「泥んこ」になること
アートディレクター 田中 遼馬顧客目線に立ったWebデザインとは?
Webページは、企業の広告の場であったり、個人の情報発信の場であったり、さらにWebショップのような商品販売の場であったり、様々な場であるといえます。そんな中で、弊社は徹底して顧客目線に立ったWeb構築を重視し、日々それに取り組んでいます。
Webデザインも同様に、顧客目線に立ってどのように表現し設計していくのかという観点からおこなっています。具体的には、ユーザビリティ・アクセシビリティの観点を含んだうえで、顧客にとってのターゲットや何をどのように表現したいのかを的確に把握し、最適解としてのデザインを作っていくということになります。
しかし、本当の顧客目線に立ったWebデザインとはこれだけでよいのでしょうか?
「泥んこ」の人、川喜田半泥子
話は少し変わりますが、先日、横浜そごう美術館で行われた「川喜田半泥子のすべて」という展覧会に足を運んできました。
といっても、川喜田半泥子とは誰かと多くの方が思うと思いますので簡単に紹介をさせていただきます。
川喜田半泥子(かわきたはんでいし、1878〜1963年)はプロの陶芸家ではなく、趣味の延長としてやきものをやった人物ですが、「東の魯山人、西の半泥子」といわれるほど陶芸史に大きな影響力を与えた人物です。正業は実業家で、江戸時代から江戸大伝馬町で木綿を商った伊勢商人、川喜田商店の十六代と、百五銀行の頭取を41歳から66歳まで務めた人物でもあります。
さて、この「川喜田半泥子のすべて」という展覧会で非常にインパクトを受けたのが、その作風の、バランスのとれた自由さでした。例えば、昔の窯跡で見つけたお皿の破片に新たに粘土をつけ、お茶碗に仕上げてみたり、あえて捻じ曲がった木を茶杓にしたててみたりと、非常に自由奔放で、それでいて要所要所できちんと伝統を踏まえた筋が通っている、そんな作品群でした。
展覧会の図録には、半泥子をよく知る美術評論家・吉田耕三氏の言葉が載っていました。「半泥子は、何でも没頭し、泥んこになってしまう。泥んこになりながら、冷静におのれを見つめることを忘れない。」
おそらく川喜田半泥子という人は、冷静な分析による伝統への多角的な視点と同時に、「泥んこ」と評されるほどの一点集中的な視点を併せ持った、複眼的な人という一面を持っていたのではないかと思います。
「泥んこ」になること
さて話はもどり、本当の顧客目線に立ったWebデザインとは何か。これですが、先に述べた展示に合わせていえば、お客様と一緒に「泥んこ」になることなのではないでしょうか。
お客様の一員であるように主観的発想からデザインに取り組むことで、自由な考え・アイデアが生まれると考えています。お客様とともにWeb構築に没頭して「泥んこ」になること。もちろん、自由さの中に冷静な分析と知識の蓄積に基づく伝統の要素をうまく盛り込む川喜多半泥子のように、Webのプロフェッショナルとしての冷静な視点をきっちりと持ち合わせることも非常に大切な点です。そのうえで、どこまで没頭して「泥んこ」になれるのか、この点に注力して今後もWebデザインという分野に取り組んでいきたいと思っています。そうすることで、本当の意味での顧客目線に立ったWebデザインが形になるのではないでしょうか。
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