モバイルファーストとWebサイトのコンテキスト
フロントエンド・エンジニア 矢倉 眞隆昨年末より、ワンセグやおサイフケータイを搭載する、日本市場に特化したAndroidスマートフォンが登場しています。日本では2015年にも携帯電話の販売台数、契約数ともに、スマートフォンが全体の半数を超える予測がされており、今後さらに広がることが確実視されています。
スマートフォンからのWebアクセスも、今より増加するでしょう。立ち上げる必要がないことやどこでも使えるという利便性から、PCよりも利用の幅は広がるのではないでしょうか(実際、今年中にスマートフォンがPCの売上を抜くという予測もあります)。
さて、昨年頃より「モバイルファースト」という考え方に注目が集まっています。PCではなくまずモバイルからデザインを考え始めるという考え方なのですが、「たとえモバイル展開を考えていなくてもモバイルから考えよう」という、少し変わった主張も含まれているのです。いったい、どういうことでしょうか。
制約を強みにするモバイルファースト
モバイルファーストの核は「フォーカス」することにあります。PCと比べると端末の能力や環境に制約があるモバイル端末の弱みを逆手にとり、そういった環境で通用するデザインに注力し質を高めようというのが狙いなのです。
たとえば、スマートフォンはPCに比べて画面がとても小さく、広い画面を使い数多くのタスクをこなすようなアプリケーションを作ることができません。ですので、空いたスペースに情報を詰め込むのではなく、優先度の高いタスクに絞りUIなどを構築することが求められます。
また、搭載されているプロセッサやネットワーク品質がPCに比べて劣るため、パフォーマンスの最適化など技術面のアプローチも重要になります。遅い環境でも問題なく動くことを保証することで、速さの保証が担保されます。
これは何もPCサイトで実践できない考えではありませんが、ゴールを必然的に意識してデザインする必要があることから、モバイルがよいデザインの入り口となるわけです。
コンテキストへの反応が求められるWebに
このモバイルファーストの考え方や手法を、Webサイトの構築にもうまく反映できないものかと考えています。こう考えているのは、スマートフォン「対応」にしかなっていないスマートフォンへの取り組みが多いことへの懸念から来ています。PCサイトは静的な情報のストックという役割が強いですが、その情報がモバイルにおいても有用であるかというと、あまりそうは思えないのです。
利用者の「そばにある」というモバイル端末の性質上、そこから発信される情報、および受信される情報は、時間や場所といった利用シーンが反映される傾向にあります。こと利用者が得る情報については、知識欲を満たすような類の情報よりも、何らかの目的を叶えるための情報、つまり必要度の高い情報になります。たとえば、携帯電話から企業へのアクセスを考えたとき、製品情報やプレスリリースではなく、会社へのアクセスページを探している人が多いのではないでしょうか。PCサイトの構築において想定したユーザー層とその利用状況から外れたものに、思わぬ注目が集まる可能性があるのです。
モバイル広告への注目がとても高い理由も、単にスマートフォンが伸びているというだけではなく、コンテキストを反映することで高い広告効果や新しいニーズの発見が見込めるからでしょう。こういったコンテキストへの注目という流れに、現在のPCサイトを前提としたWebサイトの構築プロセスはあまり敏感ではないと感じます。想定されるターゲットの幅が広くなりがちで、フォーカスしにくいのです。なので、モバイルとコンテキストという観点から、サイトに掲載する情報およびその展開について考えることで、情報が使われやすい、活き活きとしたサイトができるのではないかと考えています。
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