ブランド・マネジメントの仕組みをつくる
プランニング&ディレクショングループ プランナー 棚橋 弘季弊社では、品質マネジメントシステムのISO9001、情報セキュリティマネジメントのBS7799/ISMS、苦情対応マネジメントシステムのISO10002をはじめ、数多くのマネジメントシステムを導入、運用しています。これは「採用情報」の「理解へのキーワード」にも書かれているとおり、「個々の自由を十分尊重し、同時に10%の決められたプロセスを遵守する」というスタイルを可能にするためのものです。今回はこうしたマネジメントシステムの利点と、Webブランディングへのマネジメントの仕組みの導入について考えてみたいと思います。
プロセスが規定されていることの利点
弊社では、業務活動を行うにあたって、ある作業が規定されたプロセスを遵守していない場合、マネジメントシステムを統括する部門の担当者からチェックが入ります。チェックを受けるほうとしては、ほとんどの場合、プロセスがあるのを理解していながら、何らかの理由(納期が迫っている、など)でプロセスを省略していたりするので、注意を受けた瞬間はおもしろい気持ちはしません。
しかし、実際には、こうしたマネジメントシステムで規定されたプロセスがあるおかげで、個々のプロジェクトごとに最初からプロセスを考え出す必要もないため仕事の効率化もできますし、決められたプロセスに遵守していれば大きな事故も起こすこともなく、業務を進めることができます。反対に、新しいサービスを提供する際に、きちんとプロセスが規定されていない場合などは、進行管理を行うディレクターが案件全体の進め方を1から規定しなければならなかったり、納期遅れを起こさないためのスケジュール管理、品質管理にも余計な手間がかかったりしてしまいます。また、ディレクションを行う人間と個々の作業を行う人間の認識のズレなども発生して作業の出戻りも多くなりますし、認識合わせを行うための会議が多くなるなど、無駄な時間も多くなってしまいます。たまに、そういう場面に出くわすと、あらためてプロセスがあることの利点を実感できます。
マネジメントシステムによる持続可能性の支援
実際の業務のなかで数多くのマネジメントシステムに触れている経験から考えますと、マネジメントシステムのような仕組みがなければ、それだけ属人的な判断や関係者の認識合わせなどが必要となり、業務の効率は下がりますし、サービスの品質にもバラつきが生じてしまうだろうということが、実感として非常によくわかります。また、マネジメントシステムでプロセスや役割分担が明確になっていると、案件の引き継ぎや新しいスタッフの教育を行う場合でもわりとスムーズにいくことが多かったりします。
これは企業の持続可能性を考える上でも非常に有利なことです。担当者が変わってしまうと、これまでと同じサービスが提供できない、同じような売上が達成できないというのは、企業経営にとっては大きな問題です。事業がマネジメントシステムではなく、属人的な判断や能力によって左右されるようでは、経営者が、市場環境の変化に応じて組織体制を変えようとする場合でも、人事異動などによって提供するサービス品質の劣化、売上目標の達成度、顧客満足度などが大きく影響を受けてしまうことになり、そうそう組織をいじることができなくなってしまいますし、そのため、市場環境への対応も遅れてしまうでしょう。市場に支持され続け、社会に必要とされ続ける企業として存続するためにも、属人性を排したマネジメントシステムによる企業経営、業務運用の仕組みをもつことは、企業にとって重要な課題であるといえるはずです。
ブランド・マネジメントの必要性
さて、こうした問題はブランド・マネジメントを行う場合でも同様ではないでしょうか? ブランディングにおいて、標的市場の顧客一人ひとりの心のなかにブランド・ポジショニングを確立し、ブランド価値を高めるためには、継続的な活動の積み重ねが必要だったりします。人が歴史あるブランドに惹かれるのは、そうしたブランドがみずからのブランドの歴史をよく理解した上で、市場の変化に応じて、ポジショニングの一部を変化させ、変わらない部分はしっかり保持し続けるというマネジメントを実現しているからだと思います。しかし、こうした継続性が必要なブランディング活動が何のマネジメントの仕組みも持たず、その時々の担当者の属人的な判断やアウトソーシング先の提案力だけで行われていたとしたらどうでしょう? 担当者が変わる度、アウトソーシング先の業者が変更になる度に、ブランド・ポジショニングが変わってしまい、市場におけるブランド認知、ブランド・イメージが混乱してしまうのではないでしょうか?
ブランド・マネジメントの4つのプロセス
ブランド・マネジメントにおいても、他のマネジメントシステム同様に、PDCAサイクルによる4つのプロセスがあります。下図がブランド・マネジメントにおける4つのプロセスを示したブランド・マネジメント・サイクルです。
- ブランド・ポジショニングの明確化
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第1のプロセスは、ブランドが何を意味しているのか、競合ブランドに対してどのようなポジショニングにあるのかを理解するプロセスです。3C(顧客、自社、競合他社)の視点で現状把握を行い、適切なブランド・ポジショニングを策定します。
- ブランド・マーケティング・プログラムの計画と実行
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ブランド・ポジショニングを実際の標的市場において確立するためのマーケティング・プログラムを計画、実行するプロセスです。Webマーケティングにおいては、ブランド認知、ブランド・イメージの向上を考慮し、ブランド・サイトへの集客、ブランド価値の理解、共有、ブランド・ロイヤルティの向上といった視点で、コミュニケーション・プランを作成し、実行します。
- ブランド・パフォーマンスの測定と分析
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ブランド・マーケティング・プログラムの実行によって、標的市場におけるブランド・パフォーマンスがどのように変化しているかを測定するプロセスです。また、競合ブランドのマーケティング施策による影響も測定、分析します。調査の手法としては、アクセスログ解析によるユーザー行動調査、競合ブランド調査(ベストプラクティス調査、Web視聴率調査 etc.)、顧客満足度調査などがあり、これらを定期的に実施することで、ブランド・パフォーマンスのトラッキングを可能にします。
- ブランド・エクイティティの増大と持続
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上記3つのプロセスが遵守されているか、また、各々のコミュニケーションがブランド・ポジショニングに適したものとなっているかなどを管理するプロセスです。また、パフォーマンス測定による分析を元に、ブランド強化、活性化、維持を目的としてブランド・プログラムのコントロールを行います。
ブランディング・ソリューション for ブランド・マネジメント
こうしたブランド・マネジメントの仕組みを構築し、強いブランドを構築、維持するためのWebブランディングを可能にするサービスが、本日リニューアル・リリースした「ブランディング・ソリューション for ブランド・マネジメント」です。このサービスは、自社および顧客企業様のブランド・マーケティング実行の実績と、先に紹介したISOに代表される数々のマネジメントシステムを採用、運用してきたノウハウの結合により、持続可能な価値を生み出すWebブランディング・サービスとしてご提供するものです。
Webブランディングにおいても、標的市場の攻略のためにはどんなブランド・ポジショニングが有効か、ブランド・ポジショニングの確立のためにはどんなブランド・コミュニケーションを行えばよいかといったブランディング全般に関係する課題から、ブランディングのためのSEO対策はどうすればよいか、どんな効果測定を行えばよいか、社内においてどのようにコンテンツ管理を行うかといったWeb特有の課題まで、マネジメントを必要とする多くのタスクが複雑に絡み合って存在しています。今回、リニューアル・リリースを行った「ブランディング・ソリューション for ブランド・マネジメント」サービスは、こうした課題の解決が属人的で、部分最適なものにならないよう、ブランド・マネジメントの仕組みを構築することで、論理的思考と全体最適を徹底するブランディング活動を可能にするものです。詳しくお知りになりたい方は、是非、お問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。
また、先月より公開させていただいている「実践!Webマーケティング:Blog」にも、今回のコラムやブランド・マネジメントに関連する記事を掲載していますので、興味のある方は是非ご覧になってください。
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