SEM(検索エンジンマーケティング)への取り組み
取締役副社長 小野 裕之今年2月にインターネット広告市場について調査結果が電通より発表されました。2005年のインターネット広告費は2,808億円、前年比54.8%の増加となっており、昨年度と同程度の伸びとなったようです。昨年、広告費でインターネットがラジオを抜いたと騒がれましたが、この勢いはまだまだ続きそうで、2009年には5,560億円に達するとの予測も出ております。
インターネット広告市場が拡大を続けている大きな理由としては、インターネットが接触時間でテレビについで2位となるなど、利用者の裾野が大幅に拡大していることに加え、技術的な側面からもブロードバンドの普及により従来以上にリッチな広告出稿が可能になったこと、またリスティング広告(検索連動広告)という新しいターゲティング手法が著しく成長していることが挙げられると思います。
このようにインターネットを利用することが半ば当たり前になってきたことで、Webサイト構築や運用を実施している当社にも、当然のことながらWebサイトの認知や集客のための活動が求められるようになってきております。当社は数年前からSEO対策を視野にいれたマトリックス型Web構築手法やWeb標準による実装というサイト構築を提案してきましたが、今回はこの成長著しいリスティング広告も含めたSEM(検索エンジンマーケティング)への取り組みについてご紹介したいと思います。
SEM(検索エンジンマーケティング)とは、言葉のとおり検索エンジンを活用したマーケティング活動全般を指します。一般的にリスティング広告=SEMという認識も多いようですが、ここではSEOやキーワード検索によってサイトへの来訪者のアクセス解析による効果検証も含めて、「キーワードを活用したマーケティング」という定義でご説明します。
リスティング広告は、今さら解説する必要もないと思いますが、検索キーワードと連動して表出される従来型のメディアでは実現できなかった非常にユニークな広告手法です。また広告の販売形態も特徴的で、従来のメディアでは必ず広告代理店という広告販売に特化した業態が存在しますが、一方のリスティング広告については代理店がいなくとも広告主が自身で簡単に広告出稿できる仕組みが用意されており、一種の「中抜き現象」が起こっております。
リスティング広告の出稿に必要な要素としては、キーワードの選定・表出方法、表示順位(入札価格)の設定等、従来型のメディアでは必要がなかった新しい要素があります。既に多くの利用者がおり、誰もがこれを最適化にしようと試みるわけですが、リスティング広告の認知拡大とともに仕組みの高度化がすすみ、複雑な設定と煩雑な運用が発生するようになってきました。
一方でSEO対策を実施することによって、リスティング広告に出稿せずとも集客をサポートすることが可能です。また流入数だけではなく、企業がマーケティングの目的とするページへの誘導数/率(コンバージョン数/率)も重要な指標になります。つまり本来のSEM(検索エンジンマーケティング)とは、SEOやコンバージョンの視点も含めて費用や施策を最適化することを考えていくことになります。
まずSEM(検索エンジンマーケティング)の全体像を把握していただくために、図1をご覧ください。この図にあるように、多くの企業はリスティング広告を活用し、特に検索数の多いビックキーワードによる流入によってサイト全体の流入数を保っているケースが多いのではないでしょうか。しかしながら近年リスティング広告の利用者(出稿者)も増え続けているため、キーワードの単価が高騰してしまい、費用対効果が悪くなってきた、逆に総額を抑えようとすると今度は流入数が減ってしまった、という課題に直面している企業様も少なくないかと思います。
当社はこの課題に対して、以下のような手順で対策を講じます。
まず顧客企業が利用しているキーワードに対して定量的な調査を実施し、施策が最適かどうかを把握します。多くのケースでは利用しているキーワードの分布に偏りが現れ、本来必要なキーワードが不足しているという状況が見えてきます。不足分のキーワードを補う必要があれば、アクセスログ解析による「流入キーワード」の測定や顧客企業の業界特性の高いキーワードを選定して、再度キーワードの分析・評価を実施します。
キーワードのポテンシャルを定量的に把握して、視覚的にどの施策に費用を投下するべきかを判断できるようにするために、当社はキーワード・ポートフォリオという考え方を導入しており、先週それを用いた「キーワード・サーベイサービス」をリリースいたしました。キーワード・ポートフォリオとは、次のように3つの視点からキーワードを分類し、評価するツールです。(図2)
- そのキーワードはどの程度SEO施策に有効なものなのか
- そのキーワードはどの程度人気が高く、競合性の高いものなのか
- そのキーワードは各検索エンジン上に上位表示が実現できているか
それらの指標を定量的な値に換算し、SEO対策への有効性を縦軸、競合性を横軸において、2次元のチャートに値をプロットしていきます。検索エンジンへの表示順位はバブルチャートとしてバブルのサイズで表します。データの読み方としては、縦軸の上の方にいくほどSEO施策に向いており、逆がSEOに不向きということになります。また横軸の右に方にいくほど競合性が高く、逆に左側にいけばいくほどそのキーワードは競合するサイトが少ないということを表します。またバブルのサイズで現在SEO施策の効果を表示しておりますので、この「キーワード・ポートフォリオチャート」によって各キーワード単位のポテンシャルと施策の効果を視覚的に俯瞰することが可能となります。
各キーワードの施策に対する優先順位が決定できましたら、それぞれの施策を実施していきます。SEO対策で効果が見込めるキーワードに対しては、それぞれの対応するページに対してタグのチューニング等を実施します。Webサイト全体でSEO対策を実施する場合は、マトリックス型Web構築サービスによるサイト構築を行います。ランディングページを追加・改修するにはATOM型製品ページ支援ソリューション考え方を採りいれます。その他、Blog構築やWeb標準に準拠させる方法も有効です。
一方リスティング広告を主軸に対応していくキーワードについては、ビックキーワードの利用を限定的にするために設定を変更し、その予算を「ロングテールキーワード」に振り向けるような施策を提案していきます。結果として図3のように流入キーワードが増加し流入が分散化されるようになります。キーワードの平均単価は下がっていくので、費用対効果も改善されていくことがお分かりいただけると思います。詳しくはリスティング運用サービスをご参照ください。
一例ですが、下記のように顧客企業に対する具体的なSEMの改善施策によって、実際に費用対効果が改善された報告があります。
改善施策
- ビックキーワードの削除(上位20ワード)
- ログ解析結果から得られたロングテールキーワードの追加(約200ワード)
- マッチング方式の変更による表出制限
- ターゲット別の広告コピーの作成
- 上記ターゲット別にランディングページの作成
- 各ページのSEO対策(タグチューニング、キーワードの補充等)
効果
- リスティング広告費用の削減(40%削減)
- リスティング広告経由のコンバージョン率が上昇(約2倍)
- SEO効果による流入数の増加(リスティング広告からの流入率90%→50%に改善)
なおこの改善効果が出たのは、単に当社がSEO対策やリスティング広告の運用を一元的に実施しているからだけではありません。本来Webサイトは人が見るものです。あくまでも人が使いやすい、読みやすいWebサイトの構築という根本的な考え方がベースにあって、初めてSEMの施策の最適化も可能になるのだと認識しております。そしてこれこそがWeb構築を生業とする当社においてSEMに取り組む最大の理由でもあります。
今後のサービスの進化・発展にご期待ください。
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