CSRサイト2.0は実現可能か
取締役 山下 徹治2006年のWeb2.0ブーム
2006年のWeb業界を振り返ると、最大の話題はWeb2.0ではなかったでしょうか。
具体的な手法ではなく概念にすぎなかったこのキーワードが、またたく間に市場に受け入れられたということは、すべてのインターネットユーザーによほど納得性のある概念だったのだと思います。
Web1.0とWeb2.0の違いをまとめると以下のようになります。
- Web1.0
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従来のWebは製作者が作った状態で完結しており、利用者は単にそれを利用するだけの関係
- Web2.0
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- 利用者や他の事業者がソフトウェアやWebサービスを組み合わせて新たなコンテンツやツールを作成できるようになる
- 多くのユーザーが参加して情報を出し合う。その蓄積が全体として巨大な「集合知」を形成する
- 開発途上のベータ版の状態でサービスを公開し、ユーザーの意見を聞きながら洗練させてゆく開発手法をとる
(IT用語辞典 e-Wordsより引用)
CSRサイト1.0からの脱却
このバージョンアップの概念をCSRサイトにあてはめて考えてみると示唆に富んでいます。仮にここ数年の企業のCSRサイトや環境報告サイトの傾向をCSRサイト1.0として、先ほどのWeb1.0の定義で読み替えてみると、「従来のCSRサイトは、企業が作った状態で完結しており、利用者は単にそれを読むだけの関係」となります。
事実多くの企業は、このCSRサイト1.0的なサイトを最初に構築し、現在までそこから脱却できないでいます。そして、企業のCSR担当者の方々は、どうやってステークホルダーとのコミュニケーションをとるかについて長年苦心をしています。そしてその悩みをいかにも解決してくれそうなCSRサイト2.0的なソリューションやサービス(概念ではなく実体があるもの)の出現を待ち望んでいるのではないでしょうか。
ステークホルダーダイアログをWebで実現できないか
その一つのヒントとして、CSR活動で最近注目を浴びているステークホルダーダイアログという活動があります。株主や顧客、地域住民、パートナー、従業員など、さまざまなステークホルダーが実際に集まり、一定のルールのもとで話し合いを行い、見解の一致点・相違点や背景などを確認・理解しあい、可能な限り合意点を見いだそうとする試みです。企業の側はそのステークホルダーから寄せられた意見や双方の合意点をもとにして企業経営に反映させ、企業と社会の相互発展を目指します。
こうした取り組みは、現状では一部のCSR先進企業しか実施できていません。継続的にやらなければ効果が得られないこの活動は、コストがかかりすぎるという現実が重くのしかかります。
これがWeb上で低コストでできないか。つまりWeb2.0的な技術を使いWeb上でステークホルダーダイアログを実現できる仕組みを構築することは可能かどうか、これが2007年のCSR界の一つのテーマになるような気がします。もちろんこれがCSRサイト2.0のすべてではないとは思いますが、比較的実現の可能性が高そうなテーマであるだけに、取り組んでみる価値は大きいのではないでしょうか。
私たちは今年、自社のCSRサイトを実験台としてこのテーマにチャレンジしようと思っています。それこそ、このテーマに興味のある有志がWeb上に集まりステークホルダーコミュニケーションを開発していく、ということができれば本当にWeb2.0的で自社のCSR活動として面白い取り組みになると思います。
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