激流のFlash業界
Flashクリエイター 茅原 伸幸(メディア・パルサー代表)
ActionScript3.0へ向けて
近年、Flashをとりまく環境は大きく変動しています。Adobe Flex 2、Adobe AIR、 Adobe Flash CS3、オープンソースのクラスライブラリ群、携帯電話や家庭用ゲーム機器、その他デバイスとの連携、そしてActionScript3.0へのバージョンアップ等々……。次々と新しい技術や製品が発表、リリースされ、その流れの速さには驚かされるばかりです。なかでもActionScript3.0はFlex2やFlash CS3をはじめ、AIRでも利用可能な言語となり、今後リッチメディア系では核となる言語だと思います。旧バージョンのActionScript2.0やActionScript1.0に比べて、大幅なパフォーマンスの向上が期待でき、従来では処理速度の問題から実現できなかった表現手法も可能となる場合があります。ActionScript3.0は最新のFlashPlayer9以降でしか実行することができませんが、FlashPlayer9は開発環境が整う以前から先行してリリースされているため、日本でも2007年3月時点ですでに80%を超える普及率となっています。
ActionScript3.0はActionScript2.0から大幅に改良され、ActionScript1.0から順次習得してきたFlashクリエイターにとってはその習得は大きな壁となっている半面、ECMAScriptに準拠し、体系が整った言語になることによって、システム系のJava開発者等は比較的容易に習得できるようになっています。見た目や表現、インターフェースを中心としてきたデザイナーとシステム構築等の骨組みを担ってきたSEやプログラマーがいずれもActionScript3.0へ関心を向け、デザイン系とシステム系の垣根が低くなっているように思えます。デザイナーはプログラマーの持つデザインパターンやフレームワークなど、再利用可能な構造化のノウハウに関心を持ち、プログラマーはデザイナーの持つ表現手法、ユーザーインターフェースへの気配り等に関心を持ち、イベントやセミナーではさまざまな意見交換がなされています。そこで共通しているのは、ユーザーにいかに効率よく正しく楽しく情報を伝えるか、ということであり、目指している方向は同じような気がします。
参考
さまざまなFlash関係のイベントやセミナーに参加してみて
7月10日に行われたAdobe AIR Developers Night、7月13日Flash OOP勉強会、そして7月30日のMash up Caravan in 東京に参加してみました。多くの参加者が集まり、その注目の高さがうかがえます。
Adobe AIR Developers Night
Adobe AIR Developers Nightでは、参加者を見渡すとラフなTシャツ姿の人からスーツを着た人、女性、男性問わず600人を超える参加者が集まり、さまざまな分野の人が新技術のAdobe AIR(Adobe Integrated Runtime)への期待や関心を持っていると感じました。まだまだ配布方法や日本語表記、開発環境には課題はありますが、発表された各社のデモを拝見していると、ブラウザの枠を越えた表現には、大きな可能性とビジネスチャンスが広がっているのは間違いないようです。
Flash OOP Japan ActionScript3勉強会
Flash OOP JapanのActionScript3勉強会では、第一線で活躍するFlashクリエイターやActionScript3.0の習得を目指す人々が多く集まり、それぞれ不安と期待を持ちながらもActionScript3.0の習得へ向けて熱心に勉強し、情報の共有をはかっています。オープンマインドな精神が業界全体を支え、発展していくキーワードだと強く感じました。
Mash up Caravan in 東京
Mash up Caravan in 東京では、マッシュアップをキーワードに各社企業がもつデータリソースを利用するためのAPI(Application Program Interface)の説明やデモなどが行われました。Flashをはじめ、Ruby on RailsやJavaScriptなど、言語を問わずAPIを利用して新しいサービスを生み出そうという姿勢には共感することができます。FlashのセッションではGainer(ゲイナー)を用い、ネットとリアルをつなぐ見た目にも楽しいデモでFlashの将来性を感じることができました。
オープンソースの潮流
最近では海外を中心にオープンソースの充実したクラスライブラリ等が続々登場し、発展を続けています(下記参考)。クラスライブラリを利用することによって、習得コストは発生しますが、一度習得すると後の開発では大きな時間短縮を図ることができます。それにより、伝えたい商品やサービスへの理解度を深め、よりよいインターフェースや表現手法への開発に時間をかけることが可能となります。国内でも一部オープンソースフレームワークの開発に着手する人々も現れはじめており、そういった人たちと協力するとともに企業間を越えた横のつながりを大切にしていきたいと思っています。
コストをかけて開発したノウハウをオープンソース化することはためらわれる部分もありますが、オープンソース化することによって、得られる情報や人脈、信頼など、さらなる価値を生む傾向にあると思います。蓄積したノウハウに固執して孤立するより、情報を共有し、そこで得た情報をさらに発展させることによって飛躍的な向上が期待できると考えています。
参考
- MosesSupposes :: Fuse Kit
- Tweener
- Papervision3D
- Away3D Flash Engine
- Sandy
- CASA Framework for ActionScript 2.0
- Progression
Flash業界をとりまく激しい流れに右往左往し、楽しく翻弄されながらも流れの遅い本流、どこへ向かって流れているのか、という意識は常に持ち続けなければなりません。危機感をモチベーションに変え、技術を追求しながらも、誰のために何をどう伝えるかという本質は決して忘れてはならないと思います。
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