物語を紡ぐ
映像プロデューサー/ディレクター 水ノ江 知丈物語が持つパワー、そして物語に内包するパワーを私は信じています。それが映像の仕事を長年続けている理由の一つです。
物語と一言で言っても、それは映画やドラマの起承転結のストーリーもそうですし、企業や商品のブランドストーリー、取材・インタビューにおける体験談やエピソードもそれに当たります。
たとえば、インタビューを核とした3分尺の短い番組を作るとします。
その人の話を撮り、つないで、テロップを入れ、効果を入れれば、とりあえずそれなりのものができ上がります。
しかし、そのインタビューの内容が視聴者に共感できるものであれば(それが視聴者自身の既存体験であったり、想像できやすいことだったり)、その番組は人の心に影響を与える力を持つものになります。
また、それだけではなく、フツーの話を演出(編集・効果を含め)によって物語を作り出し、視聴者の感情を揺さぶることも可能です。
それが映像の面白いところでもあり、難しいところでもあります。(と同時にそこにはクライアントに対しても、視聴者に対しても大きな責任が発生します。)
つまり、コンテクストです。
物語を作るということは、コンテクスト=文脈を作るということです。
以前、海外向けの東京誘致のプロジェクトで提案をしたのですが、まず、東京の魅力を、なにをどうやって伝えればいいのかを考えます。
たとえば、東京に来たことがない人や東京を知らない人に、「東京は魅力あふれる街」ということを理解してもらおうとして、「東京はほんとに魅力があるんです!ぜひ来てください!」と何百回言っても、素直に信じてもらえる可能性はかなり低いでしょう。頭の中にあるコンテクストと関連づけられていないと、人は覚えてくれないし、納得してくれません。
しかし、たとえばこんなエピソードを聞いたらどうでしょうか?
「東京に行った時に、通りがかりの日本の若い人に道をたずねたら、その人、忙しそうだったのにもかかわらず、わざわざその場所まで連れていってくれて、ほんと助かったよ。」
こういったエピソードを聞けば、多少なりとも「東京って魅力ある街なんだ」というイメージができ上がってくるはずです。
つまり、そのエピソードを通して、「魅力がある街」という人が抱くイメージとコンテクストでつながったからです。
こういったエピソードの物語を創造し、有機的に絡ませていくことで、東京へのインプレッションを与えるのと同時に、モチベーションが醸成していくのです。
物語を作ること。それは視聴者の頭の中にイメージを植えつけ、感情を刺激します。
情緒的で、説得力を持ち、視聴者や顧客とのリレーションシップを強め、映画やテレビであれば視聴者の感情を揺さぶり、影響を与え、広告や企業向けパッケージであればブランドやビジネス戦略に大きく貢献し、マーケットシェアとベネフィットをもたらすでしょう。
映像とは物語を紡ぎだすこと他なりません。
と、考えています。
ドラマ「農ドル!」(NHK)2010年制作・放送
作:佐々木あず、制作統括:小澤泰山、プロデューサー:樋口俊一、演出:長谷知記、演出補:水ノ江知丈・有吉めぐみ、劇用ブログ画面制作:大柴直子・田中健太郎、出演:平田 薫、手塚理美、中本 賢 ほか
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