「Web標準の日」を終えて
Web開発チーム フロントエンド・エンジニア 木達 一仁かねてより当コラムやWeb標準Blogにてお知らせしてきましたThe Day of Web Standards [Web標準の日]が、去る7月15日に六本木アカデミーヒルズ49タワーホールで開催されました。東京都内からはもとより、大阪や北海道など遠方にお住まいの方も含め、総計498名もの方々がご来場され、盛況のうちにイベントは終了しました。
当日ご参加くださった皆様、本イベントを主催されました株式会社スイッチの鷹野様、当日に登壇された各プレゼンターおよびパネラーの皆様、そしてイベントの成功に向けご尽力くださった皆様には、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
本イベントはWeb標準に特化したイベントとしては(少なくとも、500名近くもの参加をいただいたという規模では)日本初だと思います。また、私が出演させていただいた午前11時スタートの基調講演に始まり、パネルディスカッションの終わる午後9時まで、実に10時間(その後に催された懇親会も含めれば12時間!)に及んだというのも、Webデザインに関するイベントとしては他にあまり類を見ない構成だったと思います。
本イベントに参加するには、すべてのセッションに参加することのできる1日参加券と、特定のセッションに参加するためのセッション券のいずれかのチケットを、事前に購入する必要がありました。参加された方々の多くが前者を購入され、イベントの最後まで熱心に参加されていた様をみますと、いかにWeb標準という言葉が旬であり、またそれに関するトピックスへの興味・関心が高まっているかが、よくわかりました。
基調講演「Web Standards: The Right Tool for the Right Job」
基調講演では、Webサイト構築におけるフロントエンド技術のなかでもマークアップ言語とスタイルシート言語の双方に焦点を当ててお話しました。スタイルシートに対応した初めての商用ブラウザであるInternet Explorer 3が登場した1996年に遡り、以後の歴史を簡単にご紹介。2006年現在の私たちが置かれている状況に触れ、最後に未来に向けての希望を、個人的な夢を紹介するかたちで述べさせていただきました。その夢の内容を、以下に引用します。
……いつの日か、すべてのブラウザがWeb標準に準拠し、 誰もが短時間かつ低コストで、よりアクセシブルかつクリエイティブなWebコンテンツを、文法的にも意味的にも妥当でコンパクトなマークアップと、ハックの無いスタイルシートで作成するようになることを。
ブラウザやオーサーリングツールの多くがWeb標準に準拠する方向で開発とリリースがなされ、また学習に適した優れたオンライン/オフラインリソースが普及し始めているとはいえ、いまだ根強く存在するブラウザ間の実装差異(仕様の解釈の相違やブラウザ固有のバグなど)は、いまだ多くの人々にとって悩ましい問題であると思います。
しかし今後、私たちWebデザイナー/開発者が、ブラウザベンダやオーサーリングツールベンダ、一般ユーザー、そしてW3C等の標準化団体とともに標準の存在に一定の価値を見いだし、ともに手を携え今まで以上に共同することができれば、上記の夢は現実のものになると期待をし、またその実現に向けて努力し続けたい、と思います。
パネル・ディスカッション「Web標準はビジネスをどう変えるか」
パネル・ディスカッションでは、モデレータを務めさせていただきました。なかなか一堂に会することの無い、それぞれにご活躍されているパネラーの皆さんに、限られた時間のなかで少しでも多くご発言いただこうと考え、私自身は発言を極力控えるようにしていました。しかしその結果、テーマに沿って議論を掘り下げることのできないまま、終了の時刻を迎えてしまいました。これはひとえに私の不徳の致すところであり、お詫び申し上げます。
ディスカッションのなかでとりわけ興味深いトピックスであると思いましたのは、そもそもWeb標準とは何なのか?という指摘です。World Wide Webで広く利用されている技術仕様は数あれど、果たしてどれがWeb標準でどれはWeb標準では無いのかといった明確な区分は、自分の記憶の限りではあまり目にしたことがありません。
私がセミナー等でWeb標準のお話をする際、多くの場合において広義のWeb標準と狭義のWeb標準という双方の定義をご説明しているのは、文脈によってその言葉が意味するところが若干変化し得るという実情を踏まえてのことです。Webサイト上におけるコミュニケーション実現のための道具として、標準技術を使いこなすための環境が整いつつある今だからこそ、そういった定義の部分を再考する価値はあるように思いました。
「Web標準の日」の今後
今後公式サイト上では、すべてのセッションのプレゼンテーション資料や講演の模様を収めた音声が公開される予定とのこと。海外の有料カンファレンスの場合ですと、イベント当日から時間を置いて当日参加されなかった方々向けに広く情報を公開するという事例は既に珍しくありませんが(先日ロンドンで参加した@media 2006でも既に個々のセッションのPodcastingが徐々に公開され始めています)、日本国内ではまだ稀なほうかもしれません。
しかしこの情報共有はまさに、基調講演のなかでお話しした「共同」のいち側面ではないかと思いますし、異論や反論をお持ちの方もいらっしゃるとは思いますが、私は素晴らしい取り組みではないかと思います。今回、Web標準の日に参加されなかった皆様のなかでご興味をお持ちの方には、是非公式サイトのほうを今後チェックしていただき、資料や音声を共有していただきたいと思います。そしてまた、コメントやトラックバック等でフィードバックをお寄せいただき、共有させていただければ幸いです。
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