「ウェブサイトに関するアンケート調査報告書」から見るアウトソーシングの方向性
取締役副社長 兼 エグゼクティブプロデューサー 岡田 貴彦「ウェブサイトに関するアンケート調査報告書」の実施
ミツエーリンクスは、2007年5月に三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社様と共同で、上場企業におけるウェブサイトの利用と運用・管理の実態を把握することを目的に、アンケート調査を行ないました。すでに弊社サイト上では、その結果を公開しておりますが、アンケート結果から分かったことを改めてご報告したいと思います。
各アンケート項目とその調査結果は、「ウェブサイトに関するアンケート調査報告書」をご覧いただくとして、一部気になる部分を取り上げたいと思います。
想像されるWeb担当者像
まず初めにWeb担当者像をアンケート結果から想像してみると
- 公開企業の広報部または経営企画室に所属している一般社員のWebマスター(回答者の属性)
- 情報システム部門や経営層、販売部門、総務・人事・法務部門、経理・財務部門など多くの部門と調整を行っている(Q6)
- ウェブサイトのリニューアル構築時の設計、制作業務をアウトソーシングしている(Q12)
- 日々、更新業務の全て、または一部を社内で実施している(Q11)
といった方々を中心とした担当者像となります。
ウェブサイトが抱える問題点・課題
Q5.現在、ウェブサイトが抱える問題点・課題より問題点・課題として挙げられたものを高い順から並べてみると、「アクセス数が少ない」を除いて上位10項目中9項目が、社内的な体制や運用に関する問題となっています。
- 業務に必要な人材が不足している、手が足りない:53.2%
- きちんとした効果測定が実施されていない、実施できない:52.2%
- ウェブサイト活用における明確な戦略がない:49.5%
- ウェブにかけられる予算が十分ではない:45.0%
- ウェブ以外のマーケティング施策との連携が図られていない:41.5%
- 社内全体でウェブに対する理解や意欲が欠けている:41.5%
- 社内の部門間調整が煩雑、サイト運用の業務フローが整備されていない:40.3%
- アクセス数が少ない:36.1%
- 経営層にウェブに対する理解や意欲が欠けている:35.1%
- 情報がきちんと整理されていない、度重なる情報追加により継ぎはぎ状態になっている:34.1%
「ウェブに対する理解・意欲が欠けており、予算・人員が十分ではないため、戦略も立てられておらず、効果測定もできていない」という循環から抜け出せない状況が想定されます。
アウトソーシング業者に不満を感じる点
Q14.アウトソーシング業者に不満を感じる点という項目では
- 要望に対する企画・提案力が足りない:48.4%
- 問題発見、解決を行うコンサルティング力がない、足りない:42.9%
- 企画・提案の新鮮さがない:36.3%
- 市場環境や顧客理解のための調査、分析力がない、足りない:33.6%
- デザイン力に不満がある:30.4%
「要望に対する企画・提案力」、「問題発見、解決を行うコンサルティング力」「市場環境や顧客理解のための調査、分析力」など、ウェブサイト構築の上流工程で求められるスキルが多く挙がっています。
今後アウトソーシングの実施を検討している業務
Q12. 外部の業者に「既にアウトソーシングしている」ものと「アウトソーシングを検討している」ものという項目から「アウトソーシングを検討している」が「既にアウトソーシングしている」を超えている項目を、Web担当者の今後のニーズとして挙げると、以下のような項目となります。
項目 | 既にアウトソーシングしている | アウトソーシングを検討している |
---|---|---|
ウェブサイトの戦略策定などのコンサルティング業務 | 19.0% | 20.9% |
ウェブサイトの運用業務を効率化するためのコンサルティング業務 | 14.0% | 19.6% |
アクセスログ解析による効果測定 | 18.0% | 19.6% |
ウェブサイトの評価、診断業務 | 13.2% | 21.4% |
ユーザー調査や市場調査の実施、ターゲットユーザー像の明確化 | 9.5% | 15.1% |
ウェブサイトのリニューアルや運用などのアウトソーシングの中でも、現状調査や戦略策定などの上流部分へのニーズが今後増えることが予想されます。
Web担当者
上記3項目をまとめると
- ユーザー調査や市場調査の実施、ターゲットユーザー像の明確化
- ウェブサイトの戦略策定
- ウェブサイトの評価、診断、効果測定
- ウェブサイトの運用業務の効率化
を強化することによって
- 社内・経営層のウェブに対する理解・意欲
- 予算・人員
を改善したいというWeb担当者の置かれた状況が見えてきます。
高まる要件開発の必要性
アウトソーシングとして一般化している構築・リニューアル(77.8%)に対して、ウェブサイトの戦略策定などのコンサルティング業務(19.0%)や、ユーザー調査や市場調査の実施、ターゲットユーザー像の明確化(9.5%)の数値はきわめて低く、サイトに求められる要件自体が十分に開発されていない状況でリニューアルが行われているのが実情のようです。
これには回答者の大半が広報部門に所属していることも影響していることは否めませんが、どのように各ステークホルダーとコミュニケーションを紡いでいくかを考えた場合に、企業は、顔の見えない漠然とした集団をターゲットとしていることになります。
やはりターゲットユーザー像を明確にしなければ、コミュニケーション戦略は成り立たないと考えられます。
ターゲットユーザー像を具体的に持つということ
ターゲットユーザー像の明確化には、社内でのインタビューに加え、想定ユーザー層へのユーザーインタビュー/テスト、ペルソナ構築など、もう一歩踏み込んだ作業が必要になっていきます。いわゆるユーザー中心設計の方向へと企業側も舵を切っていくことが必然となってきそうです。
弊社としても、ペルソナ構築やユーザーテストだけではなく、企業コミュニケーションのダッシュボードとして活用できるウェブサイト構築のための手法やソリューションを積極的に開発していきたいと考えております。
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