CSUN 2009参加報告
アクセシビリティ・エンジニア 辻 勝利去る3月16日から21日まで、カリフォルニア州ロサンゼルスで開催された、24th Annual International Technology & Persons with Disabilities Conference(通称CSUN 2009)に参加しました。
当社として3度目となる今年のCSUN参加の目的は、主に以下の3点でした。
- Flashコンテンツのアクセシビリティについて言及したHow to make your Flash Content accessible and WCAG 2.0 compliant(WCAG 2.0に準拠したアクセシブルなFlashコンテンツを作成する方法)についてのプレゼンテーションを行なうこと
- CSUN期間中に開催される、さまざまなセッションに参加し、そこで得た知見を社内外で共有すること
- 昨年に引き続き、スクリーン・リーダーNVDAの開発者とミーティングを行い、日本語化の作業進捗状況を共有すること
また今年は、できるだけタイムリーにこのカンファレンスの状況をお伝えするため、当社のアクセシビリティBlogにも現地から複数の記事を投稿しました。
本稿では、24回目となる今年のCSUNカンファレンスに参加して、筆者が感じたことをお伝えします。
CSUNとは
すでにご存知の方も多いかと思いますが、International Technology & Persons with Disabilities Conferenceは、主催者のカリフォルニア州立大学ノースリッジ校の頭文字をとって、通称CSUNと呼ばれています。24回目となる今年のカンファレンスは、カリフォルニア州ロサンゼルスのMarriottホテルとRenaissanceホテルを会場に、3月16日から21日まで開催されました。300を超えるさまざまな分野の発表のほか、展示ブースでも支援技術をはじめとしたさまざまな展示が行われました。また今年は、会場で配られた参加者向けの資料の中に、ロサンゼルスで開催されるCSUNは今年が最後であるとの情報があり、来年から新たに会場となる、サンディエゴがどのような場所なのか興味を覚えた一方、会場が変更されるということで少しさびしいような気もしました。
なお、第25回目となる来年のCSUNカンファレンスは、3月21日から27日まで、サンディエゴのManchester Grand Hyattホテルで行なわれるとのことです。
今年のCSUN参加を終えて
さて、話が前後いたしますが、当社社長の高橋から、CSUNに参加するのであれば、まずは3年間コミットし続けてみてはどうかとのコメントをもらったのが、最初に参加したCSUN 2007の発表終了後のことでした。その後、昨年、本年と3年連続でこの世界最大級の障害者に関するカンファレンスに、スポンサーと発表者という立場で参加してきました。
私は特に、ひとりのスクリーン・リーダーの利用者としての立場で、さまざまな発表を聞いたり、いろいろな方々と話をしたりするうちに、日本にも、最低限海外で利用されている物と同じくらいの機能を持ったスクリーン・リーダーが必要であるということを感じました。昨年から本格的に作業を開始した、スクリーン・リーダーNVDAの翻訳を始めたきっかけとなったのも、このカンファレンスでした。
また仕事面でも、海外の方々に私たちのWebアクセシビリティに対する考え方や取り組みを、発表を通して見ていただく良い機会であったと思います。カンファレンスから帰国後に複数のお問い合わせを海外からいただくことができたのも、このカンファレンスに参加してよかった点だと考えています。
視覚障害者の買い物を取り上げたセッション
前述のアクセシビリティBlogのエントリーの中でも、すでにいくつかのプレゼンテーションの概要をご紹介しておりますが、今年のCSUNに参加して、私が気になったトピックを一つご紹介します。
それは、視覚障害者の単独での買い物をサポートする技術に関する発表、Several Qualitative Observations on Independent Blind Shoppingでした。
私自身は、インターネットショッピングを日常の買い物に利用しているのですが、この発表では、実際にお店を訪れた視覚障害者が、独力で買い物をするための助けとなる技術が紹介されました。
体に装着するタイプの端末を使って、商品のバーコードに関連付けられた商品説明を確認しながら買い物をするというもので、私自身は、かえって買い物が大変なのではないかと感じたりもしました。まだ研究中の技術で、実際に買い物の現場で試せるような状態の技術ではありませんでしたが、発表者と会場間の活発な意見交換が行われた1時間でした。
参加者の中からは私の考えと同じように、インターネットショッピングのほうが目的の物をより早く買えるのではないかといった意見も出されましたが、発表者が「確かにそうかもしれません。ただ、インターネットショッピングにはタイムラグが必ずあると思います。この技術が利用可能になれば、必要なものを必要なときに購入することができるのです」と答えていらしたのが印象的でした。確かに、インターネットで注文を行ってから、商品が手元に届くまでには、少なくとも1日くらいの時間がかかってしまうのが現状です。例えば、食品や薬など、必要なときに必要なものを、きちんとその商品の詳細情報を確認したうえで購入できる手段が必要だと感じた発表でした。
私たちの発表について
最後になりますが、今年私たちが行った発表についても簡単に触れておきたいと思います。
今年の私たちの発表テーマは、How to make your Flash Content accessible and WCAG 2.0 compliant(FlashコンテンツをアクセシブルかつWCAG 2.0に準拠させる方法)で、R&D本部の木達と辻で発表を行ないました。
発表風景はアクセシビリティBlogのエントリー、速報:CSUN 2009での発表終了の中でもご紹介しましたが、50名以上の方々にご参加いただき、CSUN参加3年目にしてやっと満足できる発表が行なえたのではないかと感じています。
プレゼンテーションの中ではFlashコンテンツをアクセシブルにするためのワークフローをご紹介したほか、アクセシビリティ対応する前のFlashコンテンツとアクセシビリティ対応したFlashコンテンツが、それぞれスクリーン・リーダーでどのように読み上げられるかを、当社のアクセシビリティPodcastを事例として紹介しました。また、現在アクセシビリティ対応を進めている当社のサービス、絞り込み条件検索(Visualsorter)の機能のうち、アクセシビリティ対応したものも事例として紹介し、参加者の方々に興味を持っていただきました。
今回のCSUN参加に関しては、行き帰りのフライトでトラブルが発生するなど、カンファレンスに参加するだけでは得られないような貴重な経験をすることができました。これらすべての経験を生かして、今後もWebアクセシビリティを向上させるために努力していきたいと思います。
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