておくとユーザー数、アクセス数は減少の一途をたどります。ユーザーは常に新しい情報をもとめて行動しています。とはいえ、コストの問題もあり、際限なく新規コンテンツを追加することは不可能です。そこで、現在のサイトにユーザーが望んでいるものは何か、という仮説を立てる必要があります。
例えばコンテンツの追加に関する仮説形成に利用ができます。ユーザーが使用する検索キーワードが社名に偏っているような場合には、サイトで提供している製品・サービス情報が少ない、あるいは製品・サービスに関連する情報が少ないことが考えられます。製品・サービスの周辺に関する情報を増やすことで製品名そのものの認知度が高くなくても、製品の周辺に関連するキーワードで検索サイトから直接これらの情報に関心のあるユーザーが訪れれば、核心である製品・サービスの詳細ページを閲覧してくれる確度が上昇します。
また、お問い合わせや資料請求を行うフォームのページはアクセス数が多いのに、サブミット後のThanksページへのアクセスが極端に少ないことがあります。このような場合にはフォームの質問内容の設計や記入ミスした際の再記入が容易に行えるか否かなど、改善するポイントが見えてきます。
上記のような仮説を立てて、それに基づく更新を行い、その更新が効果的であったか否かをボリュームに関する指標で測定する。この作業を積み重ねることで、より効果的でかつ効率的なWebサイトの運用が可能になります。
ログ解析の真価は改善につなげることにある
日々、いろいろなWebサイトのログ解析を行っていて思うことは、Webサイトほど継続的改善が必要であり、その改善が目に見えて表れるものはないと感じます。解析結果の意味を汲み取り、仮説を立てて改善につなげるのか。そこにこそログ解析を行う真の意味であると思います。
数値の増減に一喜一憂してしまうのは仕方のないことですが(私自身もユーザー数やアクセス数が増加していると素直にうれしく感じます)、それだけに終わらせずに、是非、Webサイト改善のための仮説を立ててみてください。仮説の正しさが証明されて上昇した数値からは、より一層大きな喜びが得られます。
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