より堅牢なサイト運用のために
ミツエーインフォメーションネットワークテクノロジー 執行役員兼エグゼクティブプロデューサー 藤田 拓Webサイト運用は簡単?
Webが誕生してから十数年経ちますが、今ではビジネスに必須ともいえるインターフェイスになりました。しかし、90年代中盤はどちらかというと個人の趣味の範囲が大きかった印象があります。逆に言うと個人が簡単にサイトを立ち上げることができるという点がWebの大きな特徴だったのかもしれません。
実際、小学生のプログラマはあまり見かけませんが、小学生でホームページを持っているという話はそれほど珍しいものではありません。その理由としては、「Webを制作する簡単なツールが存在する」こと、更に言えばHTMLの手軽さからだと思います。
そういったイメージがあったのか、数年前まではビジネスサイトの運用においてWebのプロはいらないという声もよく聞かれました。
しかし、サイトの運用はそんなに簡単なのでしょうか?ここでは答えを「ケースバイケース」としておきます。実際、簡単なパターンは現状次のようなケースが挙げられます。
- A. 運用する人がHTMLをよく知っている
- B. 運用する人がHTMLエディタを使いこなせている
- C. サイトの仕様がしっかりしており、ドキュメントも揃っている
- D. Blogのような簡単にサイト更新を行うことができるツールを使っている
以下、上記4点について簡単に述べていきます。
運用のための必要条件
A. 運用する人がHTMLをよく知っている
理想的です。しかし理想的なだけに一番レアなケースです。「よく知っている」というのは物理的にブラウザで見た目を実現するだけではなく、HTMLで形作られている文書構造を把握し、それらを崩すことなくエディットできることを指しています。更にいえば、CSSの知識も必要です。
また、HTMLをよく知っていてもサイト構造といった仕様を把握していないと、一貫性のない煩雑なものになってしまいます。AはCと合わせて必要十分に近くなるといえます。
B. 運用する人がHTMLエディタを使いこなせている
HTMLエディタはワードプロセッサーソフトの感覚でサイトを制作可能です。しかし、そこで出力されるソースはサイトの文書構造を崩す可能性があります。結果的にAと同じでHTMLの知識、およびサイトの仕様を理解しなくてはなりません。
C. サイトの仕様がしっかりしており、ドキュメントも揃っている
理想的な運用には不可欠ともいえるものです。その他のA, B, Dについても、この条件がないと堅牢な運用は難しくなります。サイトの規模が大きくなればなるほど、必要な条件といえるでしょう。
D. Blogのような簡単にサイト更新を行うことができるツールを使っている
BlogはWeb界におけるここ数年のヒット商品でしょう。その理由は複数ページの更新が簡単に可能という点です。実際、個人Blogでも1000ページ以上の運用を行っている場合も見受けられます。
また、Blogは「インデックス」「カテゴリページ」「月別」「単体記事」「カレンダー」「RSS」といった仕様がほぼ固まっており、ドキュメントもWeb上に揃っているので、Cの点もクリアされているといえます。
HTMLの知識についていうと、やはりあると望ましいのですが、逆にテンプレート自体がある程度構造化された仕様なのでむしろ独自のHTMLを入力しない方がサイトに一貫性が生まれます。
以上、まとめると、
- Cは堅牢な運用に必要で、それを土台としてA,B,Dがある
- A、B、Dは交換可能である。
- Bの場合Aがあると理想的だが、Dの場合はAはあると望ましい程度
ということになります。
CとDでほぼ閉じているBlogは理想的なWeb運用ツールであり、そのパワーが普及に拍車をかけたといえるのではないでしょうか?
では、ビジネスサイトをすべてBlogで構築すればいいのか?というと当然そうはなりません。Blogは先ほども述べましたようにBlog独自の仕様が確立されているためです。Blogツールでビジネスサイトを構築するにしても、要件、そしてそこから生まれる情報設計をしっかりやった後に実装するべきでしょうし、そもそもBlogツールの機能的仕様がその要件に合うのか?ということも判断すべきでしょう。
CMSによる運用
Dの条件文をBlogという言葉を含めて表現しましたが、ここを次のように書き換えることが可能です。
D`. CMSを使っている
Blogは一種のCMSであり、つまりCMSに含まれるものです。更にいえばCMSはBlogと比べて次のような、より高度な管理が可能です。
- 記事をバージョン管理できる
- テンプレートをバージョン管理できる
- 記事アップのワークフローを構築できる
- 情報設計に合わせて細かく入力項目を設定できる
CとD`を組み合わせることで、より堅牢な運用が可能になります。しかし、ここで強調したいのはあくまでもC、つまり仕様構築が大前提ということです。いきなりCMSを導入するだけで運用が魔法を使ったかのように簡単になるわけではありません。なまじ簡単にサイトを構築可能なだけにサイトに混乱を生じさせるのも容易なことです。
要件をしっかり把握しつつ、綿密な設計により仕様を作ることにより、CMSのパワーが発揮されるといえます。
楽譜(仕様)上の自由
今回、弊社はWeb Rubatoと名づけたCMSソリューションをリリースさせていただきました。Rubatoとは音楽用語で、その意味としては「楽譜上の音、指示は変えることなく、テンポを柔軟に変えて表現を行う」ことです。
クラシックにおいて作曲者の指示は絶対的なものであり、それを変更することはできません。しかし、長い間その価値を失わないのは楽譜の仕様が堅牢なものだからでしょう。つまり、作曲者の求めるクオリティが楽譜の仕様に基づき、いつでも再現可能なのです。
ですが、それだけでは退屈です。クオリティの再現性を保ちつつ、ある程度の自由や柔軟性がないと演奏の価値は生まれてこないでしょう。
弊社のWeb Rubatoでは堅牢な運用を可能にする仕様構築にまず重点をおきます。このフェーズでお客様が求めるコンテンツ展開を実現するための情報設計を行い仕様を固めます。その後、それを土台にしてお客様のコンテンツが日々躊躇なく展開できるCMS実装を行います。
「仕様上のルールを変えることなく、コンテンツを柔軟に更新していく」
これがWeb Rubatoのゴールです。
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